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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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残り方の違い

翌朝、クロードは寝台から身体を起こしたところで動きを止めた。

「……痛い」

肩が重い。

腕を動かすと痛みがあり、床へ足を下ろせば脚まで昨日よりはっきり重かった。

昨日は走って、跳んで、球を投げた。

そのあと《六環球》で何度も走り、放課後には街まで歩いて雷鳴鋼球を抱えて帰ってきた。

クロードはゆっくり立ち上がり、机の脇へ目を向けた。

普通の鉄球と雷鳴鋼球が、昨夜と同じように並んでいる。

試したい気持ちはまだある。

けれど今日は授業がある。

クロードは二つの球から目を離し、いつもよりゆっくり制服へ着替え始めた。


◇


教室へ入ると、先に来ていたノーゼスが椅子へ座ろうとしていた。

いつもより動きが少し遅い。

クロードが見ていると、ノーゼスもこちらを見る。

「何だよ」

「ノーゼスも痛い?」

「何で分かった」

「動き」

ノーゼスが嫌そうな顔をした。

「脚だけだ」

「僕は腕も」

「球まで持って帰ったからだろ」

「たぶん」

そこへエクリアもやってきた。

鞄を置いて椅子を引くと、座る前に小さく肩を回す。

クロードとノーゼスが同時にそちらを見た。

「何よ」

「エクリアも?」

「少しだけよ」

ノーゼスが笑う。

「三人ともじゃん」

「ノーゼスが一番痛そう」

「何でだよ」

「さっき座る時、変な顔してたもの」

「してない」

話しているうちに教師が入ってきて、三人もそれぞれの席へ戻った。

身体は痛くても授業はいつも通り進み、やがてその日の最後の授業も終わった。

帰る準備をしていたノーゼスへ、クロードが声をかける。

「ノーゼス」

「ん?」

「明日、二つの球を比べたい」

「普通の鉄と雷鳴鋼?」

「うん」

ノーゼスが少し考えてから聞く。

「二つとも持ってくのか?」

「持っていきたいけど、僕一人じゃ一つずつしか運べない」

「じゃあ俺が一つ持つよ」

「いいの?」

「今日よりは身体もましになってるだろ」

「たぶん」

隣で聞いていたエクリアが二人を見る。

「私も行くわ」

「エクリアも?」

「雷鳴鋼でどう変わるか、私も見たいもの」

クロードは頷いた。

「じゃあ明日」

普通の鉄球では、雷が丸い表面を走った。

けれど外へ逃げてしまう。

雷鳴鋼なら、その時間が変わるかもしれない。

それを確かめることができれば、《丸くする》の練習にも使えるかもしれなかった。


◇


翌朝、クロードは普通の鉄球を抱えて寮の入口まで降りた。

外ではノーゼスが待っている。

「こっちが普通の鉄」

「分かった」

ノーゼスが両腕で受け取った。

「重っ」

「雷鳴鋼の方が少し軽いよ」

「じゃあそっちがよかった」

「替える?」

「もう持ったからいい」

クロードは一度自室へ戻り、今度は雷鳴鋼球を抱えて降りてきた。

二人で学園へ向かうと、途中で待っていたエクリアも合流した。

「本当に同じ大きさね」

エクリアが二つの球を見比べる。

「うん」

「見ただけじゃ分かりにくいわ」

「持てば分かるよ」

「持たないわよ」

ノーゼスが笑った。

「正解」

三人で実習場へ向かい、まず使っていいか教師へ確認する。

クロードは普通の鉄球で以前試したことと、同じ大きさの雷鳴鋼球を作ってもらったことを説明した。

「同じように雷を当てて、《丸くする》を試したいです」

「二つを比べるのか?」

「はい」

教師は二つの球を確認し、それからクロードたちが使う場所へ一緒に向かった。

周囲と防護条件を確かめ、ノーゼスとエクリアが離れた位置にいることも確認する。

前に普通の鉄球を試した時と同じように、絶縁板と浅い受けも用意された。

「勝手に条件を変えるなよ」

「はい」

クロードは最初に普通の鉄球を浅い受けへ置いた。

球が小さく揺れて止まる。

前と同じ位置まで離れ、右手を向けた。

まず少ない雷を《放つ》。

青白い光が普通の鉄球へ届き、丸い表面を横へ走る。

クロードはその雷が残っているうちに《丸くする》の操作へ移った。

球の形に沿って雷をまとめようとする。

けれど、その途中で枝が外へ伸びた。

一つが離れると、別の枝も違う方向へ逃げていく。

クロードが操作を続けている間にも、球の表面に残っていた光は減っていった。

やがて最後の雷も消える。

「やっぱり逃げる」

ノートへ記録する。

球が丸いから、何もないところで試すより形そのものは分かりやすい。

けれど、その形に沿わせようとしているうちに雷がなくなってしまう。

