周りにたくさんの人が転がっていて真ん中にいるやつは絶対にヤバい奴
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無事敵との戦闘が終わり、斧を取り返した俺たちは新しい道を進んでいた
「まじでありがとな武戦!これがなきゃ俺はただの無能力者だからよ〜」
「まだ会って短いのに一体お前は何回俺にありがとうって言ったんだか。あと、無能力者でも関係なくお前は体が鍛えられているよ」
「その体はお前が斧を振ってできた努力の結晶みたいなものだよ」
俺は辰真を見る。斧を探している時からわかっていたが、こいつは身体をかなり鍛えている。
「そうか?」
「あぁ」
「………へへっ」
彼は少し嬉しそうに笑った。
「そういやあいつの能力は一体なんだったんだろうな?」
「まあ見る限りは空気を拳の形に固めて飛ばす能力かな?」
「そんな強そうな能力のやつによく勝てたな!」
「まぁ………さっき勝てたのは相性だろ」
「武戦の能力が気になってしょうがないぜ!!」
「言うわけないだろ?さっきも言ったが能力がバレるのははこの競い合う学校で足枷にしかならないってな」
俺たちが受けているこの天穹異能学園は当然普通の学校とは違う。国内唯一の能力者学校であるため勉強よりも能力の強化が目的とされる。
「辰真、一旦ここらあたりで別れよう。二人でいるのもいいとは思うが結局個々で力を証明するのが効率がいいからな」
「分かったぜ武戦…………絶対合格しろよな!」
と言いながら腕をまっすぐ突き出す
その行動に俺も呼応して腕を突き出すそして拳を合わせる
「「じゃあな」」と言い、俺たちは別れた
ーーーそこからは早かった。
派手に能力を使い、自分の位置を周囲に示している受験生。
俺はそういう相手を探した。
一人
二人
三人
「これで三人目か………まぁこれくらいで丁度いいか」
あの理事長はすべて丸わかりだなどと言っていたが、正直なところそれは怪しいと思っている。
一つの戦いくらい見逃してしまうこともあるだろう。
だから三人くらい倒したらいいかと考えた訳だ。もし一人倒しているところを見逃していたとしても他の二人と戦っていることは見えているだろうからな。
「だけど奇襲って評価されるのかなぁ……」
先程戦ってきた相手たちは全員目立っていたので、実はこっそり近づき先制攻撃を放ち戦闘不能にしたのだ。
「でも奇襲特化の能力とかもあるだろうし大丈夫か」
とそんなことを考えながら山の中を歩いていたら、人が見えた。
その人物は背が高く、白を基調とした服を着ているまるでモデルのような体をしている女性であった。
その姿を見た瞬間。
ーーードクン。ドクン。と
心臓が大きい音を出しながら跳ねる。
そして気配に気付いたのか自分の方を見てきた瞬間
全身から緊張と汗が吹き出し、俺は全力で走って逃げ出した。
「あいつはダメだ………!勝てない!」
山道、木々、岩、小石。
普通なら足を取られてしまうような障害物が多い山を一切引っかからずに俺は山を駆け降りる。
それなのに………………
「何故逃げるんですか?」と耳の近くで声がした
その瞬間殺気を感じたその直後。
その攻撃はもはや見えると言う速度では無かったが…………武戦は避けた。
「いきなり初対面で殺しにかかるのはどうかと思うんだけど?」
余裕な感じに振る舞うが今の俺には全くない。
さっき見たあいつの周りには二十人以上が意識を失って倒れていた。能力者を二十人以上だぞ?どんな力の差があったらそうなるんだ。
「失礼ですね 私は彼らを殺してなどいません」
「ただ、弱い者いじめは好きではないので一発KOしただけですよ」
と目の前の彼女は余裕綽々の様子で話す。
「………………………」
こいつ、本気で言っている。
その目は凶暴というわけでもなく敵を見るような目でもなく、象が蟻に勝っても何も思わないようにただただ当然のように語りかけてくる。
だが、そいつは目の前の武戦の顔を向いて表情をほんの少し変える。
「私の攻撃を避けられたのはこの試験では初めてですね」
一目でわかる。これは今までの相手とは次元が違う存在だと。
戦っても負けることは確実だ。
なら、俺に残された選択肢は一つだけ。
「見逃してくれないか?俺は学園に入ってやりたいことがたくさんあるんだ」
そうすると彼女は驚くことを言った。
「その心配なら必要ないと思いますよ。何故ならこの試験で受験生を落とすことはないでしょうから」
「それは何でだ?」
「この世界では能力者は貴重です」
彼女は静かに説明を続ける。
「そんな貴重な人材を意味もなく切り捨てるようなことを、この学園がするとは思えません」
「じゃあ……この試験は?」
「理事長が言っていたでしょう。この学園に通うことは覚悟が必要です。この試験は覚悟の意思を自分で考え、それを問うもの」
その説明を聞いて俺は納得していた。つまりは自ら学園に通うと言う覚悟がない人を落とすための試験ということだ。
「最初から、俺たちを落とすことが目的じゃなかったのかもしれないのか」
………………………
「確かに違和感はあったけど流石に気づけなかったな」
「じゃあもう心配せず戦えますよね?」
その言葉を聞いた瞬間俺はまた咄嗟に回避行動を取る。
「む………また外した」と言いながら再度こちらを向いてくる
「私の攻撃を二回も避けたんです 故に名前を名乗りましょう……………私の名前はシェイル」
相手が名乗ったんだし俺も名乗らなきゃな
「俺の名前は武戦」
逃げようにもさっきのスピードで追ってこられたらどうせ追いつかれる。
俺が選ばなければいけないのは最善の選択。
そう考えた自分が下した結論は…………足掻く。
それだけだった。
そして俺はーーーーーーー自分でもまだ知らない。
この出会いが、この運命が。
そして、自分自身から失われていた記憶が。
後の自分を、大きく変えることになるなんて。
知る由もなかったんだ。




