ピンク頭、登場!
「い……いたたっ!」
弾き飛ばされて後ろに吹っ飛んだボク。
「クリス、大丈夫か?!」
すかさずお兄様がボクを抱きとめてくださいました。
「は……はい。お兄様のお陰でボクはダイジョウブです……」
ぶつけた鼻がちょっと低くなってしまったくらいで……
「あ!ボクがぶつかってしまった方は?!」
慌てて相手の方を見れば、ボクのように受け止めてくれる人がいなかったようです。
「友人が申し訳なかった。大丈夫かい?」
アイク様が助け起こしてくださっておりました。
すみません、アイク様、ぶつかってしまった方!
慌てて痛む鼻を押さえながら、アイク様に隠れて見えないお相手の方に向かいます。
「ごめんなさい!大丈夫でしたか?痛いところはないですか?怪我とかしてないですか?」
と覗き込めば………
ピ、ピンク!ピンク頭だあああっ!!
あのゲームのあざと主人公、ピンク頭です!
ご令嬢ではなくご令息でした!
「あいたたた」
ゆがめた顔もとってもキュート!
フッサフサのまつ毛が、可憐なラズベリー色の瞳に影を落としております。
柔らかそうなピンクのほっぺに、日焼けしていない真っ白な肌。
唇はまるでリップを塗っているかのようにつやっつや!
特徴的なふわふわのピンクのロングヘアをポニーテールにしています。
そ、それ、可愛い子しか許されないやつですっ!
はっ!
攻略対象たちは………
ドキドキしながら確認したところ、案の定といいますか、残念ながらもうピンクにやられてしまったようです。
伸ばした手もそのままに,唖然とした様子で目を見開いております。
予定ではもっと後で出会うはずなのに、どうして入学早々?!
って、ボク?!
もしかして、ボクのせいなのかも!
ボクがどーんしちゃったから!
どうやらボクという異分子のせいで状況が変わってしまったようです。
こ、これは先手必勝!
アイク様より先にピンク頭とお話し、ゲームと同じく「あざと令息」なのかどうかを見極めねばなりません。
赤髪ちょろ男ことケイオスくんだって、話をしてみたらお友達になれました。
三馬鹿アイクと言われたアイク様たちだって、今は全く三馬鹿じゃありません。
お兄様との仲も良好。話の通じる良い先輩方です。
となればピンク頭だって、他の方みたいにゲームのキャラとは違ういい子な可能性も十分有り得る。でしょう?
敵にならないならその方がいいに決まっております。
ゲームのピンク頭には恨みしかありませんが、まだこっちのピンク頭に鼻は何もされておりませんし。
「お兄様!ぶつかってしまった方を保健室にお連れしたいのですが……」
ツンツンと袖を引けば、いつも通りのお兄様が「クリスは怪我はないのか?」とボクに囁きます。
良かった!お兄様は攻略されていないようです。
「ええ。ボクは大丈夫です。お兄様が受け止めてくださいましたから」
コクリと頷いたお兄様。「だが、念のためクリスも見て貰おう」とひょいっとボクを姫抱っこ!
ええ?ボクですか?!
「い、いえ、お兄様、お気持ちは嬉しいのですが、ボクではなくあちらの方が怪我を……」
「アイク、保健室に連れて行くぞ。
私はクリスを連れて行く。アイクはその……クリスがぶつかってしまった方を頼む」
なんですと?!
まだ相手が敵か味方かもわからぬうちに、即落ち必須の攻略対象に濃厚接触をさせてしまうのですか?
ボクとお兄様で肩をお貸ししようと思ったのに!
「あ、ああ。……失礼!」
立ち直ったアイク様がピンク頭を姫抱っこいたしました!
ええ?
初対面の方にいきなり姫抱っこ?!
ご令息だからいいのですが、ご令嬢にいきなりそれやったらアウトですからね!アイク様!
思わずボクはこう呟いてしまいました。
「やっぱりこれってピンク頭の強制力……?ボクのジル様に断罪の危機?
なんてこと!」
せめてピンク頭がアイク様狙いなのかを見極めようと、恐る恐るアイク様の腕の中を覗き込めば……姫抱っこされたピンク頭の瞳が見事にハートに……なっていません!
何故かハッとしたようにボクのことをガン見!ガン見しております!!
え?ボク?!ボクなのですか?!
どうして?!
あ、ボクがぶつかってしまったからお怒りなのですね。ごめんなさい。
本当に申し訳なかったと思っております。
でも、でも……
なんでボクを見て懐かしそうな、泣きそうな顔になるのですか?!
誰か教えてくださいっ!




