第128話 魔と鉄
「まぁリドレス七州連合《》の方がここで何をしていますの?」
わたくしの進路の100メートルほど先にMAが現れました。あれの名前はなんでしたっけ? リドレス七州連合の量産型MAで重装甲の砲撃型だったはずです。原作でもワラワラ現れてひたすら遠距離攻撃をしてくる面倒な敵でしたわね。
「ここでエクソシアの女公爵を見つけるとは、やっぱ俺たちゃ幸運だな! これでまた昇進だぜ!」
「油断はしないように。ああ見えてかなりの使い手と聞きます」
わたくしの問いかけがスルーされてしまいました。ミシェルもこんな感じでしたし、リドレスの方たちはあまり人の話を聞かないのかもしれません。めんどくせーやつらですわね。
「それで何なんですの? 殴っていいですか?」
「ハハッ! おもしれぇ女だ! 俺の名前はアイアン=ブッカー! 人呼んで、鉄の男! まだレイヴンランクは19だが、これから1まで上り詰める男だぜ!」
「私はマジック=ゴードン。魔術師と呼ばれております。ランクは20ですが、あなたを倒す者の名をよく覚えておくことですね」
「いえ、わたくしは自己紹介なんて求めていないのですけど……」
レイヴンランク1以外に、わたくし初めて出会いました。いえ、原作ではネームドで出て来ますから見たことはあるのですが、こんなランクの低い方は覚えておりません。
「それでそのランクが低い方たちは、わたくしに何かご用でしょうか? 傭兵をけしかけた時点で敵対しているとは思いますが、念の為ですわ」
「我が軍の下請けの傭兵が襲われましたので、リドレス7州連合は反撃致します」
「わたくしが先に撃たれたのですけど、まぁいいでしょう」
どうせここで反論したところでこいつらと戦うと言う結果は変わらないでしょうし、残念ながらリドレスが参戦することは避けられないでしょう。どうせそんなことになるだろうと思っておりましたわよ!
リドレス7州連合は、元々がウィングリー王国から出発した7つの開拓団が元になっています。そのままそれぞれが州になり、連合を組んだという設定と言いますか、歴史があります。
「そういうことだ! 悪く思うなよ、嬢ちゃん!」
「これも仕事です。申し訳ありませんが、ここがあなたの死に場所です」
好き勝手言っておりますが、わたくしはこういうのによく絡まれる星の元に生まれているのかもしれませんわね……。
それに1つだけ言いたいことがあるのですけれど……。
「じゃあな、嬢ちゃん!!」
「これで終わりです!!」
問答無用とばかりに、2機のMAから同時にエネルギー砲が発射されました。
「あなたたち距離が近すぎませんこと?」
わたくしはエネルギーの投射体を避けると、一息に並んで立っている2機のMA、右側の機体に接近します。
「速いッ!?」
なぜか皆様グローシアの速さに驚かれますが、それくらい計算に入れておいて欲しいですわよね?
「おらぁっ! ですわ!!」
一瞬で敵MAの側面に回り込んだグローシアは、拳と蹴りを敵MAの叩き込みます。右ストレートが顔に直撃し、追撃の左回し蹴りが、左腕の盾付きガトリングガンごと胴を打ちました。
「ごあっ!?」
「ゴードンッ!?」
わたくしが今殴った方が、ランク20の魔の方のおバカのようですわね。殺す気で蹴ったのですが、意外と硬いですわね……。
「クソッ! ゴードンのやつ油断しやがって!」
ではこちらが鉄の方のおバカですか。それでは同じように……いえ、先ほどより強く殴る蹴るをして差し上げます。
次は殺す気で殴ったのですが、残念ながら盾に防がれて腕を破壊するに留まりました。サベージヘイブンを思い出す硬さですわね……。このMAの下半身がタンクバージョンの改造機だったのでしょうか?
「なんて馬鹿力だよッ!? ゴードン! 掩護を!」
鉄のおバカが魔のおバカに助けを求めますが、生憎と返事はありませんでした。頭と左腕と胸がひしゃげて倒れておりますから、当分は魔のおバカの掩護はないでしょう。
「二人仲良く地獄に送って差し上げますからね! 安心してくださいまし!」
わたくしは詳しいのです! 倒したネームドキャラが復活しないゲーム、特に戦略系のゲームは敵の戦力を削るために、しっかりネームドキャラは消していかなければならないのですわ。どうせ生きて帰しても、また襲って来るだけですからね! ゲームのように仲間になったりもしないですし!
「そりゃっ! とりゃっ! 死ねぇっ!! ですわっ!!!」
流れるような追撃の4連撃でダメージはさらに加速した、ですわ! 鉄のおバカのMAは機体の破片を撒き散らしながら、吹き飛ばされました。
「ぐわあああっ!? そんな……嘘だろっ……俺たちが手も足も……」
「どこからその自信が来たのかわかりませんが、さっきの傭兵の方がマシでしたわよ。では死んでくださいまし」
「クソがっ! 先に地獄で待ってるぞ……」
「残念ながらわたくしは天国へ行く予定ですので、お会いすることはないでしょうね」
倒れ伏す鉄のおバカのMAにトドメを刺そうと近付いたところで、接近するMAをわたくしの感応器官が感知しました。
そちらに視線を向けると、土煙を巻き上げながらこちらに疾走してくるピンク色の影が見えました。




