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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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目の前だけじゃない

クロードがコートへ入ると、反対側からザナトスも歩いてきた。

さっきまで審判をしていた時とは違い、今度は同じ6角形の中にいる。

「今度はちゃんと相手しろよ」

ザナトスが言う。

「してるよ」

「さっき全然してなかっただろ」

「試合してたから」

「だからその試合でだよ!」

クロードは少し首を傾げた。

「審判だったじゃん」

「そういうことじゃない!」

少し離れたところでエクリアが額へ手を当てた。

「ザナトス、始まる前から疲れないでよ」

「疲れてない!」

「声はもう疲れそうなくらい出てるけど」

ピアが笑う。

ワズカーが中央へ球を置いた。

「第1組と第2組、位置につけ!」

クロードたちはそれぞれ散った。

第1組はクロード、ガレス、ピア、ナーン、レクシア、ミズー。

第2組はエクリア、ザナトス、カイル、ベン、タンガ、ラン。

審判になった第3組の6人も、それぞれの門へついている。

クロードは周囲を見た。

自分たちが守る門は3つ。

狙う門も3つ。

第1試合では球やノーゼスばかりを見て、何度も別の方向を空けた。

外から見た第2試合では、球を持っていない者もずっと動いていた。

今度は自分も中にいる。

どこまで見られるだろう。

「クロード!」

声の方を見る。

ザナトスが少し離れた場所からこちらを指していた。

「俺がお前を抜くからな!」

「うん」

「またそれかよ!」

「始め!」

ワズカーの声が飛んだ。

全員が動く。

中央へ真っ先に走ったのはガレスとザナトスだった。

2人の手がほとんど同時に伸びる。

球が弾かれ、少し横へ転がった。

クロードがそちらへ走る。

けれど先にカイルが拾った。

「エクリア!」

カイルが横へ投げる。

エクリアが受け取った。

クロードはそちらへ行きかけて、右を見る。

ザナトスがもう走り出している。

エクリアが球を持っているのに、狙っているのは別の門だった。

「レクシア、右!」

クロードが声を上げる。

レクシアが振り返る。

その直後、エクリアからザナトスへ球が飛んだ。

「よし!」

ザナトスが受け取る。

1歩。

2歩。

レクシアが前へ入った。

ザナトスはさらに進む。

3歩。

4歩。

クロードも横から近づく。

ザナトスがこちらを見る。

「来たな!」

「球持ってるからね」

「止めてみろよ!」

5歩目でザナトスが身体を右へ向けた。

クロードもそちらへ動く。

その瞬間、球が左へ飛んだ。

「え?」

ランが受け取っている。

ランの前にある門には誰もいなかった。

ミズーが戻る。

間に合わない。

ランが投げた球が門を抜けた。

「入った!」

審判のマミヤが両腕を上げる。

「第2組、1点!」

ザナトスがすぐクロードを見る。

「どうだ!」

クロードはランを見る。

「今の上手かった」

「だろ!」

ザナトスが胸を張る。

「ランが空いてた」

「そっちじゃねえ!」

中央へ戻りながらクロードはもう次の配置を見ていた。

「俺が投げたんだぞ!」

「見てたよ」

「じゃあ俺の話しろよ!」

「ザナトス、戻って!」

エクリアの声が飛ぶ。

「分かってる!」

ザナトスは慌てて中央へ走った。

次は第1組が先に球を取った。

ガレスからピアへ渡り、ピアが左へ走る。

クロードは反対側へ開いた。

さっきなら球の近くへ寄っていたかもしれない。

けれど今はピアの周りに人が集まり始めている。

自分まで行けば、こっちが空く。

「クロード!」

ピアが気づいた。

球が飛んでくる。

クロードは受け取った。

正面にはカイル。

