第121話 ナレ滅
ごきげんよう、皆様。夏の休暇も終わり、わたくしも対ウィングリー戦線に戻って参りました。そしてわたくしたちには、まだまだやらねばならないことがございます。
まずはハロウェル領を、吸収しなければなりません。と言いますのも、ハロウェル領は騎士団も、ハロウェル侯爵家もほぼ壊滅していて、現在無政府状態となっております。
ハロウェル領で研究を行っていた者たちも、リュドヴィック共和国に逃亡したとの情報がもたらされており、このまま放置しておくのも、エメラルドアイ保全の観点から見ましても、あまりよろしくないとの判断です。
それにわたくしたちのプロパ……素晴らしいラジオ放送の甲斐もあってか、ハロウェル領の民たちは協力的です。わたくしたちエクソシア公国領に編入されるのを、熱望している町すらあったそうです。メディアの力ってすげーですわね?
ちなみに3つあったウィングリー王国のラジオ放送局のうち、国営放送は以前爆破したとお話しましたけれど、残り2つは民法だったので見逃していました。ですが、残念ながらエクソシア公国に敵対的な放送を繰り返すため、先日爆破されてしまいました。カラネアって悪いやつですわねー?
とにかくそれによって、ウィングリー王国内で放送されるラジオ放送は、我が国の偵察機兼電波中継機MA「ピロフォリオ」によって、すべての電波がジャックされ、シャノン……いえ、聖女様のありがたい説法や、わたくしの涙ながらの訴えが垂れ流されるようになっております。それだけでは視聴者の方たちも飽きてしまうだろうと、先日よりエクソシア公国がニュースを流したりしているようです。
ウィングリー王国もそれに対抗するべく、場所を隠してラジオ局を再建したりもしたようなのですが、残念ながらその電波は「ピロフォリオ」によってジャミングされてしまい、ウィングリーの民たちに届くことはありませんでした。
そのような背景もあり、エクソシア公国がハロウェル領に進軍した時も、わずかな抵抗しか受けることはなく、ハロウェル領都にもスムーズに侵入することができました。
ジェニシアが出てくるかと思い、わたくしも新しいチェーンソーを担いで随伴していたのですが、ヤツが現れることはありませんでした。早くブッた斬らせて欲しいですわ。
とにかく無事にハロウェル領都を占領したわたくしたちは、「ウィングリー王国寮駅」を次の目標に致しました。北にあるウェイクリング領にも小さな駅はあるのですが、この学園寮のある駅が、ウィングリー王国内で最も大きく、そして貨物の積み下ろしができる唯一の駅なのです。
ここを押さえることができれば、ウィングリー王国へのマギコークスの供給経路が断つことができます。そうすればこれから訪れる冬の寒さにも、燃料不足で困ることでしょうし、最終的にはMAも動かすことができなくなります。ピュアマギコークスクリスタルに寿命はありませんが、通常の赤いマギコークスは、それほど寿命は長くありません。使用すれば適宜交換せねばなりません。
ウェイクリング領から、スポットへ入ることはできますので、そこで採掘、採取を行うことはできるでしょう。しかしあそこは夜月研究所から近いこともあり、カラネアで妨害することが可能です。
問題はウィングリー王国と、リュドヴィック共和国は地続きなことです。その為、陸路で持ち込まれてしまえばお終いです。ですからマギコークスの供給を滞らせる作戦は、リュドヴィック共和国が余計なことをしなければ、という付帯条件がつきます。
リュドヴィック共和国は、現在エメラルドアイ関連の研究を凍結しているそうですが、ハロウェルの研究者の流出や、ウィングリー王国国境の軍備を増強していたりと、なかなかキナ臭い動きが続いております。ウィングリー王国が滅ぶまで大人しくしておいて欲しいですわね!
ウィングリー王国寮駅侵攻の準備をしているところを横目で見ながら、格納庫に備え付けられたソファーでゴロゴロしておりますと、カラネアの方が騒がしくこちらに走って来るのが見えました。
「ボス! 大変です!」
「どうしました? この世にはそのように焦るようなことなど何もありませんのよ。あとお嬢様と呼びなさい」
「ボス! ウッコネン公爵領がジェニシアに急襲され壊滅! 生き残りがこちらに助けを求めて敗走中です!」
「なんですってぇっ!?」




