第113話 チェーンソー改
とにかく細かくしていけばそのうちわかるのではありませんか? 早速試し切りと参りましょう!
わたくしは一刻も早くチェーンソーの切れ味が知りたくて知りたくてしょうがなかったのですが、その手前でいまだにスピーカーから愉快な会話を垂れ流す二人を見て、心が鎮まっていくのがわかりました。スンッ……ってなりますわね。
「……もうむり。かえろ」
「あの、撃つだけ撃って気分悪くなるのやめてもらってもいいですか? サブパイロットの人たちのことも考えてくださいね!?」
エスピティマスは砲身からうっすらと煙を立ちのぼらせながら、ゆらゆらと後方に下がっていきました。……未夢の席にはトリガーを付けない方がいいんじゃありませんこと? アリシアに突っ込み兼砲手を担当してもらえばいいのかもしれませんわね?
「では気を取り直しまして……」
恨みのこもった視線をこちらに向ける鉱血竜──まぁ、ヤツに目はありませんが──に向かって突撃すると、鉱血竜も迎え撃つ構えなのか威嚇なのか、口を広げてこちらに向かって咆哮します。
──!!!!!!!
音もなく空気が震えました。いえ、音を感じられないくらい咆哮の音が大きかったのです。空気の圧で耳が痛っったいですわね! わたくしは繊細なんですから気をつかって頂きたいですわ!!
鉱血竜の体表を走る緑の血管の光がさらに強くなります。ついに最終形態になったようです。わたくしはちょっと殴っただけで、大半が未夢のエピスティマスのエネルギー砲のダメージな気も致しますが……。
耳の痛みを我慢しながら、チェーンソーに魔力を流すと刃がなめらかに回転を始めます。以前のチェーンソーがギャリギャリと重機のような音を奏でていたのに対し、こちらの新型は立て板に水を流すようになめらかです。……立て板に水の使い方あってます?
キュイキュイと素敵な音を立てて、連なった緑色の光が回転いたしております。刃渡りは3メートルはなさそうな長さですが、太さ20メートルはあるミミズをぶった斬れるのでしょうか?
「そいやっ!」
回転する鋸刃を前に突き出しながら、エネルギーフィールドが発生する間合いまで突っ込みます。するりとエネルギーフィールドを切り裂いて、そのままザクリと鉱血竜に突き刺さりました。思ったより切れ味がよろしいですわね……。
突き刺さったところからは、ドクドクと緑色の竜血が湧き出でてきます。先ほどまでは赤かった竜血の色が変わっていますわね。これもピュアマギコークスクリスタル関係の物質なのでしょうか? 輪切りにしてホルマリン漬けにして研究所に送り付けて差し上げなければなりませんわね!
「くるっといきますわよ!」
咆哮し暴れる鉱血竜の体表にチェーンソーを突き刺したまま、ぐるりと回るように体表を走ります。鉱石を含んでいる硬質な体表も、まるでプリンをスプーンで切り分けるように進んでいきます。甘いものが食べたくなってきましたわね……。
やはりチェーンソーの長さが足りず、両断とまではいきませんでしたが、確かに鉱血竜の胴体の中心を残して断ち切っています。しかし時間がかかってしまいそうですわね……。
はたとそこでわたくしは思いつきました。木を伐るときには切れ込みを入れて木を倒すように伐採致しますわよね? あのようにすれば手早く処理できるのではありませんか!?
「ふふふふ……ついにわたくしの必殺技『チェーンソーVの字斬り』をお見せする時が来ましたわね!」