右からザナトスも来る。

「今度こそ逃がさないぞ!」

「2人来た」

「俺だけ見ろ!」

「無理だよ」

クロードはすぐ後ろへ球を戻した。

レクシアが受け取る。

ザナトスが止まった。

「なんで投げるんだよ!」

「2人いたから」

「俺と勝負しろよ!」

その間にレクシアからナーンへ球が渡る。

ナーンが別の門へ走った。

「ザナトス!」

エクリアが叫ぶ。

「そっち戻って!」

ザナトスが振り返った。

ナーンの前が空いている。

「くそっ!」

走って戻る。

ナーンが投げた。

球は門の左側へ少し逸れた。

「外!」

ノーゼスが判定する。

クロードは息を吐きながら戻った。

今のは点にならなかった。

それでも、ザナトスが自分の方へ来たことで別の場所は空いていた。

第1試合の時とは逆だった。

球が再び動き始める。

今度はタンガが拾った。

ベンへ渡る。

ベンからカイル。

第2組も1人だけで進まず、球を動かしながら門を変えてくる。

クロードは球を見る。

その周りを見る。

さらに反対側を見る。

全部を一度に見ようとすると、どこかが抜ける。

「クロード!」

ザナトスの声がした。

振り返った時には、もう球を持っていた。

1歩。

2歩。

クロードが前へ入る。

ザナトスはそのまま来る。

3歩。

「今度は投げないぞ!」

「言ったら分かるじゃん」

「あ」

ザナトスの顔が一瞬止まった。

クロードは左へ回る。

ザナトスはすぐ右へ切り返した。

4歩。

クロードも追う。

5歩。

門が近い。

ザナトスが腕を振った。

球が飛ぶ。

クロードの横を抜ける。

柱の間へ向かう。

硬い音がした。

横木へ当たり、球が上へ跳ねた。

「外!」

リーゼが判定する。

「くそっ!」

ザナトスが頭を抱えた。

クロードは跳ねた球を見る。

近くに落ちる。

ピアが先に拾った。

「行くよ!」

今度は第1組が走る。

クロードもすぐ向きを変えた。

後ろからザナトスが追ってくる。

「待てクロード!」

「球持ってないよ!」

「分かってる!」

クロードは右の門へ走る。

ザナトスもついてくる。

その分、中央が薄くなる。

ピアが中央のガレスへ渡した。

ガレスがレクシアへ。

レクシアの前にはベンがいる。

左へ投げる。

ミズーが受け取った。

「そっち!」

クロードが声を上げた。

ミズーが門を見る。

投げる。

球が2本の柱の間を抜けた。

「入った!」

ヤンナが両腕を上げる。

「第1組、1点!」

クロードが中央へ戻ろうとすると、ザナトスが隣を歩いていた。

「またお前じゃないじゃん」

「同じ組だからいいでしょ」

「よくない!」

「なんで?」

「俺はお前と勝負してるんだぞ!」

クロードはザナトスを見る。

「僕は六環球してるけど」

「だからそれで勝負してるんだよ!」

「だったら組で勝たないと」

ザナトスが口を開いたまま止まった。

後ろからエクリアが歩いてくる。

「クロードの方が合ってるわよ」

「分かってるよ!」

「分かってないから言ってるの」

「分かってるって!」

ワズカーが中央を指した。

「話すなら終わってからにしろ!」

3人とも位置へ戻った。

試合はそこからさらに速くなった。

1点ずつだったのが、第2組が先に2点目を取る。

第1組が追いつく。

今度は第1組が先に3点へ進み、第2組がすぐ追いついた。

走るたびに脚が重くなる。

さっきまでに2試合分、走るか審判をしている。

身体測定もした。

それでも球が動けば自然と足も動いた。

クロードが球を受け取る。

ザナトスが来る。

今度はすぐに渡さない。

1歩。

2歩。

右へ動く。

ザナトスがついてくる。

「来いよ!」

3歩。

クロードはザナトスを見る。

その向こうを見る。

エクリアが少し後ろでレクシアを見ている。

左にはカイル。

右側の門の前は薄い。

4歩。

クロードは右へ投げた。

