第104話 怨念が…
「ご当主様、妾はもう一度巫女様に会いたい」
「それは厳しいかもなぁ。竜洞山一帯はもう再封印派がガチガチに固めとる。いくら君の腕がええからって無茶や」
「そのためにわたくしが来たのですわよ」
「君は一体……」
何かを思い出すように二条侯爵がわたくしの顔を見ていますが、わたくしは気にせず出されたお茶にそっと口をつけました。いっそわたくしのことを思い出してくださった方が話が早い気がしてきましたわね……。
わたくしの記憶が正しければ二条侯爵は元々再封印派だったはずです。しかし再封印の生け贄に自分の娘が選ばれてしまいました。その結果、娘可愛さに封印解除派に鞍替えした経歴の持ち主です。
周りは彼を卑怯者だと罵るようですが、わたくしはそうは思いません。大勢のために個人が大切なものを差し出すなんてバカげています。そしてそれが織り込まれている社会なんてどうせいつか滅びるのです。それならばわたくしが今すぐ滅ぼして差し上げましょう!
「で、弟子? 落ち着いてくれんか?」
「あら、ごめんなさい。ちょっと考えごとをしていましたわ」
引きつった顔の祝融に意識を向けた時、外の廊下をドタドタと走る足音が聞こえてきました。その足音の主はわたくしたちの居る応接間の前にたどり着くと、息を切らしながらノックをしました。
「た、大変です! 格納庫に賊が!!」
◇────────────────◇
わたくしたちが格納庫についた時にはすべてが終わっておりました。ああ、わたくしのグローシアが……。
賊の狙いは祝融とわたくしのグローシアだったようです。きっとわたくしたちが桜照皇国寮を通過した時に何者かに狙いをつけられていたのでしょう。
「ひぃっ!?」
グローシアの前に転がる死体を見て祝融が悲鳴をあげました。周りを取り囲んでいた二条公爵家の騎士団? 武士団? の方たちも距離を置いて近付こうともしません。
その死体は体表のところどころが真っ黒になっており、首を両手で押さえ、目を見開いて絶命しております。舌もでろりと外に飛び出しており、死後硬直なのかいまだにビクビクと体が動いているのがまた不気味です。
「まぁまぁ!」
わたくしもうちの怨霊の祟りで死んでいる方は初めて見ましたわ。オルシアは関係者以外には優しくなかったようですわね。といっても怨霊が居なくても鍵がないと動かせないのですが……。
祝融の炎帝の前には血塗れの男が転がっています。こちらは警備をしていた方たちに銃で撃たれたようです。お掃除が大変そうですわね。
新入りのMAより見知った用心棒のMAを守るのは理解できますが……。内通者がいるのか警備体制が緩いのか。さっさと移動した方がよさそうです。
それにしても知らない人に私物を触られるのって苦手なんですのよね……。
「祝融、一旦戻りませんか? どうせわたくしは連絡しなければなりませんし」
「師匠な? 妾はご当主様ともう一度話しをしてくる。お前は連絡を取って戻って来るがいい」
「まぁそれでも構いませんけれど……」
死体の後片付けは任せて、わたくしは祝融と別れて一旦スポットに設けられた中継基地に戻ることにしました。




