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キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!  作者: をち。
幼年期

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おかしな空気

保健室に行く間も、ボクはずっと視線を感じていた。

そう、ピンク頭の!


彼はアイク様に姫だっこされたまま、ボクとお兄様を交互に、そして食い入るように見つめ続けているのです!

いったいどうして?

それ、どういう視線なのですか?




保健室で先生に見ていただいたところ、特に問題はなさそうということで経過観察に。

入学式があるので、シップだけ貼って式に向かうこととなりました。


ボクは改めて彼に向き合い、怪我をさせてしまったことを謝罪。


「あの、ボクはクリストファー・クライスと申します。ぶつかってお怪我をさせてしまい申し訳ございませんでした。何かありましたら、おっしゃってください。

クラスは……あ!なんてこと!見に行くところだったのでした!

あの、えと、クラスはまだ見ておりません!すみません!」


ガバリと頭を下げると、彼はキョトンとしたあと、可愛らしい顔をクシャっとさせて笑い出した。


「あはははは!大丈夫ですよ、たいしたことないですから!

ちょっと驚いただけ!

僕はジェシカ・オドネル。ジェシーでいいですよ?」


ジェシカ!思い出しました、そんな名前でした!

「ピンク頭」とか「あざと主人公」などと呼ぶことが多かったものですからすっかり忘れておりました。

(それにしても、性別関係なく「ジェシカ」なのですね。ジェシーと呼んでもらうから女性名でも問題ないということなのでしょうか?)


でも、こ、これは……もしかして、ピンク頭の中身もゲームとは違うのでは?!

だってあの「あざと令息」なら「たいしたことない」なんて言わずに大げさに痛がってそのくせ「ごめんなさい、ボクも悪かったんです……」といい人ぶったあげくに、「送って頂けますか?」としなだれかかってそのキュートな瞳をウルウルさせちゃうはずだもの!


でもこれだけで「白」だと判断するのはまだ早い。

「出会い」シーンだからまだネコを被っているだけかもしれませんし。


そこでちょこっとあざとく煽ってみることにいたしました。


「でもお……ボクのせいですから。本当にごめんなさい」


ピンク頭の目の前で、攻略対象であるアイク様のお袖をツンツンとひっぱりあえての上目遣い。

繭をへにょりとさげてのオネダリです。


「あのね、アイク様。申し訳ないのですが、式場まで彼のことをお願いできますか?

もしかしたら、後から痛み出すかもしれませんし?」


これぞ「モブのアシスト」!

ゲームに出てくる「間の悪いモブ」が、ミスしたり事件を起こしたりして主人公と攻略対象のフラグをつくっちゃいますよ、です。


ゲームの彼ならここぞとばかりに乗ってくるはず。

痛くなくても痛いふりをして、申し訳なさそうな顔で「あのお……ご迷惑ではないですか?」と肩を借りながらこそっと「気にしてしまうといけませんから、クリスくんには内緒で。実はけっこう足が痛くて……。ご迷惑でしょうが、少しでいいのでサポートをお願いできないでしょうか?」とかやるのではないでしょうか?

もしくは「あざと令息」ぶったボクをライバルだとみなしてちょこっと態度が変わったりとか。

何らかの反応があるはずです。


なぜかぼんやりと呆けていたアイク様。

ボクは袖を引かれ一瞬ビクッと身を震わせ、目を何度か瞬かせました。

そして初めてボクを見るかのような表情で、マジマジとボクを見つめます。


「アイク様?大丈夫ですか?」


「あ、ああ。何でもない。大丈夫だ」


答える声にはもう力が戻っておりました。


「分かった。彼のことは私に任せてくれ。しっかりと様子を見ておくから」


力強く頷くアイク様。

いやに乗り気です。まさか、もうジェシーに誑かされたのでしょうか?



一方、ボクの「あざといふり」にすぐさま反応したのはお兄様。


「クリス?少し様子がおかしくはないだろうか?まさか頭を打ったのか?」


ボクの僅かな変化すら見逃さないそのご慧眼!さすがです!


頭を撫でたり目を覗きこんだりするお兄様に「大丈夫です」と有無を言わさぬ笑顔を向けます。

ご心配かけてすみません、ちょっとだけご協力を。


さあ、どうなのですか、ジェシカさん。



どきどきしながら様子を窺えば、なんと彼はアイク様には目もくれず、ひたすらにボクとお兄様だけを見つめておりました。

お兄様をじいっと見つめた後、今度はボクを見て微笑みます。

にこっ、こてん、という感じです。


ええ?もしかして……ターゲットはボク?!

恐る恐る自分を指さして聞いてみます。


「あの……非力なボクでよろしければ……まだ痛むようなら肩をお貸ししましょうか?

あ、ボクのことはクリスと呼んでください」


ぱああ、とジェシーの顔が輝きました。正解だったようです。

こ、これは「白」?!ゲームとは違う展開です。


とたん、後ろに立つお兄様からピリッとした威圧が。

え、ええ?


「クリス。こう言ってはなんだが、クリスでは力が足らぬのではないか?

ここはウエインかアイクに頼む方がよいだろう」


言いながらボクを庇うかのようにスッとボクとジェシーの間に割って入ります。


するとジェシーがお兄様に向かってニコッ。


「でしたら僕、ご迷惑でなければあなたにお願いしたいのですけれど……よろしいでしょうか?」


最後の言葉は眉を下げ、ちょこっと首を傾げて困ったように。


あざとっ! あざといですね?!

さすが本家!

この一文に「あなたに好意があります」「迷惑をかけて申し訳ない」をぶちこんで来ましたよ?!

こ、これは……どっち?!

ゲームの仕様なのか、はたまた違うのか。


ここまでのやり取りの中では、アイク様に興味は無さそうです。ウエイン様にも。

今のところ彼が気にしているのはボクとお兄様だけに思えます。


でも、もしかして、これこそが罠だったりするのでしょうか?

そんなパターンもあり?

ゲームと行動が違いすぎて全くもって読めません!


でも、申し訳ないけれどお兄様のご指名は却下!

ボクの個人的感情により却下です!


「えっと、ごめんなさい。実はボクもちょっと足を痛めてしまって……。

もう高等学生だというのに甘えん坊でお恥ずかしいのですが……、一番安心できるお兄様に手助けしていただきたいのです。本当にごめんなさい」


くらえ、必殺あざと返し!

先ほどの彼と全く同じことをやり返します。


へにょりと眉を下げ、申し訳なさそうに上目遣いで。

容姿という点でいえば、主人公には勝てないと思います。

でもボクには飛び級という奥の手によって生まれた年齢差があります。

みなさんより一回り体格が小さいボクがやれば、あざとさ倍増。

「主人公のポテンシャル」に肉薄するのではないでしょうか?


念のため保険もかけておきましょう。

ジェシーの手をそっと取り、励まします。


「ごめんなさい。ボクのせいで怪我をされたのに、こんなわがままを言ってしまって。

でも、安心してください。ジェシー様をここまでお連れしたアイク様は、とてもお優しい方なのです!

それに武術大会上位なのですよ?お気遣いができる頼りになる方なので、ジェシー様にも配慮して下さると思います」


ここまで言われてお兄様がいいと主張すれば、それはアイク様やウエイン様たちを否定すること。

受け入れるしかありませんよね?




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