ナーンが走りながら受け取る。

ザナトスが振り返る。

「また!」

ナーンの前へタンガが戻る。

ナーンはすぐガレスへ渡した。

クロードも別方向へ走る。

ザナトスが追おうとして、一瞬止まった。

そしてクロードではなくガレスの方へ向きを変えた。

「あ」

クロードはその動きを見た。

さっきまでなら追ってきた。

ガレスが球を持っている。

ザナトスはそちらへ走った。

ガレスがピアへ渡す。

ザナトスも向きを変える。

クロードだけを見ていない。

「ザナトス、右!」

エクリアの声が飛ぶ。

「分かってる!」

ザナトスが右へ走る。

そこにはミズーがいた。

球が渡る前に進路へ入る。

ミズーは投げるのをやめ、レクシアへ戻した。

クロードは少し笑った。

「何笑ってんだよ!」

遠くからザナトスが叫ぶ。

「見えてるんだ」

「何が!」

「こっちまで」

「当たり前だろ!」

答えながらザナトスはもう別の方を見ている。

その直後、エクリアが球を奪った。

「ザナトス!」

「こっち!」

球が飛ぶ。

ザナトスが受け取る。

クロードも走る。

けれど今度のザナトスはクロードが来てもすぐにはこちらを見なかった。

前の門。

左のカイル。

右のラン。

全部を一度見てから走る。

1歩。

2歩。

クロードが前へ入る。

ザナトスは右へ切り返した。

3歩。

クロードも追う。

4歩。

ザナトスが球を構える。

クロードが腕の動きを見る。

投げると思った。

けれど球は後ろへ出た。

「エクリア!」

エクリアが受け取った。

クロードが振り返る。

その時にはザナトスが別の門へ走っている。

エクリアもすぐには返さない。

カイルへ渡す。

カイルからランへ。

第1組の何人かがそちらへ寄る。

そしてランからザナトスへ戻った。

「来た!」

ザナトスが受け取る。

門まで近い。

クロードが追う。

ザナトスが投げた。

球が門を抜ける。

「入った!」

トルトが両腕を上げた。

「第2組、4点!」

ザナトスが拳を握る。

今度はすぐクロードを見なかった。

先にエクリアへ向く。

「入った!」

「見れば分かるわよ」

「そこは喜べよ!」

「喜んでるでしょ」

カイルも近づき、ザナトスの肩を軽く叩いた。

クロードはそれを見ながら中央へ戻った。

さっきより第2組の動きが速い。

ザナトス1人が速くなったわけではない。

球を渡す場所が増えている。

そのあと第1組も4点目を取った。

次は第2組が5点。

第1組も追いつく。

5対5。

最後の1点になった。

息を整えていると、隣にいたガレスが言った。

「次で終わりか」

「うん」

「取ろうぜ」

「うん」

反対側ではザナトスも息を弾ませていた。

それでもこちらを見ている。

「クロード!」

「なに?」

「最後は俺が取る!」

「僕たちも取るよ」

「そうじゃなくて、俺が!」

「始め!」

ワズカーの声で会話が切れた。

中央へ走る。

最初に球へ触れたのはレクシアだった。

けれどそのまま持てず、横へ弾ける。

ベンが拾った。

第2組の攻撃になる。

ベンからタンガ。

タンガからカイル。

クロードたちは門の前へ広がる。

カイルが前へ出る。

2歩。

3歩。

ナーンが近づく。

カイルはランへ渡した。

ランが受ける。

第1組がそちらへ寄る。

クロードも動きかけて止まった。

ザナトスが反対側を走っている。

さっきまでなら声を出していただろう。

今は何も言わない。

空いている門へ向かっている。

「ザナトス!」

エクリアが先に気づいた。

ランからエクリアへ球が戻る。

エクリアがすぐ反対を見る。

クロードも走った。

球が飛ぶ。

ザナトスが受け取る。

1歩。

クロードが近づく。

2歩。

ザナトスはこちらを見た。

「来たな」

「うん」

3歩。

クロードが前へ入る。

ザナトスが右へ動く。

クロードも追う。

4歩。

門はまだ少し遠い。

