↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/240

待ってくれない

翌朝、クロードは荷物を持って学園の門へ向かった。

昨日はここでノーゼスとエクリアを見送った。

今日は自分が帰る番だった。

家族へのお土産は鞄の中に入っている。

アルト兄さまへ買った本も、他の荷物に押されない場所へ入れた。

馬車の中で食べるつもりの菓子だけは、すぐに取り出せるところへ分けてある。

クロードは門の外へ目を向けた。

少し待つと、見覚えのある馬車が通りの向こうから近づいてくる。

アインハルト家の馬車だった。

馬車が門の前で止まり、扉が開く。

「よう、クロード」

「……ザナン兄さま?」

中から顔を出したのはザナンだった。

クロードは思わず馬車とザナンを交互に見る。

「何だよ、その顔」

「なんでザナン兄さまがいるの?」

「俺も帰るから」

「今日?」

「お前が帰る日に合わせた」

ザナンはそう言って、馬車の中へ身体を戻した。

「俺は王都にいるんだぞ」

「あ」

ザナンは王立学校を卒業したあと、今も王都の士官学校へ通っている。

クロードだけを迎えに来てもらい、ザナンが別の日に帰るより、一緒に帰れば馬車の往復も一度で済む。

「気づくの遅くないか?」

「ザナン兄さまが来るって聞いてなかったから」

「言ってないからな」

「じゃあ分からないよ」

「そうとも言う」

ザナンが笑った。

昔より背も伸びているし、顔つきも少し変わっている。

それでもこうして話していると、クロードが覚えている兄とそれほど変わらなかった。

馬車のそばには、もう一人男が立っていた。

クロードが見ると、男が頭を下げる。

「道中の護衛を務めます」

「よろしくお願いします」

クロードも頭を下げた。

「護衛?」

馬車へ乗り込みながら聞くと、ザナンが答えた。

「最近、街道で盗賊を見たって話が増えてるらしい」

「盗賊?」

「念のためだってさ」

クロードはもう一度、外にいる護衛を見る。

盗賊。

言葉として知らないわけではない。

けれど自分が通る道に出ると言われても、まだあまり実感はなかった。

荷物が積まれ、やがて馬車が動き始める。

学園の門が窓の向こうへ遠ざかっていく。

クロードはしばらくそれを見ていた。

中休みが終わればまた戻ってくる。

それでも60日という時間は、今までの休日よりずっと長い。

「学園、どうだった?」

ザナンの声に、クロードは窓から顔を戻した。

「楽しかったよ」

「もう終わったみたいに言うなよ」

「前期の話」

「分かってる」

ザナンが少し笑う。

「友達できたか?」

「うん」

「何人?」

クロードは少し考えた。

「友達って、どこから数えるの?」

「知らないよ」

「ザナン兄さまが聞いたんでしょ」

「じゃあよく一緒にいる奴」

「ノーゼスとエクリア」

「二人か」

「うん」

昨日まで一緒にいた二人の顔が浮かぶ。

今頃は二人とも、それぞれの家へ向かっている頃だろう。

「魔法は?」

「色々習った」

今度は考える前に答えが出た。

ザナンが笑う。

「そっちは早いな」

「《放つ》とか《曲がる》とか」

「使えるようになったのか?」

「《放つ》は使えるよ」

「じゃあ《曲がる》は?」

「できる時もある」

「できない時もある?」

「ある」

クロードは少し考えてから続けた。

「雷が勝手に逸れることがあるから、逸れた方向と反対に《曲がる》を使って戻してるんだ」

「戻すために曲げるのか?」

「うん」

「変な使い方してるな」

「先生にはいいって言われたよ」

「駄目とは言ってないだろ」

ザナンはそう言って笑った。

クロードも笑ってから鞄へ手を伸ばした。

「何してる?」

「お菓子」

袋を取り出す。

ザナンが中を覗いた。

「多くないか?」

「2日あるから」

「だからって全部食う気か?」

「途中で食べる」

「全部?」

「残ったら家で食べる」

「最初からそのつもりだったんじゃないか?」

「違うよ」

クロードは一つ取り出した。

昨日、どれにするか迷って結局三つとも買ったものだ。

一つをザナンへ差し出す。

「食べる?」

「食べる」

即答だった。

「食べるんだ」

「出されたのに断る理由ないだろ」

二人で菓子を食べながら、馬車は王都を離れていった。

窓の外から建物が減り、畑や林が増えていく。

途中で休憩を挟んだ時には、クロードは護衛にも菓子を渡した。

最初は遠慮されたが、まだあると言うと受け取ってくれた。

また馬車へ乗り、街道を進む。

クロードは外を見たり、ザナンと話したり、時々眠くなったりしながら過ごした。

夕方が近づく頃には、座り続けていた身体が少し重くなっていた。

