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第21話 餌

「君たちに集まってもらったのは他でもない。君たちを呼んだのは君たちがMA(マギアスピーダ)の操縦成績が優秀だった生徒で、サロンを利用できるものたちだからだ。まぁ声をかけやすかった者たちでもあるのだが……」


 アナ弱こと、生徒会長が席に着くと、そう話を切り出しました。それにしても主人公君はなぜここに居るのでしょうか? 彼って成績優秀者として入学するわけじゃなかったような……?


 わたくしが気になってじっと彼を見ていたからでしょうか、ミシェルが口を開きました。彼女は言いたいことを全部口に出すタイプの女ですものね。


「彼は何よ? シャノンの彼氏?」


「ミシェル、変なこと言わないで。彼は護衛見習いよ」


「その護衛見習いに聞かせていい内容なの?」


 わたくしも参加して、どこぞの提督よろしく「この下衆ゲス!」などとののしって主人公を追い出してもよろしいのですけど、わたくしも別に上級大将ではありませんのでやめておきましょう。


「ああ、別に聞かれて困ることじゃない。それでサロン利用可能者には、単独でスポットを探索できる権利があるのは知っていると思う。そこで現在スポット内が危険な状態にあるから、その注意喚起だね」


 あっ……なんだか話が見えてきましたわね?


「数年前からスポット内に、『スポットの悪魔』と呼ばれる違法MAが率いるテロ組織、《《カラネア》》が跋扈ばっこしている。単独での出撃や、学園と寮のレーダー範囲外での活動をする際には、各自十分注意してもらいたい」


 ……わたくしが作った武力集団のことでしたわ。てへっ!


 「カラネア」は朗報、グッドニュースを意味します。「カラネア(グッドニュース)だ! 手を上げろ!」したいがためだけのネーミングなんですわ。可愛いでしょう?


「カラネアは山賊のような集団なんだが、MAの性能も練度も侮れない連中だ。出会った際は、交戦せずに撤退を推奨している。もし逃げられず、攻撃を受けた場合は投降するように。やつらは命までは取らない」


 ええ、もちろんわたくしたちは、頑強に抵抗されない限りは殺しませんわよ? リュドヴィックとの間に起きた国際問題の件は忘れましょう。あれは正当防衛ですから!


 それに何も私利私欲のために作ったわけではありません。マギコークスの流通量をコントロールしたり、各国のMAを鹵獲、破壊することで軍事費を増大させ、予算をピュアマギコークスクリスタルに関する研究に使わせないという狙いがあります。かなり迂遠ではありますけど……。


 さらに闇マギコークスの卸先おろしさきに、便宜べんぎを図って取り込んだり、スパイを送り込んでいく作戦でもありますのよ。わたくしはピュアマギコークスクリスタル製造者絶対殺すマンですので。


「ついでに新入生諸君に、5月の開催されるマギアスピーダ闘技大会の予選の案内を配っておこうと思ってね」

 

 わたくしとアリシア嬢、そして主人公に紙が手渡されます。わたくしは大会《《自体》》にはあまり興味はありません。


 開催はゴールデンウィーク明けです。この世界は地球の色々な国がモチーフになっている国が集まっているのですけど、なぜかカレンダーは日本のものが使用されています。まぁ異世界でもクリスマスがあったりしますし、あまり深く考えないように致しましょう。


「今日来ることができた新入生は君たちだけみたいだから、もしサロンで他の新入生を見かけたら、カラネアについての注意喚起をお願いするよ。もちろん私たちからもするけどね」


「これって本当なんですかっ!?」


 静かにお茶を飲んでいた二条綾子さんが、闘技大会の案内を手に取ると、驚きの声をあげました。ふふふ……そこに釣られてくれますの?


「ああ、間違いない。鑑定済みの本物さ。出所は謎だけどね……」


 闘技大会の案内にはこう書いてありました。


──優勝賞品 ピュアマギコークスクリスタル1本 特別提供 夜月イーリン商会、と。



◇────────────────◇



 その夜、わたくしは夜月研究所へと赴いておりました。結局ヘアサロンへは行っておりません。


 すっかりわたくしの足と化したグローシアを降りると、その足元に翠蘭と未夢が待っておりました。翠蘭は今日もいつもの黒いチャイナドレス姿です。


「あら? ごきげんよう、二人とも。今日はお出迎えがありますの?」


「その……この前のこと謝りたくて……」


 翠蘭がわたくしに謝りたいこと……。心当たりがありすぎて困りますわね。


「翠蘭、どれのことかしら? お漏らししてわたくしの制服を汚したことでしょうか? それともお風呂でわたくしに体を洗わせたことかしら? ああ、わかりました! 最後は致している途中で寝てしまって、さらに見送りもせずそのまま爆睡してたことですわね?」


「わあああああーー! わああああーー! 口に出さなくていい!!!」


「……聞きたくない情報が盛り沢山ね」


 ジト目の未夢の抗議の声を聞き流しながら、わたくしたちは格納庫を進みます。この格納庫もかなり拡張されました。最初に来た時は4機しかいなかったMAも、今や20機を超えます。わたくしの山賊ビジネスの成果ですわね!


「おはようございます! ボス!」


「ボスはやめなさい! お嬢様と呼びなさい! お嬢様と!」


「了解です! ボス!」


 軽口を叩くカラネア隊員たちの笑い声が格納庫に響きます。彼らは元々の夜月研究所のパイロットや他の商会、研究所に《《挨拶回り》》して吸収していった人材、さらに各国の軍から引き抜いて来た人材です。


 わたくしの敵意センサーと面接によって選別された彼らは、今では夜月商会の優秀な尖兵せんぺいとなっています。やってることは山賊ですけどね!


 まったく言うことを聞かないカラネア隊員に文句を言いながら、わたくしたちは格納庫の最奥に辿り着きました。


 そこにはピカピカに磨かれたわたくしの《《新しい》》機体がありました。

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