そのまま
ノートに書いた二つの記録を、もう一度見比べる。
二回とも、魔力が自分の中から枝までそのまま流れるように感じた。
そして、二回とも雷が出た。
でも、前にも続けて雷が出たことはある。そのあとには、同じようにやったつもりでも出ないことがあった。
もう少し確かめてみたい。
「父上、もう一度やってみてもいいですか?」
「ああ」
僕は枝を握り直した。
さっきと同じように、自分の中の魔力を意識する。
雷を出すつもりで動かして、そのまま枝まで流す。
手のところで終わらせず、その先まで。
魔力が自分の中から枝へ流れていく。
さっきと同じ感じだ。
パチッ。
枝の先で、小さな雷が光った。
「……出た」
今も同じだった。
手から何かが抜けていく感じではなく、そのまま枝まで流れていった。
僕はノートに今のことを書き足す。
三回続けて、同じ感覚で雷が出た。
もう一度やってみたい。
「父上、もう一回いいですか?」
「体調は」
自分の体を確かめる。
少し疲れてきた気はするけれど、まだ大丈夫そうだ。
「まだ大丈夫です」
「ならやってみろ」
「はい」
もう一度枝を握る。
今度も、自分の中で魔力を動かして、そのまま枝まで流していく。
魔力が手のところで途切れず、その先へ流れる。
同じ感覚だ。
パチッ。
また枝の先で雷が光った。
「また出た……」
これで四回続いた。
四回とも同じように魔力が流れて、そのときは雷も出ている。
やっぱり、この感覚は雷が出ることと何か関係があるのかもしれない。
もう一度やってみたくなって、枝を握り直す。
「クロード」
父上に呼ばれて顔を上げた。
「体調はどうだ」
聞かれて、自分の体を確かめる。
さっきより体が重くなっている。
まだ試してみたい。でも、疲れているのは分かった。
「……疲れました」
「なら今日は終わりだ」
「はい」
僕は枝を置いた。
もう一度試すことはできなかったけれど、今日は四回とも同じ感覚で雷が出た。
それから少し休んでいるうちに、前にアルト兄様から聞いた言葉を思い出した。
今なら、あのときより分かる気がする。
僕はアルト兄様のところへ向かった。
「アルト兄様」
「クロード。どうした?」
「前に、持っているものに魔力を流すときのことを教えてくれましたよね」
「前に?」
「そのまま流すって言っていたことです」
「ああ」
「あれ、少し分かった気がします」
「分かったのか?」
「はい。今までは枝に魔力を送ると、手から何かが抜けていくような感じだったんです」
アルト兄様は黙って僕の話を聞いている。
「でも今日は違いました。自分の中から枝まで、そのまま魔力が流れていく感じがしたんです」
「……うん」
アルト兄様が少し考えてから頷いた。
「俺が言ってたのも、たぶんそれだと思う」
「やっぱり、これが『そのまま』なんですか?」
「うん。俺は手のところで何か変えてるわけじゃないから。その先まで流してるだけ」
前に聞いたときにも、アルト兄様は同じようなことを言っていた。
あのときは、それがどういう感覚なのか分からなかった。
でも今は、自分の中で魔力が動いて、そのまま枝へ流れていく感覚を思い出せる。
「前は、聞いても分からなかったです」
「俺も、どう言えばいいのか分からなかったからな」
前にも、説明しにくいと言っていた。
僕も今日の感覚を言葉にしようとしたとき、最初はどう書けばいいのか迷った。
「それで、今日はその感じで雷も出たんです」
「雷も?」
「はい。四回とも出ました」
「四回とも出たのか」
「はい。でも、まだ次も出るかは分かりません」
「そっか」
「また今度、試してみます」
「うん」
アルト兄様と別れて、僕は部屋に戻った。
机に座ってノートを開く。
今日の雷の記録を上から読み返す。
最初に雷が出たときも、その次も、三回目も四回目も、魔力が自分の中から枝までそのまま流れる感じがした。
ペンを持って、今日分かったことを書き足す。
『魔力が自分の中から枝まで、そのまま流れる感じ。今日は四回とも同じ感じで雷が出た。』
その下に、もう一つ書く。
『アルト兄様が言っていた「そのまま」が、少し分かった気がする。』
書いたものを読み返してから、僕はノートを閉じた。