馬車は街道の途中にある宿へ入った。

「今日はここ?」

「ああ」

ザナンが先に降りる。

クロードも荷物を確かめてから続いた。

「明日は屋敷まで?」

「何もなければな」

その言葉を聞いて、クロードは朝に聞いた盗賊の話を少しだけ思い出した。

けれど今日は何も起こらなかった。

周囲にも旅人の姿があり、宿の中からは人の話し声が聞こえている。

盗賊という言葉は、また少し遠いものに戻っていた。

食事を済ませ、翌日の出発に備えて休む。

寝る前にクロードは荷物を確かめた。

お土産はある。

本もある。

菓子は少し減っている。

明日には家へ着く。

父上や母さまは元気だろうか。

イリアはどうしているだろう。

クロードはそんなことを考えながら目を閉じた。


◇


翌朝、馬車は宿を出た。

昨日と同じ街道を、今度は屋敷へ向かって進んでいく。

クロードは窓の外を眺めていた。

今日のうちには帰れる。

そう思うと、昨日より流れていく景色が気になった。

知っている場所が見えてくるのは、まだもう少し先だ。

向かいではザナンが座っている。

「昨日より静かだな」

「外見てる」

「見れば分かる」

「じゃあ聞かなくてもいいでしょ」

「本当に変わったな、お前」

「何が?」

「前より言い返す」

クロードは少し考えた。

「ザナン兄さまも前より大きいよ」

「そりゃそうだろ」

「じゃあ僕も変わるよ」

「それもそうだな」

ザナンが笑った。

クロードも窓へ顔を戻す。

朝から特に変わったことはなかった。

馬車は街道を進み続ける。

昨日聞いた盗賊の話も、クロードの頭からほとんど消えかけていた。

しばらくして、馬車の速さが落ちた。

クロードは窓の外から顔を戻した。

「どうしたんだろう」

ザナンも前を見る。

馬車が止まった。

しばらくして、外から護衛の声が聞こえた。

「そのまま中にいてください」

昨日までとは違う声だった。

クロードは身体を起こす。

ザナンの表情からも笑いが消えていた。

「ザナン兄さま」

「まだ動くな」

外から知らない声が聞こえる。

何を言っているのかまでは分からなかった。

けれど一人ではない。

クロードは窓から外を見る。

街道の先に人影が見えた。

道の脇にもいる。

護衛は馬車の近くに立っていた。

「盗賊?」

「たぶんな」

朝まで遠かった言葉が、一気に近くなる。

クロードは人影を見る。

何人いる。

どこにいる。

どこから来た。

何をしようとしている。

目で追おうとした時、一人が動いた。

別の人影も位置を変える。

護衛も動いた。

クロードがそちらを見る。

さっきまで見ていた場所には、もう誰もいない。

「……速い」

見れば分かると思った。

何が起きているのかを確かめればいいと思った。

けれど見ている途中で状況が変わる。

「クロード」

ザナンの声で振り返る。

「外を見るのはいいけど、勝手に出るなよ」

「うん」

クロードは頷いた。

その時、外で何かがぶつかる音がした。

馬車が小さく揺れる。

クロードは身体を支えた。

護衛の声。

別の男の声。

足音。

一つ聞こえるたびに、どこで何が起きているのか確かめようとする。

でも見た時には、もう次が起きていた。

突然、馬車の扉が開いた。

クロードの身体が固まる。

開いた向こうに、知らない男がいた。

「っ!」

男が車内へ手を伸ばす。

ザナンがすぐに動いた。

クロードの前へ身体を入れ、その腕を払いのける。

男が外へよろめいた。

ザナンはそのまま馬車を降りた。

「クロード、降りろ!」

「え?」

「ここにいる方が危ない!」

クロードは一瞬だけ迷い、それから鞄を置いたまま扉へ向かった。

ザナンが男を近づけないよう前に立っている。

クロードはその後ろから馬車を降りた。

「こっち」

ザナンに示された方へ動く。

馬車から少し離れたところで振り返る。

外へ出たことで、さっきより周囲がよく見えた。

それでも状況が分かりやすくなったわけではなかった。

護衛が一人を近づけないよう動いている。

ザナンの前にも男がいる。

別の人影がこちらへ向かおうとして、また向きを変えた。

クロードの視線が行き来する。

右。

左。

前。

一人を見れば、別の一人を見失う。

ザナンが動けば、さっきまで空いていた場所が塞がる。

護衛が位置を変えれば、その向こうにいた男も動く。

「クロード、下がってろ」

ザナンの声が飛ぶ。

クロードは一歩下がった。

ただ見ているだけでいいのか。

ザナンと護衛が自分を守っている。

自分にも魔法がある。

右手を上げかける。

その先にザナンが入った。

クロードはすぐに手を下ろした。

撃てない。

別の一人を見る。

