第19話 フラワーサロン
わたくしはアリシア嬢に先導されて廊下を歩いておりました。わたくしはその「サロン」というものの場所がわかりませんでしたので、アリシア嬢に案内されるがまま進んで行きます。
道中、少し前を歩いていたアリシア嬢が、申し訳なさそうな表情で切り出しました。
「今朝はごめんね、エクソシアさん。私デリカシーのないこと聞いちゃって……」
「いえ、あれは説明が面倒だからそう言っただけで、気にしてませんわよ。失礼な輩が多いですからね」
「これからは任せて! エクソシアさんが不快な思いをしないように頑張るね!」
ふんす! と気合を入れるアリシア嬢。こういう明るくて優しいところが魅力のヒロインですものね。お友達に欲しいタイプですわ。……そのままの意味ですわよ?
「あとルイス王子が変なこと言ってきたら相談してね? 彼、結構抜けてるから……」
「ええ、その時はお願いしますわね」
そういえば二人は幼馴染なんでしたっけ? なんだかいい仲で、ルートによってはアリシア嬢と第三王子の婚約が許されるお話だったような……?
カルヴォノ・マギストリアの主人公は、基本的に|BSS《僕が先に好きだったのに》をキメていきますから、アリシア嬢ルートに入ったりしたら第3王子は可哀そうなことになるのでしょうね。
それにしてもカルヴォノ・マギストリアの主人公はどこに居るのでしょうか? それとも居ないのでしょうか? 別に彼が居ないからといって世界が滅んだりはしませんけれど、わたくし気になります。わたくしとのフラグは立ちませんが。
「ここがフラワーサロンだよ。エクソシアさん」
牡丹の花が精巧に彫られた大きなドアの前で、アリシア嬢はドヤ顔で振り返りました。
フラワーサロン。その由来は皐月学園に所属する5ヶ国の頭文字を取ると、FLOWRになる……と言う、ただそれだけの安直なネーミングです。Eはおりませんけど。
牡丹は花言葉がどうこうという意味だったような……? ごめんなさい。わたくし、そういうの興味がなくて……。
「……ヴィアリスで結構ですわよ」
「じゃあ私もアリシアで大丈夫だよ。これでお友達だね!」
よ、陽キャがすぎますわ……。
アリシア嬢に一瞬でお友達認定されてしまいました。構いませんけど……。それにしても陽のオーラが強すぎます。サラが居たら日焼け止めを塗ってもらうところですわね。
「じゃあいくよ、ヴィアリスさん。……失礼しまーす!」
勢いよくドアを開くアリシア嬢。本当にこの子、侯爵令嬢ですの……? と言いますか、ハロウェル家の関係者というのがいまだに信じられません。神経質で眼鏡をかけた研究者一家、というイメージでしたのに……。この子のルートはあんまり覚えてないんですわよねぇ……。ごめんなさい、アリシア……。
サロンの中の様子を、わたくしの公爵令嬢らしい語彙力で表現するならば、「図書館の中にある高級ホテルのロビー」でしょう! どうです!? わかりやすいでしょう!
「ようこそいらっしゃいました。新入生の方ですね? 話は伺っております。こちらへどうぞ」
中に入ると、入り口に居たロマンスグレーの執事に案内され、わたくしたちは奥の席へと案内されました。
「まぁ可愛らしい。ウィングリーの方たちかしら?」
わたくしたちが案内された先の部屋には、大きな円卓が置かれておりました。そこには二人の女性が腰かけており、右側の女性の後ろに、制服姿の小柄な男性が護衛として立っていました。わたくしとアリシア嬢が入室すると、皆様立ち上がって歓迎してくださります。
1人は小柄な金髪美人。身長は155センチくらいでしょうか? ニコニコと微笑みながら、こちらを見ています。実物は可愛いですわね!?!?
彼女はフォトゥネス教国のヒロイン。いわゆる聖女様ですわね。ファンの付けたあだ名が「ママ」と言えば大体の説明が済むのではないでしょうか? ……実物は本当に可愛いですわね!!!
2人目は、ついにと言いますか、そこに居ましたのね? 聖女様の後ろに立っていた男は主人公でした。
カルヴォノ・マギストリアの主人公は、ゲーム開始時に所属する寮を選ぶことができます。他にも体型や性格などを選択することで、主人公のステータスや、ヒロインからの好感度ボーナスの数値が変わります。
今、わたくしの目の前に居る主人公は、小柄な体型です。通称「ショタ主人公」ですわ。確かに聖女様にボーナスがありますものね……。身長はわたくしより小さく、聖女様よりは少し大きいくらいです。
わたくしのことを、目をカッ開いてガン見しております。気付いていないフリをしておきましょう。
3人目は、黒髪姫カットに黒色の瞳を持つ和風美人。最初は冷たくされるのですが、仲が進展するにつれて、段々とデレや独占欲が出てくるタイプのヒロインです。ヤンデレと言うものなのかしら? ごめんなさい、わたくしそういうの詳しくなくってぇ……。
所属は桜照皇国。名前の通り和風な国ですわね。彼女は竜神を祀る神社の家系の出で、その巫女を務めていたはずです。
時に、ゲームやアニメではよくファンが、登場人物にあだ名を付けることがあります。またその時に酷いあだ名を付けられることが間々《まま》あります。特にカルヴォノ・マギストリアはエロゲーですし、二条綾子のあだ名は酷いんですわよね……。
彼女はとてもグラマラスな体型で、えっちなシーンがやたらと激しく、そして全キャラ中回数が最も多いヒロインなのですわ……。
そう、彼女のあだ名は「性獣」……。




