第110話 鉱血竜
上空から竜洞山を見ていますと、火口付近から激しく噴煙が上がり、多数の噴石も飛んでいるのがわかります。地上では長く弱い地震も発生しているようで、振り返って見ると中腹にある拝殿の屋根が傾いているのが見えました。大丈夫でしょうか?
辺りに轟音が響き、火口で花が咲き誇るように爆ぜると、そこから一際大きな噴煙が上がりました。……いえ、それは噴煙だけではなく、その中から巨大な竜が空に昇るように現れたのです。
あれがカルヴォノ・マギストリアでは「鉱血竜」と呼ばれていた桜照皇国の……二条綾子のメインイベントのボスです。
100メートル以上あがっているであろう噴煙より高く伸び上がっており、太さは先ほど壊した御神体と同じくらいです。そして全長は…………まぁとっても長いですわね。
あの言いにくいのですけど……ゲームと現実ってやはり縮尺の感じ方が違いませんか? わたくしが想像していたよりはるかに大きいのですが……。
『な、何を突っ立っておるのだ、ヴィアリス=エクソシア! 本当にあれを倒せるんだよな!?』
『できらァですわ!!! あなたは二条綾子の避難の手伝いでもしに行っていなさい!』
うるさい祝融を腹いせに追い散らしておきます。……なんだかあまり気が乗りませんが、やるだけやってみましょう。
鉱血竜が鎌首をこちらにもたげます。しかし鉱血竜の頭部に目はありません。見た目は体を鉱物で覆われた巨大な口で、まるでヤツメウナギのような見た目をしています。そしてその体表には竜血が毛細血管のように走っており不気味に脈動しています。
「せいっ! ですわっ!!」
最大加速したグローシアの蹴りと拳が鉱血竜を叩き込みます。鉱石でできた表面が砕けあたりに飛び散ります。それにしても分厚すぎますわね! まるで岩を殴っているような……? ああ、先ほど殴った御神体と変わらぬ殴り心地ですわね。
「オオオオオオオオオオオォォォォ!!!」
わたくしの攻撃など痛かったとは到底思えなかったのですが、鉱血竜が咆哮しました。おバカデカい図体のくせに殴られて怒っているのでしょうか? サイズ的には人間と羽虫とほどの差がありますのに……。例えるならば、寝起きにスズメバチに刺された人……? わたくしなら絶対ブチギレますわね!
巨大な体で小さな──と言ってもMAは20メートル近いのですが──標的を攻撃するのは難しいようで、辺りを破壊しながら大きく体をくねらせ、回り込ませるように頭をこちらに向けると、まっすぐに突撃して参りました。
直線的な突撃を回避すると、鉱血竜は頭から火山に突き刺さります。そのまま潜っていくようですので、お尻をガンガンと殴っておいて差し上げます。
……いつか倒せるんでしょうけど、かなり時間がかかりそうですわねぇ……。困りましたわ。
「そうでした、あれの練習を致しましょう! わたくしにもついに修行パートが訪れたのですね!」
潜りゆく鉱血竜の巨体に、魔力を多めに流しながら手刀を繰り出します。
「グオオオオオオオオオオオオ!!」
「あら、意外と効いていますのね?」
スパりと手刀が切り裂いた場所からは竜血が噴き出しました。地下からくみ上げられていた竜血は、鉱血竜の体液なのでしょうか? 原作でもあまり詳しく語られていなかったような気が致します。作者の人はそこまで考えていなかったのかもしれませんわね?
「このまま三枚おろしにして差し上げますわ!」
その調子で何度も何度も何度も何度も何度も切り裂いていますと、段々と斬撃が大きく、遠くまで飛ばせるようになってきました。まるで熟練度が貯まって、スキルレベルが上がったような気分ですわね! カルヴォノ・マギストリアにはそのようなシステムはありませんでしたが。
やはり強い敵を殴ることが、人生のスキルレベルを上げるのに大事なのかもしれません。わたくしもっと強いやつを殴りたいですわ!! 特にあの王子とかボッコボコにしたいですわ!!!
わたくしが人生のレベリングをしていると、蝋燭の炎が消えるように鉱血竜の体表で脈動していた赤い竜血の灯りが消えました。
ドクンと次に淡く輝いたのは緑色の光です。まぁカルヴォノ・マギストリアの世界では緑色に光るものは強いということになっておりますので、そうなりますわよね……。
わたくしレベルになりますと、第二形態もソロで討伐してしまっても構わないのでしょう?