護衛が近い。

そこも駄目だ。

人が動く。

空いていた場所に誰かが入る。

離れていた一人がこちらへ向かってきた。

ザナンと護衛からは距離がある。

その男の後ろにも、今は誰もいない。

ここなら。

クロードは右手を上げた。

《印》を組む。

魔力を動かし、雷を手元へ出す。

男はまだこちらへ来ている。

《放つ》。

青白い雷が走った。

その瞬間、男が横へ跳んだ。

「え」

雷は男がいた場所を抜け、地面へ落ちた。

バヂッ、と音が響く。

男が足を止める。

当たらなかった。

けれどクロードが見たのは男ではなく、地面に残った跡だった。

知っている。

何度も見た跡だ。

実習場でも、雷は的を外れて地面へ落ちた。

ただ、今そこに立っていたのは的ではない。

人だった。

しかも動いた。

男がまたこちらを見る。

クロードは右手を上げ直した。

狙う。

その時、ザナンが男との間へ入った。

「っ」

クロードは《放つ》へ移らず、手を止めた。

今なら撃てない。

外れればザナン兄さまへ行くかもしれない。

昔、父上に言われた言葉が浮かぶ。

分からないまま人の近くで使うな。

クロードは手を下ろす。

その間にもザナンは男と位置を変えている。

護衛も別の相手を押し返していた。

さっき雷を避けた男が再び離れる。

今度は横へ動いている。

クロードは見る。

撃てる。

いや、ザナンが近づくかもしれない。

待つ。

男がさらに動く。

今なら。

右手を上げる。

《放つ》。

雷が前へ伸びる。

男も走る。

青白い光の先が途中で右へ逸れた。

クロードはそれを見る。

右。

なら左。

《曲がる》。

雷の向きが左へ戻る。

けれど、戻し始めた時には男はもう別の場所にいた。

雷はその後ろの地面へ落ちる。

「また……」

実習場なら的はそこにある。

雷が逸れたら、その方向を見て反対へ戻す。

遅ければ届かない。

早くても戻しすぎることがある。

それでも的そのものは動かなかった。

今は違う。

雷を見ている間に相手が動く。

相手を見ている間に雷が逸れる。

ザナンと護衛の位置まで見なければならない。

クロードは次に狙えるところを探す。

一人が離れる。

右手を上げる。

そこへ護衛が動く。

下ろす。

別の一人を見る。

今度はザナンが近い。

撃てない。

「どこなら……」

声が漏れた。

右手に魔力は動かせる。

《印》も分かる。

《放つ》もできる。

《曲がる》も使える。

なのに、使う場所が見つからない。

見つけても、次の瞬間にはそこではなくなる。

クロードが迷っている間にも、ザナンと護衛は動いていた。

護衛は相手を馬車へ近づけず、何度も距離を取らせる。

ザナンもクロードとの間へ誰かが入らないよう位置を変えている。

さっき扉を開けた男が再び前へ出ようとして、ザナンに止められた。

別の男も加わろうとする。

護衛がそちらへ回る。

クロードは右手を上げた。

でも撃てない。

二人が近すぎる。

そのまま手を下ろした。

しばらくして、盗賊たちの動きが変わった。

さっきまで馬車へ近づこうとしていた者たちが、少しずつ距離を取り始める。

一人が何か叫んだ。

それを境に、他の者たちも街道から離れていく。

護衛は追わなかった。

ザナンもその場から動かない。

クロードは逃げていく人影を見る。

追う気にはならなかった。

ただ、終わったのかどうかさえすぐには分からなかった。

護衛が周囲を確かめる。

しばらくしてから、こちらへ戻ってきた。

「もう大丈夫です」

その言葉を聞いて、クロードはようやく息を吐いた。

右手を見る。

いつの間にか強く握っていたらしく、指が固くなっている。

ザナンが振り返った。

「クロード、怪我は?」

「ない」

「本当か?」

「うん」

「どこか痛くないか?」

クロードは腕と脚を確かめる。

転んでもいない。

どこも痛くない。

「大丈夫」

「ならよかった」

「ザナン兄さまは?」

「俺も平気」

クロードは護衛を見る。

「大丈夫ですか?」

「問題ありません」

大きな怪我をした人はいない。

馬車も進める。

帰ることができる。

それを聞けば安心するはずだった。

クロードは街道を見る。

地面に黒い跡が二つ残っている。

自分が放った雷だった。

一つ目。

相手が動いて外れた。

二つ目。

雷が逸れたのを戻している間に、相手が動いた。

そのほかにも撃とうとして、撃てなかった。

ザナン兄さまがいた。

護衛がいた。

外れたら誰に行くか分からなかった。

クロードは右手を見た。

何もできなかったわけではない。

二回は雷を出した。

でも、役に立ったのかと聞かれたら分からなかった。

