↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/229

まだ分からない

部屋へ戻ると、クロードは借りてきた二冊を机の上に置いた。

昨日借りた雷属性の参考書と魔術操作についての本も置いてあるため、机の上には四冊の本が並ぶことになった。

椅子に座り、今日借りてきた二冊を見る。

どちらも図書館でムリヌに教えてもらわなければ、自分では見つけられなかった本だ。

クロードはそのうちの一冊を手に取った。

まずは目次を開く。

体内の魔力について書かれているところを見つけ、その頁まで進んだ。

最初から全部読むこともできる。

けれど今知りたいのは、午前中に感じたものについてだ。

クロードは一行ずつ読み進めた。

魔力は体内に存在している。

それは知っている。

自分の中で魔力を動かすこともできる。

昔、父上と練習した。

最初は自分の中だけで動かしていた魔力を、手の先から枝へ送ろうとしてもうまくいかなかった。

何度も繰り返して、手のところで止めず、その先まで意識する。

やがて魔力が自分の中から枝まで、そのまま流れていくような感覚を覚えた。

そこから枝の先に雷が出るようになった。

本を読みながら、当時の感覚を思い出す。

けれど、今読んでいるのはその時とは少し違う話だった。

クロードは頁をめくる手を止めた。

そこには、魔力を自ら動かしていない時にも、体内の魔力が完全に静止しているわけではないと書かれていた。

「……やっぱり」

今朝感じたものと似ている。

クロードはもう一度その部分を読んだ。

似ている。

けれど、本にそう書いてあるからといって、今朝自分が感じたものがこれだと決まったわけではない。

図書館でムリヌと話したことを思い出す。

書いてあることを覚えていることと、分かることは違う。

だったら、読んだだけで分かったつもりになるのも同じかもしれない。

クロードは本を机へ置いた。

目を閉じる。

まず、自分の中にある魔力を感じる。

これは難しくない。

そのまま動かさずに待つ。

「……」

今朝よりも少し早く見つかった。

僅かに流れているような感覚。

すぐに動かさず、その感覚だけを追ってみる。

「…………」

分からなくなった。

目を開ける。

「難しいな」

流れていることは感じられた。

でも、それ以上を見ようとすると途端に曖昧になる。

クロードは本へ戻った。

続きを読む。

体内の魔力についていくつか説明が続いている。

読めば意味が分かるところもあれば、一度ではよく分からないところもあった。

前の頁へ戻る。

もう一度読む。

それでも分からないところは、ひとまずそのままにした。

全部を一度に分かる必要はない。

今知りたいところを探していく。

やがて、魔力の流れを感じ取ることについて書かれた部分で手が止まった。

クロードは読んだ。

そして、また目を閉じた。

魔力を感じる。

すぐには動かさない。

僅かな流れを見つける。

今度はそこから何かをしようとせず、ただ感じ続けてみる。

「……」

少しすると、また分からなくなった。

もう一度。

今度は見つけたところで、いつものように魔力を動かす。

動いた。

次は最初から自分で動かす。

これも動く。

もう一度、先に流れを探してから動かす。

「……やっぱり、こっちの方が楽だ」

今朝と同じだった。

偶然ではなさそうだ。

けれど、どうして楽なのかはまだ分からない。

本に戻る。

理由が書かれていないか探したが、それらしいところは見つからなかった。

クロードは少し考えて、もう一冊の本を開いた。

こちらにも魔力の流れについて書かれている。

さっきの本とは言葉が少し違う。

同じようなことを書いているところもあれば、片方にしか書かれていないこともあった。

二冊を机の上に並べる。

片方を読む。

もう片方を読む。

また最初の本へ戻る。

「……同じことなのかな」

似た言葉が使われている。

けれど、本当に同じことを指しているのかは分からない。

昔なら、ここでどうしていただろう。

そう考えて、机の端に置いていたノートへ目が向いた。

枝に魔力を流していた頃も、分からないことを書いた。

できた時とできなかった時を比べた。

魔力を増やしたり、長く流したりもした。

それでも違いが分からなくて、自分が魔力をどう動かしているのかを見るようになった。

