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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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流れ

朝、クロードは目を覚ました。

身体を起こしたところで、何かがいつもと違うことに気づく。

静かだった。

普段ならこの時間には廊下を歩く足音や、どこかの部屋から聞こえてくる声がもう少しある。

まだ早かっただろうか。

クロードは魔導時計を見る。

「……いつもと同じだ」

時間は間違っていない。

それなのに静かだ。

少し考えて、ようやく思い出した。

「あ、今日休みだ」

入学してから毎日、新しく覚えることがあった。

授業が始まってからは特にそうだ。

気づけば休日のことをすっかり忘れていた。

今日は教室へ行く必要もなければ、授業の始まりを知らせる魔導の鐘を気にする必要もない。

そう思うと、急に時間が増えたような気がした。


◇


朝食を終えて部屋へ戻ると、クロードは机の前に座った。

今日は授業がない。

机の上には昨日、図書館から借りてきた本が置いてある。

雷属性の参考書と、魔術操作について書かれた本。

クロードは魔術操作の本を手に取った。

昨日は知りたいことを探しながら読んだだけだった。

今日は時間がある。

それなら最初から読んでみよう。

頁を開き、順番に読み進めていく。

授業ですでに聞いたこともあれば、初めて知ることもある。

やがて基礎について書かれたところで、クロードの目が止まった。

『魔術操作を身につけるためには、まず自身の魔力の流れを理解することから始める。』

「魔力の流れ……」

その言葉を見て、ずっと前のことを思い出した。

父上と木の枝を使って練習していた頃。

最初は自分の中にある魔力を手まで動かし、そこから枝へ送ろうとしていた。

手から何かが抜けていくような感覚がある時と、何も分からない時があった。

何が違うのか分からなくて、何度も繰り返した。

枝から雷を出す練習を始めてからも同じだった。

出る時と出ない時がある。

魔力を増やしても、長く流しても、それだけでは変わらなかった。

それなら何が違うのか。

雷が出たかどうかだけではなく、自分がどう魔力を動かしていたのかを見るようになって、ようやく気づいたことがあった。

自分の中から枝まで、魔力がそのまま流れていく感覚。

あの時は同じ感覚で四回続けて雷が出た。

アルト兄様が言っていた「そのまま」という言葉も、その時になって少し分かった。

クロードは本へ視線を戻した。

「これも魔力の流れなのかな」

あの頃は、それが何なのかまでは知らなかった。

ただ何度も試して、違いを見つけた。

クロードは続きを読んでいく。

魔力を動かすこと。

流れを感じること。

自分の中にある魔力がどう流れているのかを理解すること。

そこでクロードは手を止めた。

昔、自分が気にしていたのは魔力を動かしている時だった。

枝へ流す時に、どんな感覚があるのか。

雷が出た時と出なかった時では、何が違うのか。

けれど――。

「動かす前は?」

何もしていない時、自分の魔力がどうなっているのか。

そこまで気にしたことはなかった。

クロードは本を机に置いた。

考えていても分からない。

それなら試してみればいい。

椅子に座り直し、目を閉じる。

自分の中にある魔力を意識する。

魔力があることはすぐに分かった。

昔はそれだけでも練習が必要だったけれど、今はもう迷わない。

いつものように動かそうとして、止めた。

今はまだ動かさない。

ただ、自分の中にある魔力を感じてみる。

「……」

分からない。

魔力があることは分かる。

動かそうと思えば動かせる。

でも、何もしていない時にどう流れているのかと聞かれると答えられなかった。

クロードは目を開けて本を見る。

もう一度読んでから、また目を閉じた。

魔力を感じる。

すぐには動かさない。

今どうなっているのかを見る。

「……」

やっぱり分からない。

何かを探そうと意識すると、いつもの癖で魔力を動かしてしまう。

クロードは目を開けた。

「違うな」

もう一度。

魔力を感じる。

動かさない。

今度は何かをしようとせず、そのまま意識を向ける。

しばらく続けても、はっきりとは分からない。

それでもクロードは繰り返した。

昔もそうだった。

