第103話 二条邸
「祝融様! ご無事で!」
一旦二条家の格納庫に向かったわたくしたちは、MAを降りると祝融の部下たちに囲まれてしまいました。二条綾子のボディーガードをしていただけあって皆女性の方です。
「そちらの方は?」
「上清様に紹介してもらった助っ人だ。気にせんでよい」
「ごきげんよう、皆様」
「よ、よろしくお願いします……?」
「そんなことより巫女様はどうなっているのだ!」
部下の方たちから情報共有がなされると、事態が意外な状況におちいっていることがわかってきました。
意外にも、と言えば失礼かもしれませんが、祝融がエクソシア公国に行っている間も無事に護衛は行われており、封印解除派に拉致されたというわけではありませんでした。二条綾子は自分の意志で竜洞山に向かったと言うのです。
「なぜだ!? 妾が居ればお諫めしたものを……!」
落胆と静かな怒りをあらわにする祝融をわたくしは何とも言えない気持ちで見つめておりました。結局彼女は原作でも二条綾子を救うことができず、再封印派絶対殺すマンと化して竜洞山の近くを徘徊していたのですから。
報告が終わっても祝融は落ち込んだ様子でした。しばらくすると二条家から呼び出しの使いがやって参りまして、わたくしたちは二条家の現当主である二条侯爵と面会することになりました。
以前案内された神社兼自宅のような不思議な二条綾子の実家。今度は離れではなく、母屋の方に案内されることとなりました。なんだか和風建築に懐かしい気持ちになりましたが、前世でもこんなに本格的な和風建築に住んだことはないので完全に気のせいですわね!
「こちらです」
案内の方の後ろを着いて行くと応接間に通されます。スリッパを履いて板の間を歩くなんて何年ぶりでしょうか。
応接間はやや薄暗い洋室で、テーブルとソファーが2脚置いてあります。洋館の一室といった趣きですわ。
中に入ると眼鏡をかけた細身の男性が腕を組んでソファに座っています。髪は長くポニーテールのように一つ結びにしています。
この方が二条綾子の父、二条治重です。レンズ越しに見える目は細く、口元は笑っているのかいないのか、不思議な表情をしています。端的に申しますと、大変胡散臭いお顔をしていますが、別に彼は裏切ったりはしません。ただ胡散臭い顔をしているだけの方です。
「帰ってきたばっかのとこすまんね、祝融」
「いえ、お呼びとあらば。妾こそ大事な時におらぬで大変申し訳ありません」
話し方まで胡散臭くってわたくし感動致しました。原作でも妙にネタにされて人気のあるキャラではありましたが、実際はただの子煩悩なおじ様なのですよね……。
「君が離れるのに許可を出したんは僕や。気にせんでええよ。ところでお隣さんは?」
「ごきげんよう、二条侯爵閣下。わたくしは祝融の弟子? ですわ」
「やけに品のあるお弟子さんやね。それにどっかで会おたことない?」
「いっ!? 今はこやつのことを話している暇などないはずです! 巫女様はどうして社に行かれたのですか!?」
「ああ……それなんやけど、なんや嫌になった言うてなぁ……」
「嫌に? ですの?」
「再封印派と封印解除派の派閥争いに疲れたらしいわ。せっかく皐月学園に逃げた思たら、その学園に誰も来おへんようなって、家に帰れ言われるんやから、そら嫌になるかもなぁ……」
祝融がジロリとわたくしを睨みましたけど、わたくしは悪くないですからね!? 何もしてないのに皐月学園が壊れたんですから!!




