細い糸が編まれ組み織られ、やがて模様となるように
――その日の夜
「そちらの方はどうでしたか?」
宿として令嬢たちが泊まらせてもらっている建物の一角で三人が集まっていた。壁の傍で椅子に行儀よく座った令嬢が、同じく別の椅子へと座っていた子爵へと眼球だけ動かして視線を向けると、彼はこめかみあたりの髪をかき上げながら不服そうにため息を漏らす。
「確かにお前の言っていた通りだよ。何度も外に誘ってみたし色々と話もしたが例外なくそうだった。」
「そうでしたか。」
「お前はこれを予想していたのか?」
「幾つかの予想の中でそうかもしれないとは思っていましたが本当にそうなるとは思って……いえ、なって欲しくないと思っていました。」
「ふうん。どうだかな。」
苦々しい表情で吐き捨てるように言った子爵は不満げに視線をそらして顔を俯かせる。
ただそれ以上を問うこともなく令嬢はもう一人の方へと視線を向ける。
「マヘリアの方はどうだった?」
「確かに洪水の被害のあったところには慰霊碑がありましたよ。丁度ジョンと言うご老人が来ていらしたので、時折村長が花を手向けに来るって話とか、昔のこととかお話を聞きました。」
そうして侍女のマヘリアはジョン老から聞いたことや見知ったことを伝えていく。
「なるほど……。」
聞いてそして令嬢は陰鬱な顔を一層に暗く悩みこませてどこをみるでもないが床の方へと視線を向けたまま口に手を当てて何やらを思案しているようだった。
「何かわかったのか?」
「多分……ですが。」
「多分……か。何が分かったのか知らんが、それを知るのは神に恥ずべきことではないのだろうな。」
「子爵様が何を恥と思っているか知りませんが、儀式のために必要なことです。」
「……まあ、俺に権限はないからこれ以上は言わないが。それでどうするつもりだ。一応約束では調べるのは今日までの予定だろう。」
「ええ。どうするかは決まっています。」
「ほう?それで?」
興味深そうに子爵は真剣に令嬢を見つめる。
「明日、予定通りに儀式を実行します。」
その言葉に子爵は強い疑念と微かな怒りとを、侍女は大いなる悲しみとそして粛々とした準備への心構えがそれぞれに訪れていた。