投げるなら狙いにくい。

クロードは腕を見る。

その瞬間、ザナトスの視線がクロードの横を抜けた。

球が投げられる。

門ではない。

後ろにいたエクリアへ飛んだ。

「えっ」

クロードが振り返る。

エクリアが受け取る。

第1組の視線がそちらへ集まる。

ザナトスはそのまま走った。

別の門へ。

エクリアが1歩進む。

ピアが寄る。

2歩。

エクリアはザナトスを見た。

球が戻る。

クロードも走る。

間に合うか。

ザナトスが受け取った。

そのまま投げる。

球が小さな門へ向かう。

柱には当たらない。

横木にも当たらない。

その間を抜けた。

「入った!」

ノーゼスの声が響いた。

「第2組、6点!」

「そこまで!」

ワズカーが大きく手を叩いた。

動いていた全員の足が少しずつ止まる。

ザナトスは門の向こうへ転がった球を見たあと、両手を上げた。

「勝った!」

第2組から声が上がる。

エクリアも息を吐きながら笑っていた。

クロードは膝へ手をついた。

脚が重い。

呼吸も速い。

それでも最後の動きを頭の中でもう1度追った。

ザナトスからエクリアへ。

第1組がそちらを見る。

その間にザナトスが別の門へ走る。

もう1度返してもらう。

「クロード!」

顔を上げる。

ザナトスが目の前まで来ていた。

「俺の勝ち!」

「第2組の勝ちだね」

「俺が最後に入れただろ!」

「うん」

「見てたか?」

「見てた」

ザナトスが少し得意そうな顔になる。

「どうだった?」

クロードは最後の動きを思い出す。

「エクリアに1回渡したのが良かった」

「そこ?」

「だってあれでみんなエクリアの方見たから、ザナトスが空いたでしょ」

ザナトスの顔が少し止まった。

「そのあと返してもらって入れた」

「……俺が入れたのは?」

「上手かったよ」

ザナトスの眉が少し上がった。

「最初からそれ言えよ!」

「聞かれなかったから」

「聞いたよ!」

少し離れたところでエクリアが笑った。

「ちゃんと褒めてもらえてよかったわね」

「お前は黙ってろ!」

「私が返さなかったら入ってないけど?」

ザナトスが口を閉じた。

クロードは笑う。

「じゃあエクリアも上手かった」

「ありがとう」

「だから俺の話だって!」

ワズカーの大きな声が運動場へ響いた。

「よし!」

全員がそちらを見る。

「これで終わりだ!」

何人かがその場で座り込みそうになり、慌てて立ったまま息を整える。

ワズカーは3組を見渡した。

「自分だけで勝てる競技じゃない!」

ザナトスが少しだけクロードを見る。

「目の前の1人だけ見ていても勝てん!」

今度はクロードもザナトスを見る。

「周りを見ろ!」

ワズカーはいつものように胸を張った。

「仲間も相手も正しく見ろ!」

そして最後に拳を握る。

「正しく生きろ!」

疲れていたはずの何人かが笑った。


◇


昼食の時には、クロードの脚はもうはっきり重くなっていた。

椅子へ座ると少し楽になる。

向かいのノーゼスも同じらしく、食事を取りながら何度か脚を伸ばしていた。

「最後どうだった?」

ノーゼスが聞く。

「負けた」

「それは見てた」

「じゃあ何?」

「ザナトス」

クロードは少し考えた。

「途中から僕ばっかり追わなくなった」

「最初ずっと追ってたもんな」

「うん」

隣でエクリアが食事を口へ運びながら言った。

「やっと勝つ方を見たのよ」

少し離れたところから声が飛んできた。

「聞こえてるぞ!」

ザナトスだった。

エクリアはそちらを見もしなかった。

「聞こえるように言ったもの」

「お前な!」

クロードとノーゼスが笑う。

4限目が始まる頃には、教室もいつもの空気へ戻っていた。

身体を動かした疲れは残っていたが、授業が始まればクロードも教本を開いた。

やがて授業を終える鐘が鳴る。

荷物をまとめて教室を出し、寮へ戻る。

今日は部屋へ入ったら少し休みたい。

