やらかしたのは誰か
「まぁ、シェイルならやっても不思議じゃないかぁ……」
顔を手で覆いながら半ば諦めたような顔を俺はした。
「はいはーいお兄さんの番だよー!」
先生が声をかけに来る。この短期間のうちに彼女の治療は終わったようだ。
「あいつは、どのくらいで目を覚ましそうですか?」
「んーー長くてもあしたの朝には目を覚ますと思うよ!」
少しほっとした。これで一ヶ月くらい眠り続けるような重症だったら流石に申し訳なさが芽生える。
そして先生は血が出てきている俺の顔や、打撲した腕などを慣れた手つきで治療してくれた。
「能力を使うわけじゃないんですね」
「貴方の傷は本当に軽いからねー。あ!もちろん彼女には能力を使って治したよー」
使わないということは何らかの制限。いや、単純に能力を使うほどでもないということだろうか。
「あ!きみ〜〜もしかして私のことについて考えてるでしょ」
先生は確信を持った様子で話しかけてくる。
「ーーーすいません。治してくれているのに無粋な考えを」
「いいのよ〜〜どうせ私の能力とかそこらへんについて考えているんでしょ?気にしない気にしない、だって私は人を治すのが仕事なんだから!」
「最近はけが人が多いのよ〜〜特に今日なんか二人の重症者が来たから疲れちゃってね」
あははーと苦笑いをするような表情をしながらそう答えた。
そして治療が終わり、俺たちは保健室を後にした。
そのままメインの体育館へと向かう。
「次に俺が戦う相手を見ておきたい」
「私はもう終わりましたし、同行しましょう」
戦う前に相手を観察しておくことに損はない。特に戦闘では、相手のリズムや戦い方、癖など実際に戦って見なければわからない情報がいくつもある。
そして体育館へと俺たちはたどり着いた。周りを見て俺の次の対戦相手を探す。
「妙だな……見つからん」
だが、どこを見てもそれらしき人物は見当たらなかった。
流石に大事なこの時を遅刻するなどは考えづらいのだが……とりあえず人に聞いてみることにしよう。
その時ちょうど下の階段から長い髪を揺らし誰かが戻ってきた。
「あ!武戦さんじゃないですか、もう試合は終わったんですか?」
「おお!ニーナじゃないか、偶然だな。あぁ、俺の試合はさっき終わったところだ」
「相手はCランクのシグレさんでしたよね?やっぱり、彼女は強いですから………負けてしまっても仕方ありませんよ」
「いや、俺が勝ったぞ。現にいまあいつは保健室で寝てるしな。ところでちょっと聞きたいことがあるんだが、俺の次の対戦相手が見つからないんだ。どこにいるか知らないか?」
「えぇ!?勝ったんですか!?私最初の自然に飛ばされる試験で彼女と戦ったことがありましたけどとても強かったですよ!?」
ニーナが驚くのも無理はない。何せEランクがCランクに勝つという事はあり得ないくらいの快挙なのだ。
彼女は俺が気を悪くしたと思ったのか、ハッと気づいたかのように話す。
「えっと……すいません。決して武戦さんを弱いと思っていたわけじゃなくて……」
「気にしないでくれ、Eランクなのは事実だからな。」
俺はこのランクに決して納得はしてないが。
「えぇとこの人ですか?この人のことはすいませんがあまり分かりません。あ!でもシェイルさんが戦っていた人だと思いますよ」
「おい……シェイル?」
後ろにいるであろうシェイルの顔を見るために俺は振り向く。
だが彼女は表情を一切変えずに私関係ありませんと言いたげのような様子であった。
決して俺の目を合わせようとはせず、ずっと視線を横にしていた。
「知ってるのなら一言言ってくれよ」
「そうですね………あまり覚えていません。早く武戦の試合に戻りたかったので」
「そう言われるとなにかいう気もなくなるんだが」
ただ自分の試合を見たいから早く終わらせて戻ってきてくれたなんて知ったら誰だって嬉しくなる。
「それで、何でもいい。何か特徴とか今その人がいそうな場所とか知らないか?」
「多分保健室じゃないですか?向こう五日は起きてこないと思いますが」
「何してんの???」
え、じゃあ俺の対戦相手はもうクラス対抗戦が終わるまで起きてこないのか?と言うかもしかしてさっき保健室の先生が言っていた二人の重症者って………
ダメだ、これ以上考えるのは不毛だ。シェイルが何をしても不思議ではないと心に刻んでおこう。
「…………ニーナ、この場合はどうするんだ?」
「そうですね………不戦勝という扱いになるので1ポイント獲得ということになります」
「じゃあ俺は合計三ポイントでほぼ出場確定だということか」
「そういうことになりますね!実は私も三ポイントなのでほぼほぼ出場決定です!」
……………このポンコツが!?
先生「ちょっとそこのお嬢さん、貴方やりすぎよ〜〜。彼ら五日間は寝込んだままだと思うわ」
シェイル「そうですか」




