試験の始まり
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『これより、試験の内容を伝える』
「それは強さを我々に見せること。ここら一体では能力により君たちの動きはすべて見えている」
そのいきなりのルール説明に俺は顔を顰める
「強さを見せる?どうすればいいんだ?」
と辰真も不思議に思っている。
「強さの表現の仕方は自由だ!人と戦闘してもいい!能力の範囲を誇示するのもよし! 己がどれほどの力を持っているのか、存分に見せてもらおう!期間は今日の21時まで。以上だ」
そこで放送は途切れた。
「…………………………」
なるほど、確かに能力にも色々ある。分かりやすい爆発系の能力や逆に分かりにくい透明化するような能力も存在する。
だが、あれほど大勢いた受験生を全員見る?こんなことは不可能に近い。それともそう言う能力者がこの学園に多数いるのかもしれない。
「まぁ、こんなことを考えるのは後でいいか」
「どうした、辰真。早くお前の斧を探しに行くぞ」
「どうしたって………いいのかよ!?今の俺は丸腰だしさっきの説明で強さを見せないと合格できねぇかもしれないんだぞ!」
「お前、斧がないと自分の実力を発揮できないんだろ?」
「……あぁ」
「そんな状態で戦っても意味がない」
喋りながら歩き出す。
「それにじいちゃんから貰った大切な斧なんだろ?」
「うぅ…………ありがとう!!俺たちは友達だ!俺は斧がないと能力も使えないから本当に助かる!」
「辰真、あまり人の前で能力のことを話さないようにした方がいいよ」
能力の開示なんて普通しない。何故ならそれが後々足枷になってくるからだ。能力が知られれば当然対策はされ、負ける確率も高くなる。
一瞬辰真はハッと自分が間違えて言ってしまったことに気付いたようだが
辰真は笑顔で
「でも俺らは友達だろ?それに武戦はさっき出会ったばかりの俺を助けてくれたじゃねえか」
「信頼してくれるのは嬉しいけど、本当に気をつけてね」
そう雑談をしながら辰真の記憶を頼りに何とか移動してきた道を戻っていく。
「俺がきた道は確かこっちだったぜ」
と辰真が案内している先に一人の男が見えた。
その男は恐らく身長170くらい。そしてその身長を超えた斧を持っている。
大きすぎるその獲物は、地面へと突き立てられていた。
「なあ!そこの人!それ俺の斧なんだ!!返してくれねえか?」
と言うが
男はこちらを見て
「は!誰が渡すかよこれお前の武器だろ?武器のねえお前の方がサンドバックにちょうどいいぜ!」
辰真は怒っているように見えた。そりゃ当然かじいちゃんの形見みたいな物だからな。
「武器なしでもてめえなんかぶっ潰してやるよ!」
と激昂して突撃しようとする辰真を止める。
「待て、相手の能力がわからない以上迂闊には近づかない方がいい」
「じゃあどうすればいいんだよ!」
間髪入れずに俺は言った。
「俺が行く」と
「おいおい、何で試験中に群れてんだ〜〜?メリットなんて一つもないだろうよ?」
「知らねえな。生憎ルール説明の前に仲良くなっちまったもんでよ」
「仲間ーー?お前は馬鹿か?」
男は鼻で笑う。
「能力者ってのはな、生まれながらにして選ばれた人間なんだよ」
「子供の頃、能力で偉そうにしていそうだな」
「俺は昔からそうだ!能力があるから偉い!誰も俺に逆らえない!」
「俺に逆らう!!奴が悪い!!!」
その言葉と同時に相手は突進してくる。
奴は見る限り何も持っていないように見えるが能力者である以上何かある。
「死ねや!」と言う言葉と同時に繰り出されたのは拳。
だがその拳はどう見ても武戦には届かないような位置で放たれた。
だが俺は周りを集中して感じとる。その拳がこちらに向かってくるような感覚を。
感知した拳は速い速度で自分に接近してくる。
だが俺はその攻撃を……………回避した。
「ボキボキベキッ!」
とその瞬間後ろにあった木が折れた
「さて、次はこっちの番だ」
相手が信じられないような顔をしているが、無視だ。
「大丈夫なのか…………?」
と辰真は俺を心配してくる。
俺は問題ないと言い敵の方まで走りかかった。
その速さは初速から普通の人間のレベルでは無い。
「な………!早…………!?」
「どうした?攻撃しろよ。自慢の能力が俺に避けられてそんなにショックか?」
そう挑発したらあいつは顔を真っ赤にして
「ふざけんな!てめえぶっ殺す!」と言いながら見えない拳を何度も放ってきた
その攻撃を容易く避け続ける。一回目の攻撃を失敗したのがメンタルに響いたのかその後はずっと正確性に欠けるものばかりだ。
結局、そのまま近づき相手を殴ると勝負は決した。
何なんだ………!何だお前は!!
俺を見下しているのは斧を取られた男の近くにいた奴だ。何故あいつは見えない俺の攻撃を回避するんだ!?俺の能力は拳の形で空気を飛ばす能力………避けられるはずが無い…!
その威力は一発で小さい木なら一撃で倒木させられるのに……!
目の前のこの男は全てを避けた。一切無駄のない動きで…まるで未来でも見えているようだ。
「これで懲りるんだな………当然この斧は返してもらう。じゃあな」と、あいつは去ろうとしたが俺は怒りが抑えられそうにない。
「俺を馬鹿にしやがって……!絶対許さねぇ……」
怒りで小さくそう呟き、能力を発動して振りかぶる。
その瞬間俺から見えない拳が飛んでいき、あいつの背中へと正確に向かっていく。
「最後に君は必ずやると思っていたよ」
だが俺は放った拳に瞬時に気づいて後ろを向き、受け流す。
「武術ってのは色々な種類があってな。その中には受け流してからの反射って技もあるんだ」
こんなふうにと言い、片手で受け流したものをそのまま軌道を変えて敵に向かわせる。
もう動けない名前も知らない敵は、その攻撃を喰らい意識は闇へと落ちていった。
一瞬の静寂が漂う。
「武戦…………」
「うん?」
「お前、何者なんだよ?」
辰真の声に、恐怖などの色はない。それはただ、純粋な疑問として武戦に届いた。
「分からないな」
「ズキッ」
あぁ…………まただ。何故か、一瞬だけ、俺の頭に雑音が走る。
知らない光景が、一瞬だけ頭によぎる。
ーーー
「ーーー待ってる」
消えた。
「おい、いきなり頭押さえてどうしたんだ!?大丈夫か!?」
「いや、なんでもないよ」
そうだ、今はどうでもいい。自分のことはまだ後でいい。
「辰真、斧を取り戻そう」
「…………ああ!!」
二人で一緒に斧を拾う。
辰真は満面の笑みを浮かべた。
「やっぱりこれだ!間違いない!!」
そして斧を握り、振る。
辰真の表情が安堵に変わり、
「戻ってきた…………」
まるで、斧を握ったことで本来の自分を取り戻したかのようだった。
その後も少し話しながら歩いていく。
だが武戦は……………この後に自分とは次元が違うような、そんな最強の能力者と出会ってしまうことは、まだ知らなかった。




