第122話 救出
突然もたらされた凶報に、わたくしは驚いて出撃の準備を整えます。急いでパイロットスーツを着て、グローシアに乗り込ますと、翠蘭からの通信が入りました。
『ヴィアリス、ウッコネン公爵領方面に潜伏していたピロフォリオからの情報によると、ウッコネン公爵軍は壊滅、すでにウッコネン領都もほぼ押さえられている』
『早すぎますわね……。これではまるで、わたくしたちがやったハロウェル領侵攻のようではないですか?』
『意趣返しってやつかもな。おそらくウッコネン家の者が乗ったMAと、その護衛がウッコネン領から脱出して、南のラッシュブルック領方向に進んでいる。このままだと他領で追撃されるかもしれん。すまないが、一番足の速いお前に救出を頼みたい』
『それは構いませんけど、場所はわかりますの?』
『ああ、逐一ピロフォリオが捕捉している。彼らの乗っているMAは放棄してもらって、人員輸送用コンテナで回収して来てくれ』
『一応仲良し宣言致した仲ですものね。わかりました、わたくしがお迎えに上がりましょう』
人員輸送用のコンテナを両手で持ちながら、エクソシア騎士団を出発したわたくしは、定期的にピロフォリオから送られてくる位置情報を頼りに、上空を飛び続けます。やはりコンテナを持つと、あまりスピードが出せませんわね……。
ウィングリー王国の王都は、王国のほぼ中央に位置していると以前お話しましたが、ウッコネン寮は王国の北西端にあります。そして敗残兵たちはその南にあるラッシュブルック子爵領方向に逃げたとのことです。
移動中にも新たな情報が入って参ります。それによりますと、ラッシュブルック子爵領を無事通過したものの、コードウェル男爵領に侵入したところで、ウッコネン公爵家の方たちが、コードウェル男爵の手の者から攻撃を受けたと言うのです。
このコードウェル男爵はウッコネン公爵の寄子と言いますか、ウッコネン派閥の家だったはずです。おそらくウッコネン公爵家の方たちは、男爵を頼って通過しようとしたのでしょうが、残念ながらウッコネン家が弱った今、逆に狙われることになってしまったようです。
ウッコネン家の生き残りを手土産に、ウィングリー王国に帰順したいのでしょう。わたくしでしたら、そんな寄親を裏切って売り飛ばすような者は信用できませんから、理由をつけて排除しますけれども。
『ボス! 急いでください! ウッコネン家の生き残りが制圧されそうです!!』
ピロフォリオから悲鳴にも似た通信が入ります。ピロフォリオは自衛用の小さなの折り畳み式ハンドガン1つしか武装を持たない非戦闘用のMAですから、目の前で繰り広げられる蹂躙を前に、無力さを噛み締めているのかもしれません。
『もう少しで着きますから、あなたも変な気を起こすんじゃありませんわよ!』
『はっ、はい……』
絞り出すような声とともに、ウッコネンの生き残りの方たちの正確な位置が、ピロフォリオから送られてきました。
「このコンテナ、わたくしが持つのではなくて、別の者に後から持って来てもらえばよかったですわね?」
操縦桿から魔力を流し込めるだけ流し込むと、グローシアの装甲と関節の一部が緑色に輝きます。グローシア(緑)に進化したことで、ブースターの出力が大幅に上がりましたし、わたくしの脳内に気持ちよくなる類の物質も、大量放出されるようになりました。
「おほぉ~~~!!!」
少々はしたない声を上げながら、わたくしは全速力で目的地に向かいました。