一度できなかったからといって、それだけでは何も分からない。

二度目。

分からない。

三度目。

途中で魔力を動かしてしまった。

四度目。

「……あれ?」

ほんの僅かに、何かを感じた。

けれど意識を向けた途端、それが分からなくなった。

クロードは目を開ける。

今のは何だったんだろう。

もう一度試す。

今度は分からない。

それなら、もう一度。

何度か繰り返しているうちに、さっきと似た感覚があった。

魔力は何もしていないわけではない。

自分で動かそうとしていなくても、僅かに流れている。

「これかな……」

まだ決めない。

もう一度試す。

今度も少し分かった。

次は分からなかった。

さらに繰り返す。

少しずつ、同じものを感じられる回数が増えていく。

クロードはそこで初めて魔力を動かしてみた。

いつものように、自分が動かしたい方へ意識を向ける。

魔力が動く。

これは今まで通りだ。

一度止める。

今度はすぐに動かさず、先に流れを感じる。

僅かに動いている魔力を捉えてから、同じ方へ動かしてみる。

「……あ」

さっきとは少し違った。

クロードは目を開けた。

もう一度。

いつものやり方で動かす。

できる。

次は流れを感じてから動かす。

今度は上手くいかなかった。

流れを捉える前に、自分で動かしてしまった。

「もう一回」

目を閉じる。

流れを感じる。

それから動かす。

今度はできた。

クロードは何度も二つのやり方を比べた。

いつものやり方。

流れを感じてから動かすやり方。

上手くいく時。

上手くいかない時。

繰り返しているうちに、少しずつ違いが見えてきた。

「……こっちの方が楽だ」

速く動くわけではない。

動かせる魔力が急に増えたわけでもない。

ただ、流れを感じてから動かせた時は、いつもより無理に動かそうとしなくていい。

クロードは昔のことを思い出した。

あの時に見つけた、自分の中から枝まで魔力がそのまま流れていく感覚。

あれが間違っていたわけではない。

何度も繰り返したからこそ、自分の中だけで魔力を動かすことも、触れているものへ流すことも覚えた。

今やっていることも、昔とはまったく別のことではない。

ただ、見るところが増えた。

昔は動かした魔力がどう流れるのかを見ていた。

今は動かす前から見ている。

「だから楽なのかな」

口にしてから、クロードは少し考えた。

「……まだ分からないか」

流れを感じてから動かした方が楽だった。

何度か試して、同じ違いも感じた。

そこまでは分かる。

でも、なぜそうなるのかは分からない。

昔、枝へ魔力を流せる時と流せない時があったことと関係しているのか。

剣に雷を留めようとして、どうしても保てなかったことにも関係するのか。

それもまだ分からない。

クロードは本を見る。

魔力の流れ。

ここには基礎として書かれている。

もっと詳しく知りたくなった。

もう一度試そうと目を閉じかけたところで、お腹が鳴った。

「……」

クロードは目を開け、魔導時計を見る。

「もうこんな時間?」

朝から始めたはずなのに、いつの間にか昼になっていた。

まだ続けたい。

けれど、その前に昼食だ。

クロードは本を閉じると、部屋を出た。


◇


休日の食堂は、授業がある日とは少し雰囲気が違っていた。

昼食を取っている生徒はいるが、食べ終わってすぐ教室へ戻る必要はない。近くの者と話を続けている生徒もいれば、一人でゆっくり食べている者もいる。

クロードも空いている席へ座り、昼食を食べ始めた。

食べながら、朝から試していたことを思い返す。

魔力を感じる。

そのまま動かすのではなく、まず流れを見る。

それから動かす。

今までより楽だった。

でも、どうして楽になるのかは分からない。

本には、魔術操作を身につけるためにはまず自身の魔力の流れを理解することから始めると書いてあった。

なら、魔力の流れについてもっと詳しく書かれた本もあるかもしれない。

昨日行った図書館には、数えきれないほどの本が並んでいた。

「あとで探してみようかな」

そう呟いて、クロードは残っていた昼食を口へ運んだ。

今日は休みだ。

午後の授業もない。

昼食を食べ終えたクロードは、いつもなら次の授業が始まる時間を気にするところで、ふと魔導時計を見た。

まだ時間はたっぷりある。

クロードは席に座ったまま、少しだけ考えた。

それから、図書館のある方へ目を向けた。

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