ジル禁止
相手の方は「ははは! 大変良いことではありませんか! 婚姻が楽しみですなあ」と好意的に受け止めてくださったのだけれど……。
ついジルについて熱く語ってしまうボクには、お母様から「ジル禁止令」が言い渡された。
ジルについて何か言われても「そうなんです」「自慢の婚約者です」程度しか言ってダメですよ、って。
ジルについて語る機会を奪われるのは不満だけれど、「あまりにも目の前で語りすぎるとジルが恥ずかしいでしょう?いたたまれません、っていう顔をしていたわよ?」と言われて納得。
仕方がない。「頭もよくて優しくて優秀な最高の婚約者です」っていうくらいにしておこう。
こうしてあいさつ回りを済ませた頃には、「クライス公爵家の次代は大変仲が良い」「比翼連理だ」と言われるようになっていることをボクたちはまだ知らなかった。
カイザー様たちは積極的に色々な貴族に声を掛けていた。まずはカイザー様が高位貴族に声を掛け、ルドを紹介。そこからはルドの独根場だ。巧みな話術と愛嬌で瞬く間に相手を説き伏せてしまう。
沢山の出資者を捕まえたようで、二人ともほくほく顔だ。
ウエイン様とケイオスくんは……と見回せば、肉料理に舌鼓を打っていた。社交とは!
「ジル、ボクもデザートが気にかかります! せっかくなので色々食べてみたいです! 」
美味しそうなケーキが並んでいたのだけれど、ご挨拶が先だよね、と我慢していたのです。
「ふふ。クリスは甘いものが本当に好きだな。挨拶も済ませたことだし、少しくらいは良いだろう」
ジルにエスコートされてデザートコーナーへ。
するとそこに、シス様とリオが。
甘い物好きなシス様のために、リオがせっせとケーキを取り分けてあげていた。リオってば甲斐甲斐しい!
「シス様!リオ!」
「ああ、クリス! 二人ともあいさつ回りはもう済んだの?」
「はい。えっと……お父様とお母様のお知り合いに次代のクライスとして紹介していただきました」
「ふふふ。次代の『クライス夫夫』だね? おめでとう、二人とも」
「ありがとうございます! えっと、リオとシス様も……」
「ああ。私たちも『次代のアーシェント』として挨拶してきたよ。ね、シス? 」
シス様を呼ぶ声がなんだかとても甘い! あれ? リオってこんなんだっけ?
シス様が照れながらてコクリと頷くのがとっても可愛らしい。
わあ、ラブラブだ!
何気なく「リオが年下の旦那様なんですね」って言ったら、シス様が首まで真っ赤になってうつむいてしまった。
どうしたんだろう?
「クリス、その……旦那さまって、どういう意味? どこまで知ってるのかな? 」
ちょっと焦ったリオに聞かれる。リオも照れ屋ているのかな?
「え? だって、リオの方がエスコートしているように見えたので。違いましたか? 」
「な、なんだ、そういう! 違わないよ! 私がシスをエスコートしてきた! 」
おかしなリオ。
するとジルが呆れたようにため息をついた。
「私のクリスがそのような発言をするわけなかろう」
「そのような? どのような? 」
エスコートとか言っちゃダメだったのかな?
「い、いや……年下のエスコートについて……」
珍しく言葉を濁すジルに首をひねっていると、
「クリス! これを食べてみて! すっごく美味しいから!!」
シス様がものすごく張り切ってフルーツのタルトを差し出してくれた。
確かにすごく美味しそう。魅惑の王宮スイーツだ。
ラズベリー、クランベリーなどのベリー類がたっぷり乗った上に、細い糸状にした飴細工をふんわりと乗せてある。
見た目にも色鮮やかで食感が楽しそう。
「これは! 本来の目的を忘れるところでした! ジル、いただきましょう! 」
それまで何を話していたのはすっかり忘れ、ボクは魅惑のスイーツに夢中になったのだった。
はしたないけれどお腹いっぱいにスイーツを堪能していると、アイク様とジェシーがやってきた。
「ちょっとお! 僕が大変な目に合ってるのに、なにしてるの? ズルい! 」
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