そう思いながら事務所の前を通ったところで、名前を呼ばれた。

「クロード・アインハルト」

「はい?」

足を止める。

「お前宛てに伝言が来ている」

「僕に?」

「王都のゴルダ・バヌアレブの工房からだ」

クロードの目が少し大きくなった。

頼んでいるものは1つしかない。

「できたんですか?」

「頼まれていた品が完成したそうだ」

さっきまで重かった脚のことが、一瞬だけ頭から消えた。

「ありがとうございます!」

クロードは自室へ戻り、必要なものだけ持つとすぐ寮を出た。


◇


学園のある一角を離れ、王都の街中を歩く。

最初は少し速かった足取りも、しばらくすると朝から動き続けた脚の重さを思い出した。

それでも工房が近づき、金属を打つ音が聞こえてくるとまた少し歩調が上がる。

入口から中へ入る。

「ゴルダさん!」

作業をしていたゴルダが顔を上げた。

「来たか」

「連絡もらいました」

「ああ」

ゴルダは作業台の端を指した。

布の上に球が置かれている。

クロードはすぐ近くへ寄った。

寮にある鉄球と同じ大きさだった。

外側には大きな穴も溝もない。

「これが雷鳴鋼……」

「ジグレニスドだ」

クロードは両手を伸ばした。

球を持ち上げる。

腕へ重さがかかる。

「重い」

「球なんだから当たり前だ」

「前のより少し軽い?」

「同じ大きさでも材料が違うからな」

クロードは両手の中でゆっくり向きを変えた。

初めて触る素材だった。

名前を知った時には、どんなものなのか想像するしかなかった。

今は重さも、手に触れた感触も分かる。

「前の控えどおり、大きさは合わせてある」

「はい」

「中も持って運べるようにはしてあるが、薄くしすぎて形が崩れちゃ意味がねえ」

クロードは頷いた。

普通の鉄球と比べるために頼んだものだ。

大きさが違えば、それだけ条件も増えてしまう。

「これなら同じように試せます」

「試すのは勝手だが」

ゴルダがクロードを見る。

「ここではやるなよ」

「やりません」

前にも言われた。

「先生に確認して、実習場でやります」

「ならいい」

クロードは代金を払い、雷鳴鋼球を抱え直した。

「ありがとうございます」

「落とすなよ」

「はい」

工房を出る。

来る時には空いていた両腕が、帰りは塞がっている。

少し軽いとはいっても、軽い物ではない。

歩いているうちに腕へ重さが溜まっていく。

持つ位置を変える。

少し歩く。

また変える。

「……重い」

朝から走った。

跳んだ。

投げた。

六環球では2試合を走り、1試合は審判をした。

そのあと授業を受け、街を歩いて工房まで来た。

今は球まで抱えている。

クロードは途中で1度立ち止まり、腕を休ませてからまた歩いた。

寮へ戻った頃には、来た時よりずっとゆっくりした足取りになっていた。

自室へ入り、扉を閉める。

「はあ……」

雷鳴鋼球を床へ下ろす。

両腕が急に軽くなった。

机の脇には普通の鉄球が置いてある。

クロードはそちらへ雷鳴鋼球を少し寄せた。

2つの球が並ぶ。

同じ大きさ。

片方は普通の鉄。

もう片方は雷鳴鋼。

クロードはその前にしゃがんだ。

普通の鉄球では、外へ出ようとする雷を抑えた時に表面を長く走ることがあった。

同じ条件で雷鳴鋼へ放ったらどうなるのか。

すぐにでも確かめたい。

クロードは2つの球を見る。

それから自分の腕を見る。

少し持ち上げてみる。

重い。

立ち上がろうとして、今度は脚の重さも思い出した。

実習場へ持っていくなら1つずつになる。

2つとも運ぶなら往復がいる。

試したあとには戻さなければならない。

クロードはもう1度、並んだ2つの球を見た。

しばらくして、その場へ座り込む。

「……今日はやめよう」

同じ大きさの2つの球だけが、床の上に並んでいた。

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