少し休んでからもう一度試したが、結果は大きく変わらなかった。

クロードは普通の鉄球を雷鳴鋼球と入れ替えた。

置く場所は同じ。

自分が立つ場所も同じ。

雷の量も変えない。

クロードは右手を向けた。

《放つ》。

青白い雷が雷鳴鋼球へ届く。

普通の鉄球と同じように、光が丸い表面を走った。

外へ伸びようとする枝もある。

けれど、全部がすぐに離れてはいかなかった。

クロードは《丸くする》の操作へ移る。

球の表面に残る雷を見ながら、丸い形へまとめようとする。

まだ残っている。

普通の鉄球の時より長い。

枝が外へ逃げても、球の表面には青白い光が残っていた。

その分だけ、クロードは《丸くする》の操作を続けることができた。

やがて光は少しずつ弱くなり、最後には消えた。

クロードは右手を下ろした。

「長かった」

ノーゼスが防護壁の向こうから言う。

「うん」

クロードはノートへ書き込む。

『普通の鉄より長く残った』

少し休んでから、もう一度同じように試す。

雷鳴鋼球へ《放つ》。

そのまま《丸くする》へ移る。

今度も外へ逃げる雷はあった。

それでも普通の鉄球より、球の表面へ残っている時間は長い。

クロードはその間、丸い形を意識して操作を続けた。

全部の雷が消えると、クロードはノートを見た。

普通の鉄球では、操作している途中で雷が逃げていく。

雷鳴鋼球でも逃げる。

ただ、全部がなくなるまでの時間は長かった。

「できたの?」

エクリアが聞く。

クロードは雷鳴鋼球を見る。

球の表面に雷が残っている間は、確かに丸い形に見える。

けれど、それは最初から球が丸いからだ。

「まだ」

クロードは答えた。

「雷が丸くなったんじゃなくて、丸い球に雷が残ってただけだと思う」

「でも普通の鉄より長かったんでしょ?」

「うん」

クロードはもう一度ノートへ目を落とした。

できたわけではない。

けれど《丸くする》を試す時間は増えた。


◇


休みが明け、次に魔法実習があった日、クロードは雷鳴鋼球を持って実習場へ来ていた。

他の生徒たちの様子を見て回っていたガンザスがこちらへ来るまで、クロードはいつもの《丸くする》を練習する。

雷を出し、形を作ろうとして、崩れる。

何度か繰り返していると、後ろから声がした。

「クロードー」

クロードが振り返る。

ガンザスがこちらへ歩いてきていた。

「先生」

「その球、できたやつかー?」

「はい」

クロードは雷鳴鋼球を見た。

「普通の鉄球と比べました」

「どうだった?」

「雷鳴鋼の方が、雷が長く残りました」

ガンザスが球へ目を向ける。

「それで?」

「残っている間なら、《丸くする》を長く試せました」

「できたのか?」

クロードは首を横に振った。

「分かりません」

少し考えてから言い直す。

「たぶん、まだです」

「なんでそう思う?」

「球が丸いからです」

クロードは雷鳴鋼球を指した。

「雷が丸く見えても、僕が丸くしたのか、球に沿ってるだけなのか分かりません」

ガンザスが小さく頷いた。

「じゃあ見せてみろー」

前と同じように安全を確認し、雷鳴鋼球を置く。

クロードは少し離れた位置へ立った。

《放つ》。

雷が球へ届き、表面を走る。

その光が残っているうちに《丸くする》の操作へ移る。

枝が外へ伸びる。

それでも球面には雷が残り、クロードは操作を続ける。

少しして最後の光が消えた。

クロードは手を下ろした。

ガンザスは雷鳴鋼球を見ている。

「今のを《丸くする》成功にはできないなー」

「はい」

クロードも頷く。

それは自分でも分かっていた。

「でも」

ガンザスが続ける。

「何もないところで形を作ろうとして、すぐ崩れて終わるよりは長く操作できてる」

クロードは顔を上げた。

「じゃあ使ってもいいですか?」

「練習に使うならなー」

ガンザスが雷鳴鋼球を軽く指す。

「ただし、これがないと丸くできないままじゃ、できたことにはならんぞー」

「はい」

クロードは雷鳴鋼球を見る。

これは答えではない。

これを使えば《丸くする》ができるわけでもない。

ただ、雷がすぐに逃げてしまうまでの時間を少し長くできる。

その間なら、自分が何をしているのかを前より長く確かめられる。

「もう一回やります」

「休んでからなー」

「はい」

クロードは一度右手を下ろした。

それからの実習では、雷鳴鋼球を使って《丸くする》を試すこともあれば、球を使わずに同じ操作を繰り返すこともあった。

すぐにできるようになったわけではない。

それでも、何もないところへ何度も手を伸ばしていた頃とは違う。

途中で確かめるためのものが、一つ増えていた。

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