天穹異能学園入学試験
7/20加筆修正しました 8/25加筆修正しました。
人は誰しも必ず逃避をしている
それは現実から? 夢から? これから起こる未来から?
逃げることは、決して悪いことでは無い。
逃げることでしか守れないものもある。
逃げることでしか、生き残れないこともある。
ならばーー逃げることをやめた者は、一体何を得るのだろうか。
俺にはそれが分からない。………いや。
もしかしたら、昔は知っていたのかもしれない。
逃げてしまったら、自分が心を持つ限り決して晴れやかになることは無い。
では、私たちは一体どうすれば良いのだろう?
天気は快晴 雲一つなく暑すぎずかと言って寒くもない。
そんな過ごしやすい日に、俺こと武戦は一つの巨大な門の前に立っていた。
「よし、ここが能力者を育成するためにつくられた学校………天穹異能学園か」
そして目の前にそびえたつ門を見上げる。
「えっと…多分ここだよな?入り口」
と俺は思わず口に出してしまった。その入り口があまりにも豪華だったからだ。
まるでこの学園の象徴とも言えるような圧倒的な存在感。
そのまま立ち止まっていたら他の人。恐らく自分と同じ受験者たちが続々とその門を潜っていく
自分もその人たちと同じように進んでいった。
この世界は、能力者とそれ以外の2種類の人間がいる。
能力者は約五千人に一人。それ以外は全て普通の人間だ。
人の波に沿って進んでいると、校舎が見えてくる。噂通り、巨大で強固だ。学園というより城と表現した方が適切とも思えてくる。
「さて、体育館は何処だろうか」事前情報によると、集合場所はそこであるらしい。
人の流れに乗りながら、続いていく。
そして俺たち受験生は試験場所である体育館に辿り着いた。
体育館の前には壇上があり、何人かの人間がいる。
そして、その中の一人の男が壇上の真ん中に立ちマイクを前にし話し始めた。
「受験生の諸君!よくぞ我が国唯一の能力者学校天穹異能学園に来てくれた ここにいる者たちは全員将来この国に良い恩恵をもたらしてくれるであろう!」
そう声高らかに喋り出したのは背が高く、年齢は60くらいだろうか。さらに白銀の髪を肩下まで伸ばし目の色は金色に近い琥珀色の男だった。
「私はこの学園の理事長のウィルス・エヴィスである。これから諸君には能力値試験となるものをやってもらう」
周りの受験生は待ってましたと言わんばかりの気分が高揚する人や、逆に不安そうな人もいた
今俺たちは特に整列をせず、みんなバラバラになって壇上を見上げている
「緊張しているのだろう?自ら奮い立とうとしている者もいるだろう」
理事長は雄々しい声で続ける。
「だが、それでいい!この学校で合格を勝ち取るためにはその覚悟を示してもらう!それらから逃げる者に合格は与えない!」
「試験……………………………開始!!!」
そしてその声が響いた瞬間…………世界がーー消えた。
体育館がない。先ほどまで多くいた受験生の姿もない。
俺の目の前に広がっていたのは…………木、山、岩、川。
果てしなく続いていく広大な自然。
見る限りここは山の中 そしてその中腹より少し下ら辺か?
「どういうことだ?能力“値”試験って言ってたからちょっと心配したけど何でいきなりここに飛ばされたんだ?」
周りに人は誰もいない だが、気配は少し感じる
「テレポート系の能力者でもいたのか?」
それしか考えられない だが、肝心の試験内容も言われずにテレポートさせられるなんてどうなのだろうか。
周りの状況を確かめるために動く事にする。
木の上に登り全体を見ようとするが、周りの地形が入り乱れていて高低差が大きく分かりづらい。
下に降りて少し離れた場所に見えた周りで一番高い岩で覆われた山に行くべきと判断し、動こうとした。
その時、茂みの奥から何やら
「あああぁぁぁぁあああ!!」と声が聞こえた。
「……………?」
叫び声。
「さっきの気配がした所から声がしたな。声からして男だけど何かあったのか?」
まぁいきなりこんな自然の中に移動させられて混乱するのも無理はないか。俺はこんな経験もしたことがあったから状況が飲み込めたが、初めてだったらきっとパニックでまったく動けなくなるだろう。
いや、むしろ過剰に動きまわってさらに深くに潜り込み迷子になるだろう。
少し歩くと、170後半くらいの身長のやつが四つん這いになって動き回っていた。
「ねえ、そこの人どうかした?」
「あぁ!困っているんだ!!助けてくれ!!」
男は必死で縋り付いてきた
「実は俺の大事な斧が無くなっちまったんだ!さっきから探しているがどこにも見当たらねえ!」
「斧?それって大きさはどれくらいなんだ?」
「俺の身長とほぼ同じだ さっき試験開始でいきなり瞬間移動させられて焦って移動しまくってたらどこかに落としちまったんだ!!」
なるほど。俺も自分の武器を落として無くしたことがあったからよくある事だ。 それにしても彼の身長と同じサイズか……… 試験開始からさほど時間が経ってないし近くにあるかも。
普通は見捨てるべきなのだろう。彼を助けても俺には何か良いことがあるわけではない。
だが困っている人を見捨ているというのは、今の俺にはできなかった。
「俺も探すよ。大事な物なんだろう?」
「ありがとう!助かる!」
そして俺たちは歩きながら自己紹介をすることにした
さっきから話しているがお互いの名前が分からないから話が進まない
「俺の名前は辰真って言うんだ。あの斧はじいちゃんが死ぬ前に俺の為に作ってくれたたった一つの宝物なんだ」
「俺は武戦だ。それは災難だったな ちなみにどんな見た目をしているんだ?」
探すにしても見た目が分からないんじゃ間違いもあり得るので特徴を俺は聞いた
「刃の部分は真っ黒で棒の部分は白と黒が斜めに混ざり合うような感じだ。それと棒の一番下の部分には青い宝石を埋めてある」
「なるほどな、それは案外見つけやすそうだ。だけど辰真と同じ身長の斧なんて四つん這いにならなくても探せてたんじゃないか?」
「あ……言われてみれば確かに!!」
その時は焦っていたんだと辰真は言っていた。
「キンコンカンコーーーーーン!!!」
と周りに斧が落ちていないか確認しながら話していると空から大きな音が聞こえた。
それはあまりにも広大な場所にまで聞こえるようなもので、少し驚いた。
「なんだこの鐘の音は?」
『今から試験の内容を説明する』
と理事長の声が響いたのだった。