本を読むだけではなかった。

自分で試していた。

クロードはノートを開いた。

新しい頁に、まず今朝から何度も確かめたことを書く。

『何もしていない時にも、魔力は少し流れているように感じる。』

少し考えて、次を書く。

『先にその流れを感じてから動かすと、最初から自分で動かす時より少し楽だった。』

ここまでは何度か同じ結果になっている。

その下へ、

『どうして?』

と書いた。

鉛筆を止める。

今のところ、それには答えられない。

本にもすぐ分かる答えはなかった。

クロードはもう一度目を閉じた。

魔力を感じる。

流れを見つける。

今度は動かさない。

午前中は、流れていることに気づいただけだった。

さっきも、その先を見ようとしたら分からなくなった。

だったら、何が分からなかったのか。

流れている。

「……どこに?」

目を開けた。

ノートを見る。

流れていることばかり考えていた。

でも、流れならどこかへ向かっているはずだ。

少なくとも、自分で魔力を動かした時にはそうだった。

自分の中から手へ。

手から枝へ。

その先まで。

あの時は自分で動かしていた。

では、何もしていない時に感じる流れはどうなのだろう。

どこからどこへ流れているのか。

いつも同じなのか。

クロードはノートへ書く。

『何もしていない時の魔力は、どこへ流れている?』

もう一つ。

『いつも同じ方向?』

そこで鉛筆が止まった。

方向という言い方で合っているのかも分からない。

線を引いて消そうとして、やめた。

分からないなら、そのままでいい。

クロードは再び目を閉じた。

魔力を感じる。

僅かな流れを探す。

見つけた。

今度は、どこへ向かっているのかを見ようとする。

「……」

分からない。

もう一度。

「…………」

また分からない。

三度目。

今度は流れを見つけたところで意識を向けすぎたのか、自分で魔力を動かしてしまった。

「あ」

目を開ける。

今のは違う。

自分で動かした。

ノートへ小さく書き足す。

『流れを見ようとすると、自分で動かしてしまうことがある。』

もう一度試す。

今度は動かさないようにすることばかり考えてしまい、流れそのものを見失った。

クロードは目を開けて、椅子の背にもたれた。

「……難しい」

でも、何も分からなかったわけではない。

少なくとも、自分はまだ流れていることを感じただけだ。

その流れがどうなっているのかまでは見えていない。

午前中にはなかった疑問だった。

机の上に開かれた二冊を見る。

本を読んだから気づいたのか。

自分で試したから気づいたのか。

たぶん、どちらもある。

けれど、それも今決めなくていい。

クロードはノートへ視線を戻した。

『何もしていない時の魔力の流れを、もう少し見る。』

そこまで書いてから、ふと昨日借りた魔術操作の本が目に入った。

魔術操作を身につけるためには、まず自身の魔力の流れを理解することから始める。

今朝読んだ一文だ。

理解する。

クロードは今日、図書館でムリヌと話したことを思い出した。

覚えていることと、分かることは違う。

今なら、少しだけその意味が分かる気がした。

本に書いてある言葉は読める。

何が書かれていたかも覚えている。

けれど、自分の魔力がどう流れているのかは、まだほとんど分かっていない。

クロードはノートを閉じなかった。

もう一度だけ試してみようと思った。

目を閉じる。

魔力を感じる。

すぐには動かさない。

僅かな流れを探す。

見つける。

今度は追いかけようとせず、ただそこに意識を向けた。

少しだけ。

ほんの少しだけ、さっきより長く感じられた気がした。

けれど、それが本当にできたのかは分からない。

クロードは目を開けた。

ノートへ手を伸ばしかけて、止める。

「……これは、まだ書けないな」

鉛筆を置いた。

分かった時に書けばいい。

窓の外を見ると、図書館へ向かった時より陽が傾いていた。

机の上には四冊の本と、開いたままのノートがある。

分からないことは、また増えた。

けれど今度は、その中の一つをもう少し見てみたいと思った。

クロードはもう一度、借りてきた本を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。