ボクの秘密
遂にきました。
どうお伝えすればいいのか分かりませんがなるべく嘘はつかずに、でも分かりやすく……。
すう、と呼吸を整え覚悟を決めます。
今後のことを考えれば、隠しているよりも知っておいていただく方が良いのです。
これを聞いても、どうかボクのことをおかしな子だと嫌わないでくれますように。
「えと。おかしなことを言うように思えるかもしれませんが……ボク、夢を見るのです」
真剣な表情で口にしたのが「夢」だというので、お兄様とアイク様はちょっと拍子抜けされたみたい。
「……夢……?」と目を瞬かせております。
「そう、夢です!しかも、予知夢みたいな。
ボク、未来のお兄様やアイク様、イクシス様、ウエイン様の姿を夢で見たのです。
夢の中のお兄様の表情筋は死んでおりました。そのせいで冷酷な人だと勘違いされていて……」
「クリスは?」
「え?ボクですか?」
「その夢のクリスはどうだったのだ?」
「ボクは登場しません。お兄様を中心とした夢なのです。夢の中のボクは今のボクとは別人で、お兄様とも距離があったみたいで……お兄様ともアイク様たちとも関わっていなかったので、顔も名前も出て来なかったんです」
その言葉でお兄様の表情が険しくなった。
「夢の話だと分かってはいるが……有り得ぬ。私はクリスのいるこの現実を手放すつもりなどないぞ?」
「ふは!確かに。クリスとジルに距離があるなど信じられないな。私だってクリスと関わらない選択肢はもう無いよ?
にしても…クリスが側にいないとジルか無表情のままだというのが、夢とはいえ、やけにリアルだな。そう思えばクリスに感謝すべきだぞ、ジル。表情筋が蘇ったのだから。
クリスの話というのは、この夢の話でよいのかな?」
なんだかアイク様の話し方が以前よりも砕けております。それだけ今日ボクたちとの距離が縮まったということなのでしょうか。そうなら嬉しいのですが。
「ええ。夢です。でも『予知夢』だと言ったでしょう?夢にしては現実とリンクしすぎているのです。
お兄様やアイク様たちと知り合う前からボクは皆さまのことを夢で見て知っておりました。お兄様とお会いして初めてそれが単なる夢ではなかったのだと知ったんです。と言っても、夢の内容はお兄様が高等部に行ってからのものでしたので、知らないことが大半なのですけれど。
皆さんにお会いしたときも驚きました。アイク様やウエイン様やイクシス様のお名前もお顔も、夢の中と同じだったんです」
「なので、『予知夢』かなと思ったんです。ちょっと怖いけれど、未来が見えたのかも、なんて。
だからお兄様が冷酷だなんて誤解されないように、お兄様の素晴らしさと、お兄様が人々にあまねく注がれる慈愛を皆さまにご理解頂ければと思ったんです。
でも、夢と現実には大きな違いがあります。それはボクです。
ボクはお兄様が大好きです。それにお兄様と出会う前から夢の中のお兄様のことも大好きでした!
だから夢と一緒なんて嫌なのです。お兄様と関われないなんて辛すぎますし、アイク様たちとも仲良くして頂きたいです。
それで……ボクのせいでしょうか。既に夢の中とは状況が違っています。
アイク様とお兄様との婚約は解消されておりますし、みなさん仲良しですよね?それに、お兄様の表情筋だって蘇りました。お兄様の天使のような眩しい微笑み、アイク様もご覧になったでしょう?『冷酷』どころか学園の生徒を萌えの沼に叩き込み魅了しまくっておりますし!
なので今はボク、その夢のことをこう思っているのです。あくまでも『何かボタンを掛け違えばそんな未来があったのでは』という未来の可能性のひとつだったのではないかと」
正確に言えば「ゲームの選択肢」なのですけれど。ゲームのお兄様には選ぶ余地すら与えられていませんでした。腹立たしい限りです!
ちょっと壮大な内容になってしまいましたが、ゲームとか前世とかを除いてお話しするとこうなってしまうのです。
でも、大筋は間違いではありません。




