運命の日
ボクとお兄様が高位貴族専用の控室に入ったときには、既にアイク様、シス様、ウエイン様、カイザー様、そしてそれぞれのパートナーであるジェシー、リオ、ケイオスくん、ルドが来ていた。
婚約者であるシス様ペアとウエイン様ペアは揃いの衣装、それ以外はみんなそれぞれのパートナーの色を何かしら身に着けている。
ちなみにカイザー様とルドは「共同経営者」とのう意味でのパートーナーなのだそう。本来なら公爵家の子息カイザー様のパートナーが平民というのはあり得ないのだけれど、「婚約なんてしている場合じゃない。事業に打ち込みたい」とカイザー様がご両親を説得。ルドの祖父の商会が大商会であることと、ルドには貴族の血が入っていること、その事業が非常に有望なことで許可が下りたのだ。なんというか、パワーのあるお二人。
本来「高位貴族」は伯爵家以上の家格を指すのだけれど、ボクたちの代に侯爵家の子弟はおらず、伯爵家の生徒は……えっと……ちょっと評判があんまりよくないので、この部屋は「侯爵家以上の控室」ということになっている。
要するにいつものメンバーだけなので、ちょっと気が楽になった。
「皆さん早いですね」
「ああ。私はそのまま自分の部屋から来ただけだからな」
「僕はそのままアイク様に付いてきちゃった。どうせ側近になればアイク様の所についてなきゃいけないんでしょう?だったら一緒じゃん、って思って」
なんというか、さすがはジェシーだ。
「お疲れ様」と言う気持ちと、「本当にリョウを側近にしちゃっていいの?」と言う気持ちを込めてミノくんを見れば、肩をすくめて苦笑されてしまった。
「なんか野放しにしておくよりいいだろう?」
パートナーというより猛獣扱い!
「ちょっとお!その言い方は酷くないですか?」
プンスカとむくれるジェシーの頭を軽く叩きながら、訂正していわく。
「……うーん。まあ、面白いしね?」
訂正してペット扱い。ミノくんもさすが!
この二人は意外と相性がいいみたい。ボクとしては安心。
「それにしても……」
とアイク様がじろじろとボクとジルを上から下まで面白そうに眺めた。
「ものすごい牽制だね?」
ぶは!とカイザー様が噴き出す。
「ジルがクリスの色を……そんな形で取り入れるとは想像していなかった。クリスもクリスで……そっちの色を前面に出すのか……。
いや、私がいうのもアレだが……大丈夫か?」
眉をクイっと上げて面白そうに揶揄うアイク様に、ジルが眉をひそめた。
「どういう意味だ?」
するとルドがハイ、と手を挙げる。
「俺言っていい?なんていうか、エロくね?」
バシッとカイザー様がルドの口を塞ごうと動くが軽く避けられてしまった。
「特にクリス!いつも可愛い感じなのに、濃紺のタイトなシルエットにその顔が乗るとなんかエロい。イケナイもん見てるみたいな?」
「おい!黙れルド!ヤバいぞ!」
「!分かる!なんつーか、クリスなのにエロイ」
「ちょっとウエイン!参加しないで下さいよっ!ジルベスターが居るの分かってます?!」
ノリノリで参加してしまったウエイン様にケイオスくんかた悲鳴が上がる。
ちなみにシス様&リオはちょっと赤くなりながらそ知らぬ顔で目を逸らしていた。
このペアはとっても安定している。こっちも兄弟だからなかな?
「あのさあ、クリスがエロイのなんて元からでしょ?無邪気でキレイなものって汚したくなるんだよねえ……」
ニヤニヤし始めたリョウをミノくんが慌ててはたいた。
「おい!私が言うのもなんだが、お前だけはやめておけ!命が惜しくないのか?!」
ああ。隣から氷点下の冷気と圧を感じる。
ジルが耐えている。
このままではダメ!ボクがはっきりいってやらなきゃ!
大騒ぎの中、ボクは重々しく口を開いた。
「あのね、みなさんは間違っております!
誰がどこをどうみても、ジルのほうがエッチでしょうが!
見てください。このジルの瞳の夜空と同じ、どこまでも深い闇を思わせる濃紺。何もかもを包み込むような深い藍に、晴れた日の空を思わせる水色!
この水色が入ることでより一層ジルのストイックな美が引き立つというか、ギャップがまたたまらないというか、冷静で大人びた中に見えるジルの可愛らしさを暗示しているというか、とにかく、最高なのです!」
語っているうちに興が乗ってきた!
「こんなジルをジル免疫のない皆様の前に出していいのでしょうか?
年配の方などは心臓が止まってしまうかもしれません!どうしましょう?!
ここまでくると美もいっそ暴力なのですね。
そう、今日のジルはまさに危険物です!
ああ、やっぱりアイク様のおっしゃるように大丈夫ではないのかもしれません!なんてこと!」
しーん。
「……あれ?どうしました?」
隣のジルを伺えば、ジルが顔を隠して俯いてしまっていた。
その耳は真っ赤に染まっている。
「ジル?大丈夫ですか?」
ジルに代わってなぜかアイク様が口を開く。
「………あー……その……クリスは本当にジルが大好きなのだな」
「当たり前でしょう!ジルがボクの全てなのです!」
ここでなんとか立ち直ったらしいジルがボクの肩をそっと抱いた。
「クリスも私の全てだ。この機会にお前たちには言っておこう。
私とクリスは婚約している。卒業後、クリスの成人を待って婚姻を結ぶことになっているゆえ、そのつもりでいて欲しい」
「「「あーー!!」」」
みんな驚くかと思いきや当たり前のように頷いた。
「ようやくかあ!いつまで気付かないふりしてりゃいいのかと……」
「だよなあ!てか、俺とルドは恋愛とかしてる余裕ねえから!ライバル視すんのやめてくれよ」
とルドとカイザー様。
シス様とリオは満面の笑みで盛大な拍手を送ってくれた。
「良かったね、クリス!ジル!」
「クリスは最初からジルベスター様しか見ていなかったものね。ジルベスター様も」
ウエイン様とケイオスくんの脳筋コンビはあんぐりと口を開けている。
「マジかあ!兄弟愛じゃなかったのか!どおりでジルが変わったわけだ!」
「いや、この場合はどうなるんだ?クリスも俺の従兄弟?いや、……従兄弟の妻?」
「え?!まさか、君たち気付いていなかったのか?!」
アイク様が絶句していた。
だってねえ、この人たち、脳筋ですし。
ケイオスくん、従兄弟ってことでいいですよ!
ちなみにアイク様とジェシーは呆れ顔。
「今さらだよねえ……。ボクたちとっくの昔に振られてたし……」
「だな……。むしろクリスのジルも王族である私を振っておきながらお互い意外を選ぶなど無理がありすぎる。
ジルとクリスだから私も引いたのだぞ?」
ご、ごめんね?
とにもかくにも。誰一人として「兄弟なのに」なんてことを言う人はいなかった。
みんな一様にお祝いムードでボクたちのことを歓迎してくれた。
「ジル、良かったですね。みなさんボクたちのこと認めてくださっていたみたい」
「ああ。それは元より分かっていたゆえ。……クリス、やはり衣装は変えたほうが……」
まだそれ!お揃いでいいじゃないですか!
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すみません。200話で終わりませんでした。。。




