第126話 ウィングリー王国寮駅へ
ウッコネンの方たちには申し訳ありませんが、わたくしたちにも都合があります。後顧の憂いを断つためにも、ウィングリー王国寮駅を落とさねばなりません。現在わたくしたちを取り巻く状況は、正直なところよろしくありませんからね。
それではウィングリー王国寮駅を早く落としましょう。さぁ出発です!
以前行きました、アペルピシア山脈の雪猿の巣にあったレガシーのことを覚えていますでしょうか? 技術書のようなものがたくさん入っていたあれです。
それが翠蘭の睡眠時間と自由時間を奪ったので、わたくしはそれにあまりいい印象を抱いていないのですが、その技術書のおかげで、ついに! ついにグローシアにウェポンラックが追加されたのです!
グローシアの背中に設置された2つのアームは、チェーンソーをガッチリと持ってくれています。持つものがもう少し小さい物でしたら、各々が別の武器を持てるのでしょうけど、チェーンソーは小型化されたとは言え、結構大きいですからね……。ですがこれで手が空きます。気兼ねなく両手で殴ることができますわ!
「せいっ!」
強行偵察と言う名目で、わたくしはいつも通り単独でウィングリー寮駅に併設されている格納庫に突入しました。2機のミューβが抵抗してきましたが、駐機されているMAもほぼ居なくなっており、閑散としています。寮にももう人が居ないんでしょうね。一抹の寂しさを感じてしまいますわ。
「こちら、エクソシア公国軍ですわー! 今からこちらを占領致しますので、ウィングリー王国の方は退去してくださーい! MAは見かけ次第破壊致しますが、追撃は致しません! さっさと出て行けですわよー!」
倒れたミューβを乗り越えて、わたくしはスポットに抜ける通用口を歩きます。ウィングリー王国寮駅の建物の大部分は、ウィングリー領側にあります。スポット側にあるのは、駅の上を走る防壁と、防衛施設、通用口の出口だけです。
以前わたくしが皐月学園に入学した時にもこの通用口を使いました。2週間ほどで、学生に課せられている、マギコークス納入の年間ノルマを達成して、わたくしは自由の身になったのですわ。なんだか遥か昔のように感じられます。懐かしいですわね。
「よいしょっ」
通用口のシャッターを無理矢理開けて、わたくしはスポットに出ました。念のため防衛施設も確認しておかないといけません。銃口はスポット側を向いておりますが、念のためです。
「こちら、エクソシア公国軍ですわー! 今からこちらを占領致しますので、ウィングリー王国の方は退去してくださーい! 抵抗される方は容赦しませんわよー! とっとと出て行けですわー!」
スポット側を向いた機銃座からも、発砲されることはありませんでした。慈愛溢れるわたくしは、スポット側からも退去勧告を続けます。
「退去される方は、ウェイクリング領に行くんですわよー!」
退去通告をしながら歩いておりますと、スポットから飛来する物がありました。それは複数のミサイルで、残念ながらわたくしを狙っているようです。仕方ありませんので回避致しますと、ミサイルはそのままスポットの防壁に命中し、爆炎を巻き上げました。
「どちら様ですか? 当たったら危ないですわよ!」
「ヴィアリス=エクソシア!」
木々の間から迷彩柄のMAが現れました。あれは以前ぶっ飛ばした主人公の機体、「アイゲンブレート」ですわ。ちゃんと修理して帰って来たんですわね。
「あら? お元気でした? ええと……お名前はなんでしたっけ?」
「黙れチート女! 今日こそお前を倒してシャノン様を返してもらうぞ!」
「別にわたくしを倒しても、シャノンがあなたのところへ帰るとは思えませんが……」
「いくぞッ!」
話を聞かない主人公は、わたくしに向かってアサルトライフルを発砲してきました。しかし、距離を取りながらライフルとミサイルランチャーを撃ち続けるだけで、近寄って来ようとはしません。まぁわたくし殴ることしかできませんから、当然と言えば当然なのですが。
「そりゃっ! ですわっ!」
ですが、わたくしには最近覚えた特技があります。グローシアで手刀を振るうと、手から真空波が放たれ、飛来してきたミサイルを両断し、爆発が起きます。
「嘘だろっ!? きたねぇぞチート女!」
「わたくしはチートなんて持ってませんけど!?」
ジェニシアみたいなやつをチートって言うんですわよ!
「……死ねっ!!!」
なぜか激昂した主人公はエネルギーブレイドを抜くと、わたくしに斬りかかって参りました。わたくし……何かやっちゃいました?