安全の確認が終わり、三人は再び馬車へ戻った。

開けられた扉が閉まる。

馬車はゆっくりと動き始めた。


◇


車輪の音が続いている。

昨日と同じ音のはずなのに、クロードには少し違って聞こえた。

窓の外へ目を向けながら、さっきのことを思い返す。

最初に浮かんだのは、何が悪かったのかということだった。

相手が動いた。

自分の雷も逸れた。

《曲がる》が間に合わなかった。

ザナン兄さまと護衛が近くて撃てなかった。

一つずつなら書ける。

いつものようにノートへ残すこともできる。

けれど、それだけではない気がした。

光哲だった頃にも、人から襲われたことは一度もなかった。

仕事をしていた頃、設備に異常が起きたことなら何度もある。

いつもと数値が違う。

動きがおかしい。

変な音がする。

そんな時は、まず状態を見た。

何が変わったのか確かめた。

原因になりそうなものを探した。

一つずつ調べて、原因を絞って、それから対処した。

クロードになってからも、それはあまり変わらなかった。

雷が外れたら、どこへ落ちたのかを見る。

前と何が違ったのかを考える。

条件を一つ変える。

もう一度試す。

結果を比べる。

分からなければ記録して、次に確かめる。

失敗しても、次があった。

考える時間があった。

けれど、さっきは違った。

何人いるのか見ている間に、人が動いた。

誰がどこにいるのか確かめている間にも、位置が変わった。

撃てると思った場所へザナン兄さまが入った。

雷が逸れたのを見て《曲がる》へ移った時には、狙っていた相手がもうそこにいなかった。

見ている間にも変わる。

考えている間にも変わる。

一度失敗したからといって、同じ状態でもう一度試すこともできない。

次が勝手に来る。

クロードは窓の外を見る。

景色は後ろへ流れていた。

「……待ってくれない」

小さく口から出た。

「何が?」

ザナンが聞く。

クロードは少し考えた。

「さっきの人たち」

「盗賊?」

「うん」

ザナンがクロードを見る。

「考えてたのか?」

「どうしたらよかったのかなって」

「そっちか」

「何?」

「怖かったとかじゃないんだなと思って」

クロードは少し黙った。

「怖かったよ」

思い返すと、胸の奥が少し重くなる。

馬車の扉が急に開いた時は、身体が動かなかった。

「でも、それだけじゃない」

「そうか」

ザナンはそれ以上、答えを決めるようなことは言わなかった。

クロードも聞かなかった。

何を聞けばいいのか、自分でもまだ分からない。

《放つ》をもっと練習すればいいのか。

《曲がる》をもっと早く使えればいいのか。

動く相手を狙う練習をすればいいのか。

それだけでいいのか。

分からない。

クロードは自分の右手を見る。

学園では少しずつできることが増えた。

それでも、今日初めて出会った状況では、そのまま使えるわけではなかった。

設備と人は違う。

実験と戦いも違う。

分かったのは、それだけだった。


◇


午後になると、窓の外に見覚えのある景色が増えてきた。

クロードは何度か身を乗り出すように外を見る。

「あそこ知ってる」

「やっと気づいたか」

ザナンが言う。

「もっと前から分かってた?」

「さすがに俺も帰ってるからな」

少し先にある道も、遠くの林も見覚えがある。

アインハルト領へ戻ってきた。

それが分かると、クロードの気持ちが少しだけ明るくなった。

もうすぐ家に着く。

父上に会える。

母さまにも会える。

クラリッサ様とセレナ様にも。

ブライン兄さまは屋敷にいるだろうか。

イリアにも会える。

買ってきたお土産を渡せる。

クロードは荷物へ目を向ける。

その中にはアルト兄さまへ買った本も入っていた。

馬車はさらに進む。

やがて見慣れた屋敷が窓の向こうに見えた。

「帰ってきた」

クロードが呟く。

「久しぶりか?」

「うん」

「俺もだ」

ザナンも屋敷を見る。

馬車が門を通る。

少しずつ速度が落ちていき、やがて止まった。

クロードは荷物を持とうとして、右手を見る。

街道で雷を放った時の感覚が一瞬だけ戻った。

相手が動いた。

外れた。

撃てると思ったら、ザナン兄さまが入った。

戻している間にも、相手は動いた。

クロードは手を握る。

それから荷物を持った。

扉が開く。

見慣れた屋敷が目の前にある。

クロードは馬車を降りた。

帰ってきたことは嬉しい。

みんなに会えることも嬉しい。

けれど、街道で生まれた問いは消えていなかった。

あの時、自分はどうすればよかったのだろう。

その答えだけは、まだ何も見つかっていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。