↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/248

はじまりの日

広い式場には、クロードと同じ制服を着た新入生たちが整然と並んでいた。

先ほどまで教室で聞こえていた話し声はほとんどなく、前方に設けられた壇上へ視線が集まっている。

やがて教師の一人が前へ出ると、王立学園の入学式が始まった。

簡単な挨拶のあと、新入生の名前が順に呼ばれていく。

「エクリア・ファインザード」

「はい」

少し離れたところで一人の少女が立ち上がる。

よく通る声だった。

クロードは何気なくそちらへ目を向けたあと、再び前を見る。

「ガレス・ヴァンデル」

「はい!」

「カイル・ノルディア」

「はい」

名前と返事が続いていく。

知らない名前ばかりだった。

当然といえば当然だ。今日ここに来るまで、クロードはこの学園に通う者のほとんどと会ったことがない。

「クロード・アインハルト」

「はい」

呼ばれて立ち上がり、返事をする。

壇上の教師が確認すると、クロードは再び席についた。

その後も呼名は続き、やがて新入生全員の入学が認められた。

続いて壇上へ上がったのは、一人の男だった。

王立学園学園長、グラシオス・ザッカーゼクト。

七賢人の一人、風の賢人グラシオス。その名は広く知られており、クロードも知っていた。

グラシオスは新入生たちを見渡してから、ゆっくりと口を開いた。

「今日、諸君は王立学園の門をくぐった」

静かな声が広い式場によく響く。

「ここには、さまざまな能力を持つ者がいる。生まれ育った場所も、これまで過ごしてきた環境も一人ひとり違う。これまで自分のいた場所では出会わなかった者とも出会うだろう」

クロードは黙ってその言葉を聞いていた。

「互いの違いを知り、時には競い、時には力を貸し合いながら、この学園で多くのことを学んでほしい」

グラシオスは最後に新入生たちをもう一度見渡す。

「諸君がこの学園で過ごす日々が、実りあるものになることを願っている」

一礼して壇上を降りると、式は次へ進んだ。

「続いて、新入生代表挨拶」

クロードは背筋を伸ばす。

「新入生代表、クロード・アインハルト」

「はい」

もう一度立ち上がる。

今度は先ほどとは違い、式場にいる者たちの視線が一斉にこちらへ向いた。

クロードは壇上へ向かい、教えられていた位置で足を止める。

前を見ると、並んで座る新入生たちの顔が思っていた以上によく見えた。

クロードは一度息を整え、口を開いた。

「本日、僕たちは王立学園への入学を許され、この日を迎えることができました」

用意してきた言葉を、一つずつ口にする。

これから始まる学園生活で多くのことを学ぶこと。

互いに高め合いながら成長していきたいこと。

そして、この学園の生徒として恥じないよう励んでいくこと。

最後まで言い終えると、クロードは一礼して壇上を降りた。

席へ戻る途中、何人かの視線を感じた。

新入生代表として前に立ったのだから、目立つのは仕方がない。

そう考えて席につく。

その後、教師たちの紹介が行われ、入学式は滞りなく終わった。

新入生たちが立ち上がり、それぞれの教室へ戻ろうと動き始める。

クロードも人の流れに合わせて歩き出した。

「クロード・アインハルト」

突然、自分の名前を呼ばれて足を止める。

振り返ると、一人の少女がこちらへ歩いてきていた。

呼名の時に、よく通る声で返事をしていた少女だ。

「えっと……」

クロードが名前を思い出そうとすると、少女は先に名乗った。

「エクリア・ファインザードよ」

「ああ、覚えてる」

「覚えていたの?」

「返事の声が印象に残ってたから」

エクリアは一瞬意外そうな顔をしたものの、すぐにクロードをまっすぐ見た。

「私はあなたの名前、入学説明会の時から知っていたわ」

「説明会?」

「ええ。新入生代表としてあなたの名前が発表されたから」

「そうだったんだ」

「私、今回も自分が一番だと思っていたの」

あまりにも迷いなく言うので、クロードは返す言葉に困った。

「でも違った。首席はクロード・アインハルト。聞いたこともない名前だったから、誰なのかと思ってた」

「それで僕の名前を?」

「ええ。それで今日、やっと分かったわ」

エクリアの目がクロードを捉える。

「あなたがクロード・アインハルトなのね」

「うん」

「次は負けないから」

「……次?」

クロードが聞き返すと、エクリアは少し眉を寄せた。

「試験よ。今度は私が一番になる」

そう言い切ると、エクリアは教室へ向かって歩き出した。

クロードはその後ろ姿を見送る。

入学初日から、ずいぶん負けず嫌いな子に目をつけられたらしい。

けれど嫌な感じはしなかった。

負けたことが悔しいから、次は勝つ。

言っていることは単純だった。

クロードも教室へ向かう。

教室に戻ると、すでに多くの生徒が席についていた。

しばらくして、一人の女性教師が教室へ入ってくる。

「皆さん、改めて入学おめでとうございます。今日からこのクラスの担任を務めます、マーサ・ミレナインです」

マーサはそう言って頭を下げた。

「まずは明日からの予定について説明しますね。教科書については――」

そこまで言って、マーサが教室を見渡した。

「あ、これはもう確認してもらってましたね」

小さな笑いが教室のあちこちから漏れる。

「すみません。それでは明日からの予定を説明します」

マーサは手元の紙へ目を落とし、今度こそ説明を始めた。

明日から授業が始まること。

必要なものや学園での決まり。

校内の施設について。

いくつかの説明を終えると、マーサは最後に教室を見渡した。

「今日はこれで終わりです。それでは、明日からよろしくお願いします」

担任の言葉を合図に、教室の空気が一気に緩んだ。

席を立つ者、近くの生徒と話し始める者、それぞれが動き出す。

クロードも鞄を手に席を立った。

「なあ」

すぐ近くから声がした。

自分に向けられたものだと思わず、クロードはそのまま歩き出そうとする。

「おい、お前だよ」

「僕?」

振り向くと、見覚えのない少年が立っていた。

少年はクロードの顔を見て、最初から知り合いだったかのように言った。

「お前すごいな」

「……何が?」

「首席だろ? さっき新入生代表やってたじゃん」

「そうだけど」

「やっぱりお前か。クロード・アインハルト」

少年は納得したように頷く。

「俺、ノーゼス・ダグドラスタ」

「クロード・アインハルト」

「それは知ってる」

「……そう」

話が終わったと思い、クロードは教室を出る。

ノーゼスも隣を歩いていた。

「なあ、試験って難しかった?」

「筆記?」

「そう」

「そんなに」

「そんなに!? 俺、結構難しかったんだけど」

「そうなんだ」

「お前、どこから来たんだ?」

「アインハルト領」

「遠い?」

「それなりに」

「へえ。兄弟いる?」

「いるよ」

「何人?」

クロードは隣を見る。

ノーゼスもこちらを見る。

「……ずっと聞くの?」

「駄目か?」

「駄目じゃないけど」

「じゃあ何人?」

クロードは少しだけ考えてから答えた。

どうやら、しばらく質問は終わりそうにない。


そして――


クロードの学園生活が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。