第123話 カエル
『ぐふふふふ……ワシにも我が世の春が来たか。まさかクラウディア姫が手に入るとはなァ』
『制圧完了しました! ご当主様、護衛も生きていますがどう致しますか?』
『クラウディア姫は丁重に屋敷へお連れしろ。他の者は適当に処分しておけ。女もおるのくァ?』
『はい。護衛の女騎士が居りますが、どうされますか?』
『うむ。ワシは話のわかる上司だ。お前たちにも息抜きが必要であろう? なァ?』
なぜかわたくしのグローシアに、ピロフォリオが傍受した通信が垂れ流されています。音声から容姿が想像できる男爵の声と、その部下であろう中年男性の声が、グローシアのコックピットに響きます。この男爵、絶対にガマガエルみたいな見た目してますわよ。
『流石は仁君と名高きコードウェル男爵様でございます。我ら一層忠義を厚く致す所存でございます』
『うむ。精々楽しんで来るがよい。……ぐふふふふ』
話が解る系上司をよいしょする不愉快な会話を聞き流していますと、その音声の中に女性の悲鳴や怒号が混じり始めます。
『大人しくしろ! 邪魔するな女!』
『姫様を放せ! 下衆ども! ぐあっ!?』
『やめて! ソフィアに乱暴しないで!』
『やっぱ高貴な女は肌質からして違うよなぁ……。おいっ! お姫様は男爵様のモノだ! 傷付けるなよ!』
『隊長! 何か飛来するものがあります!』
『飛来? なん……』
この世界の者たちは、目を離すとすぐに「この女はお前たちにくれてやる! 好きにしろッ!」をし始めてしまうのは、やはり元がエロゲの世界だからでしょうか? わたくし、かわいそうなのは抜けませんので、止めさせて頂きます。
「死に晒せやッッ!! ですわっっっ!!!」
コックピットハッチを開けたまま棒立ちしていた、ミューβの前に着地致します。もちろん着地する際に、グローシアの蹴りによっておそらく隊長機であろう、そのミューβを真っ二つにしておきました。縦にです。
火花と炎を巻き上げながら左右に分かたれるミューβを、後ろに倒すように蹴りを入れておきます。こちらに倒れたら危ないですからね。
土煙を上げて倒れるミューβの前に、手に持っていたコンテナをドンと置きます。そして大破したミューαの前に集る暴漢たちを、グローシアの指で潰さないように優しくつまみます。
「手で叩いたりしたら、グローシアが汚れてしまいますからね。新記録を出して見せますわ!」
「やめろ! やめろっ! 離せよっ!」
人間を全力で投擲する経験は初めてでしたが、叩き潰したり、ショットガンで血煙に変えるよりはよっぽど平和的ですわね。100メートル以上飛んで行きましたが、まだ生きている可能性もありますし。
「これは絶対新記録ですわね!」
「なんだ貴様!? どこの手の者だァ!!」
驚いたことに、カエル男爵は「ダン・コーマ」に乗っておりました。どうしてハロウェル騎士団専用のMAがここにあるのかはわかりませんが、わたくしがこいつを殺す理由には十分です。
「答えろ無礼者! ええい、皆の者! この賊を直ちにくびり殺せっっ!」
「うるせぇですわよ!」
とりあえずそこらに落ちている暴漢を投げ付けておきます。わたくしの見事なコントロールによって、ダンコーマに直撃し、暴漢はきたねぇ花火と化しました。全員投げておきましょう。
「げぇっ!? こやつ頭がおかしいのか!?」
トマトを投げるタイプのお祭りを想起させる光景から目を逸らし、わたくしは襲われていた被害者たちに声をかけます。
「ごきげんよう、わたくしはヴィアリス=エクソシアと申します。あなたたちはこのコンテナの陰に隠れているように。防弾仕様ですからね。すぐ終わらせますから、少し待っていてくださいまし」
「ヴィ、ヴィアリス=エクソシアだと! 大逆人がなぜここにおる!?」
うるさくて不快なカエルには返事をせず、わたくしはさっさと仕事を済ませることに致します。以前、害獣と会話しても無駄だと学びましたからね。詳細は省きますが、件の害獣さんは故郷の城門に飾られたそうですわよ。
『ピロフォリオの方! 周囲の警戒お願いしますわね!』
『お任せくださいボス!』
「ぐふふ……ぐふふふふ……やはりワシはツイておるわァ! エクソシアの気狂い姫を捕らえられれば、侯爵も夢ではないぞ! 皆の者! この女を捕らえれば恩賞は思いのままぞ!」
「おおっ!!」
「陣形を立て直せ! いくぞ!」
「誰が気狂い姫ですか!? 誰がどう見てもわたくしは正気です!」




