アイク様のお見舞い2
「ところで、クリス。高熱が続いていたというが、もう問題はないのか?
風邪ではないと聞いているが……。理由は分かったのか?」
「ええ。ご心配をおかけし申し訳ございません。どうやら知恵熱みたいで……。たぶんいろいろなことで頭がいっぱいになって処理できなかったのだと思います」
曖昧に誤魔化せば、アイク様の目がキラリと光った。
「それは……あのジェシカとかいう彼が関係しているのか?」
す、するどい!さすがアイク様です。
「えっと……どうしてそう思われたのですか?」
「君が彼のことを気にしているように見えた。いつものクリスらしくなかった。それと……彼が何か君に耳打ちしたように思うのだが。それからクリスの様子がおかしくなった。倒れたのはそのすぐ後だ。何も関係が無いと思うほうが不自然だろう」
ど、どうしましょう!がっつりしっかりと気付かれております!
アイク様が気付いたのなら、お兄様は確信しているはず。
ジェシーのことを不振がっておりましたし。
お話の途中で色々在って保留になっておりますが、きっとあえて触れずにいてくださっているのでしょう。
でも、なんて言ったらいいのか……
前世の……なんて突然言い出したら、ボクがおかしくなったと思われませんか?
うーん……困りました……。
ため息を漏らすボクをどう思ったのか、アイク様がふう、と息を吐かれます。
「当てようか?ジェシカは、君が以前から私たちに苦言を呈していた『あざと姫』なのではないか?外見が私の好みで、距離が近い。無邪気を装いさり気なく触れて来る」
ボクが返事をする必要もなく、もう確信しているかのよう。
「……アイク様、どうされちゃったのですか?ものすごおく、鋭いです」
ああ。もう。どうしてこんな時に限ってそこまでバシッと当ててしまうのですか。
少しだけ、言ってみてもいいのかな。
お兄様もアイク様も、お二人ともきっと気付いてる。
ボクが何かを知っているんだって。
そしてその何かにはジェシーが関係しているんだって。
だったら…………
「お兄様が戻られたら聞いていただけますか?」
勇気を振り絞った言葉に、アイク様はどこか懐かしく思える笑顔で頷いたのでした。
「ああ。その言葉を待っていた」
カタリ。
ボクの前に大きなマグカップが置かれました。
お兄様とアイク様の前にはティーカップ。
「…………どうしてボクはミルクなのですか?」
ボクだって紅茶が飲みたいです!
ぷうと頬を膨らませて抗議すれば、お兄様がポンポンと頭を撫でてボクを宥めました。
「ゆっくり体を休めるためだ。紅茶には興奮作用があるからな。よく眠れるようにミルクを飲みなさい」
「ほら、クリス。私のを少しやろ…
「一口だけだぞ?」
お兄様がご自分のカップをボクに寄せてくださいました。
こ、これは……関節キッス!な、何と恐れ多い!
「あ、あの、あの……」
「!クリス、顔が赤いぞ?また熱が出たのではないか?やはりベッドに……」
「大丈夫だと思うがな?なあ、クリス。少しはしゃいだせいだろう。問題ないと思うぞ?」
ナイス。アイク様!
ここに来てアイク様の株が上がりっぱなしです。
パチン、とお兄様に隠れてウインクをされたところを見ると、ボクがどうして赤くなたのか、バレてしまっているようです。
勘がさえわたりすぎではありませんか、アイク様!
お兄様はそれでも心配そうにボクの頬を撫で、コツンと額を合わせました。
「ふむ。大丈夫なようだ」
あわわわわ!なんたるファンサ!
恋を自覚してしまった今、こんなに近くでお兄様のご尊顔を拝見するなんて……っ目に毒ですっ!
またしても体温が上がっていきます。
「いや、熱いな?ふむ……やはり紅茶はやめておくように」
「ぶっ」
アイク様が吹き出しました。
「す、すまない。クリスが……面白すぎて」
「失礼な!アイク様を少し見直したところだったのに!」
「あははは!いいじゃないか、これくらい。失恋を自覚したところなんだ。少し意趣返しするくらいは許してくれ」
笑いながら話して居るのに、アイク様の目は笑ってはいませんでした。どこか切なげで、苦しそうです。
もしかして、アイク様は……ボクのことを本気で………?
でも、ボクはお兄様が好きなのです。
この恋が実ることはなくとも、お兄様をずっと好きでいたいのです。
だから、ごめんなさい、アイク様。
アイク様には一切の希望を与えるつもりはありません。
そんなの、良くないと思うから。
「……《《ごめんなさい。ボクはお兄様のことが大好きですので。》》お兄様が素敵すぎると頭がボカンとしてしまうのは仕方が無いことなのです」
「……うん。知っている。クリスは昔からずっと……ジル様のことが大好きだったからな。今はもう分かっている。最初から私が入り込む隙など無かったのだと」
寂しげに微笑むアイク様に、お兄様が顔をしかめました。
「どうした、アイク。ジル様などと、気持ちが悪い」
そして当然のようなお顔でこう続けます。
「それに、無論私もクリスを愛している。最初からお前が入り込む隙などあるわけが無かろう」
この空気の中でバシッと切り捨てるそのお言葉!傷に塩を擦り込むスタイル!さすがジル様です!!
言われた方のアイク様も唖然としております。
ですよね……。
でも、ボクといたしましては、お兄様が当たり前のようなお顔で「クリスを愛している」と言ってくださったのが嬉しくてたまりません。|そういうつもりではない《家族愛だ》と分かってはいても、やっぱりうれしい!
「えへへ。アイク様、ごめんなさい。そういうわけなので!!」
「……いや、分かってはいたのだけれどな?!君たち、もう少し私に配慮するつもりはないのかい?!不敬に問おうか?」
「下手に期待を持たせるよりもよかろう。最初から言っているだろう、クリスは私のクリスなのだと。諦めろ」
「はい!ボクはお兄様の弟ですので!!アイク様はボクたちを不敬になんて問わないって信じておりますし!」
「……微妙に食い違ってるのだけれど……はあ…これがこの二人なのだということか……」
「さて。クリス、ボクたちに何か大切な話があるのではなかったか?ジルも戻ったことだし、話をしてごらん?」
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