↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/240

状態とは

 翌朝、僕は机に向かうとノートを開いた。

 昨日書いた最後の一行が目に入る。

『出した状態を保つには、どうすればいい?』

 父上は、剣に炎を出した状態を保っていると言っていた。

 その状態を崩さないようにする、とも。

 僕も雷が出た状態を保とうとしてみたけれど、雷はすぐに消えてしまった。

「……状態って、なんだろう」

 小さく呟いて、もう一度ノートを見る。

 父上が言っていたことは覚えている。でも、何を保てばいいのかが分からない。

 父上は剣に炎を出した状態を保つことができる。

 それなら、やっているところを見れば何か分かるかもしれない。

 僕はノートを閉じると、父上のところへ向かった。

「父上」

「どうした」

「剣に炎を出すところを、もう一度見せてもらえますか?」

 父上が僕を見る。

「昨日の続きか」

「はい。出した状態というのが、まだよく分からなくて」

 父上は少しだけ間を置いてから頷いた。

「分かった」

 父上が剣を手に取る。

 僕はその手元がよく見えるところに立った。

「お願いします」

 父上が剣を握ると、剣に炎が現れた。

 僕はじっと見る。

 炎が出る瞬間から、そのあとまで目を離さない。

 剣を包むように燃えている炎は、すぐには消えずにそのまま残っている。

 何か特徴がないか。炎が出る前と出たあとで、父上の様子に何か違いはないか。

 そう思いながら見てみるけれど、分からない。

 炎は剣に出て、そのまま残っている。

 昨日父上が言っていた通りだった。

 でも、何をしてその状態を保っているのかは、見ているだけでは分からなかった。

「もういいか」

「……はい」

 父上が炎を消す。

 僕はさっきまで炎があった剣を見つめた。

 見れば何か分かると思った。

 でも、分からなかった。

 僕はノートを開く。

『父上が剣に炎を出すところを見た。炎は剣に出たあとも消えずに残っていた。』

 そこまで書いて、少し考える。

『見ても、何を保っているのかは分からなかった。』

 書いた文字を読み返す。

 見ただけで分からないなら、自分でもやってみよう。

「父上。僕も試していいですか?」

「ああ」

 僕は枝を握った。

 さっき見た父上の炎を思い出す。

 炎は剣に出たあとも、そこに残っていた。

 僕も同じように、雷が出た状態を保とうと意識しながら枝へ魔力を流す。

 ぱちっ、と枝先に雷が現れた。

 消えないように、その状態を保とうとする。

 けれど、雷はすぐに消えた。

「……やっぱり消える」

 今の感覚を思い返す。

 雷が出るところまでは分かる。でも、そのあと何をすればいいのかが分からない。

 もう一度やってみる。

 枝を握り直し、魔力を流す。

 枝先に雷が現れる。

 今度は父上の剣に炎が残っていたところを思い浮かべながら、その状態を崩さないように意識する。

 それでも雷は消えた。

 僕は枝先を見る。

 二回やっても分からない。

「クロード」

「はい」

「体は」

 言われて、自分の体に意識を向ける。

「大丈夫です」

 父上が頷く。

 僕はもう一度考えた。

 父上の炎と僕の雷では、何が違うんだろう。

 炎を見ても分からなかった。自分で試しても、やっぱり分からない。

 それなら、もっと父上と同じようにやってみたらどうだろう。

「父上」

「何だ」

「もう一度、炎を出してもらえませんか?」

「さっきと一緒でいいのか?」

「いえ、僕も一緒にやりたいです」

「分かった」

 僕は父上の隣に立った。

 父上が剣を持ち、僕は枝を持つ。

 横を見る。

 父上はいつもと変わらないように見える。

 剣を握って、静かに立っている。

 僕は父上の呼吸を見る。

 息を吸う。

 吐く。

 僕も同じように息を吸って、吐いた。

「いくぞ」

「はい」

 父上の剣に炎が現れる。

 僕も枝へ魔力を流した。

 ぱちっ、と枝先に雷が現れる。

 父上の炎は残っている。

 僕の雷は消えた。

「……違う」

 もう一度、父上の呼吸に合わせる。

 息を吸って、吐く。

「いくぞ」

「はい」

 父上の剣に炎が現れる。

 僕も枝へ魔力を流す。

 雷が現れる。

 そして、消える。

 まだ分からない。

「もう一回いいですか?」

「ああ」

 三回目も父上の呼吸を見る。

 同じように息を吸って、吐く。

「いくぞ」

「はい」

 父上が剣に炎を出す。

 僕も枝に雷を出す。

 炎は残る。

 雷は消える。

「……分からない」

 僕は枝先を見つめた。

 呼吸を同じにしても、何が違うのか分からなかった。

 もう一度やってみようと枝を握り直したとき、父上の声がした。

「クロード」

「はい」

「今日はそこまでにしろ」

「でも、もう一回――」

「疲れているだろう」

 言われて、自分の体に意識を向ける。

 さっき確認したときには大丈夫だったのに、今は少し体が重い。

「……はい」

 僕は枝を下ろした。

 父上の剣からも炎が消える。


◇


 その夜、僕は机に向かってノートを開いた。

 今日やったことを思い出しながら書いていく。

『父上が剣に炎を出すところを見た。炎は出たあとも剣に残っていた。でも、何を保っているのかは分からなかった。』

『自分でも二回試した。雷は出たけれど、すぐに消えた。』

『父上の隣で、呼吸を同じにして三回試した。父上の炎は残っていたけれど、僕の雷は消えた。』


『結局、分からなかった。』


『でもまだやれることはあるはず。』


 そう書き込んでノートを閉じた。



 それから、月日は流れ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。