第125話 逃げろ
「好きにしろッ!」されたウッコネン公爵家の方たちは、困惑した様子でダン・コーマからカエルを引きずり出すと、どこからか取り出したロープで拘束してくださいました。……あ、ありがとうございます。
拘束されたカエルがコンテナに積み込まれると、パイロットスーツを着た女性2名がこちらに歩いて参りました。二人はグローシアの前まで来ると、ぺこりと頭を下げてから、大きな声でこちらに向かって話し始めます。
前を歩く少女は小柄で色白な肌をしており、金のロングヘアを軽く纏めています。後ろに続く女性は、長身で褐色がかった肌をしており、黒のショートヘアでした。この二人が姫と騎士なのでしょう。
「エクソシア様ー! 危ないところをありがとうございましたー!」
「お待たせしたところ申し訳ありませんが、挨拶は後にして急ぎましょう。そちらのコンテナに乗ってくださいまし」
口の横に手を当てて精一杯大きな声でお礼を叫ぶクラウディア姫はとても愛らしいですわね。これは姫の器ですわ……!
それからわたくしはウッコネン家の方たち4名とカエル1匹を乗せたコンテナを再び両手に持つと、追手が来る前に自宅へと帰ることに致しました。
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翌日、改めてウッコネン家の方たちと会談をすることになりました。もちろんそこにカエルは居りません。あれはカラネア諜報部に連行されて行きました。おそらくそれほど重要な情報は持っていないでしょうけれど。
昨日助けました少女。彼女は今は亡きウッコネン公爵の一人娘であり、名はクラウディア=ウッコネンと申します。歳は13歳で、彼女は成人と同時に、わたくしと同じく女公爵になる予定だったそうです。まだ家督を継いではおりませんが、これからどうするのでしょうか?
もちろんわたくしも清く可愛らしい少女を援助することに否やはありませんけれども。……もしかして援助って言いますと語弊があります?
「ごきげんよう、皆様。わたくしが一番最後でした? ごめんなさいね」
サラに案内されて応接室に入りますと、他の方たちはすでにテーブルについておりました。
「この度はわたくしたちを救っていただきありがとうございました。他の者たちにも代わりまして、お礼を申し上げさせて頂きます」
「お気になさらないでください。わたくしとクラウディア様は遠いとは言え親戚同士です。お父上のことは、何も力になれず申し訳ありませんでした」
「いえ、ご支援感謝申し上げます。亡き父もエクソシア様に感謝していることでしょう……」
畏まった挨拶を交わした後、ウッコネン公爵領で起きたことが語られました。
まずジェニシアが単騎で突っ込んで来て、防衛していたMAや施設を破壊して行き、そのままウッコネン領都にある城まで攻撃してきたそうです。……どこかで見たやり口ですわね? わたくし、なんだか心当たりが……。
その後、ウィングリー王国軍の部隊が、ボロボロになった防衛網を突破し、各地の制圧を開始。ジェニシアを止めることができず、まともに戦うこともできなかったようで、やむなくウッコネン家の方たちは姫を脱出させることにしたそうです。
「ジェニシアからよく逃げられましたわね?」
私は素直な感想を述べました。以前もお話しましたがミューβが自転車とするならば、第一世代機は、レーシングカーと言っても差し支えがないくらいには性能差があります。普通でしたら追いかけられましたら絶対に逃げられません。
以前ウッコネン家の方に教えて頂いた、第一世代機の動きを鈍らせるフィールドのようなものを発生させる装置も、床に足をつけていないと効果がないそうですから、飛んでいるジェニシアには効きませんし……。
「それなのですが……その、ジェニシアが……なんと言うか不可解な動きをしたのです」
「不可解ですか?」
報告をしていたマリオンと呼ばれる褐色女騎士の方が、言葉を慎重に選びにながら、絞り出すように言葉を続けます。
「突如ジェニシアは追撃を止め、ジェニシアから……ルイス殿下の声で『逃げろ』と……。そこでジェニシアは無差別に周りを攻撃し始めたので、私たちはその隙に逃げ出したのです……」
「それは本当に第3王子……ルイス殿下が言ったんですの?」
「はい、確かにルイスお兄様……いえ、ルイス殿下の声でした。どうして、なぜこんなことに……」
クラウディア姫は、悲しそうな顔で目をうるませています。彼女の金色の髪と、朗らかな雰囲気がどことなくシャノンを連想させます。泣き顔が似合うところもそっくりです。
ふとシャノンに目を遣りますと、ニコリと微笑まれてしまいました。うふふ……あの美少女、わたくしの女ですのよ。
「……それは興味深い話だな」
もう一人のわたくしの女、翠蘭が声を上げます。
それからも報告は続けられましたが、内容としましては、第3王子に逃がされてからの逃走のお話と、コードウェル家の手の者たちに攻撃を受け、わたくしに助けられたお話が語られました。ちなみにコードウェル家はカエルさんの家ですわよ。
ウッコネン家の領地が回復されるまで、ウッコネン家ご一行様は我が家でお世話することと相成りました。またうちに亡国の姫が増えましたわね……。




