第127話 転脱
エネルギーブレイドを持って接近してくるアイゲンブレートの動きが、以前ボコりました時よりも、とても速くなっています。
原作でもアイゲンブレートは改造することで、もりもりと性能を上げられる機体でしたものね。
最終的には第一世代機を超えてしまうのは、流石主人公機といったところでしょう。そのゲーム的優遇がこの世界でも働いているなら、主人公を生かしておくのは危険かもしれません。
うちはグローシアと量産機や武器の優位でやってきた弱小国家ですからね。折角コツコツと地道に築いてきた優位が崩れるのは困ります。ただこいつが死ぬとシャノンが悲しむことだけが懸念点でしょうか?
「……しかし、あなたがここで人知れず死ねば、シャノンに知られることもありません。ちょうどいいですわ」
グローシアの左肩めがけてエネルギーブレイドが袈裟斬りに振り下ろされます。わたくしはアイゲンブレートの腕の下に潜り込むように密着し、右手を握り込むと鳩尾……ではなく、コクピットに拳を叩き込みました。
「恨むならこの世界を恨んでくださいまし!」
「ぬおっっ!?」
グローシアの左肩に、アイゲンブレートの腕がぶつかったのを感じました。間合いが狭くなったことでアイゲンブレートのエネルギーブレイドはグローシアに届きません。
一方アイゲンブレートの拳を叩き込まれたコックピットは……残念ながら拳を叩き込まれておらず、右腕で防がれております。防いだ右腕は肘の部分がグチャリと潰れ、その手に持っていたアサルトライフルが手から取り落とされます。
「相変わらず生き汚いですわねぇ……。大人しく死になさい!」
「お前……お前……俺を殺そうとしたな!?」
「え? 殺されないつもりでわたくしを殺しに来てたんですの!?」
「ならお前が死ね!」
なんだかよくわからないことを言いながら、主人公はアイゲンブレートの右手首を回転させました。回転したエネルギーブレイドで、グローシアの背中を斬りつけようとします。思わず人間にはできない動きに反応が遅れましたが、斬りつけた場所にはピュアマギコークスクリスタル製のチェーンソーがありました。
「なんだとッ!」
エネルギーブレイドとピュアマギコークスクリスタルが接触すると、閃光が発生しました。そんな反応が起きるなんてわたくしも知りませんでしたが、ピンチはチャンスですわね!
ウェポンアームを動かして、背中のチェーンソーを起動させながらその場でグローシアを1回転させます。グローシアの背中に対して直角近くまで立ったチェーンソーはキーンと甲高い音を立てながら、アイゲンブレートをバターのように切り裂きました。
「ちくしょうッ! 先週借金がなくなったばっかりなのに!」
主人公もエネルギーブレイドで防ごうとしましたが、残念ながら回転ノコギリと化したわたくしの攻撃の軌道をかすかに変えることしかできず。そのまま右腕と頭の一部がスッパリと断たれました。わたくし、ついに背中の死角がなくなりましたわね!!
「安心なさい。死んだらチャラですわよ!」
「死ねるかァァ!!!」
主人公は自分が被弾することもいとわず両肩のミサイルランチャーを乱射しながらを後退します。流石のわたくしもこれには驚きました。わたくしも後ろに下がり弾幕を回避致します。おそらくグローシアの装甲が、緑色に活性化している間でしたらダメージはないと思いますが、汚れますからね。
「次こそ殺すッ!!」
「わたくしが逃がすと思いますの?」
ボロボロになったアイゲンブレートが背中を見せたところに、蹴りをくれてやろうとブースターの出力を上げたところ、わたくしの足元にエネルギー砲が撃ち込まれました。
「むむっ! 何奴ですの!?」
わたくしは咄嗟に回避しましたが、遠ざかっていくアイゲンブレートがどんどんと小さくなっていきます。くぅぅ……殺したかったですわ! 次に会う時にはまた性能が上がってるんでしょうね! ムカつきますわ!!!
「だから傭兵なんて止めとけって言ったんだよ、俺は。ホント使えねぇな……」
「独断専行してただやられるだけとは……。統制が取れていない兵など不要です」
邪魔をしてきたバカが偉そうなことを垂れ流しながら、わたくしの前に現れました。その機体は装甲の厚そうな2脚のMAで、両肩には大型のキャノン砲を装備しています。手には盾付きのガトリングガンを持つ姿、どこか見覚えがありました。……ああ、ピンク頭の専用機「サベージヘイブン」に似ているんですわね。
「あら? リドレス七州連合の方がここで何をしていますの?」




