同じつもり
次の日、僕は昨日使った枝を持って、父上と訓練場に来ていた。
昨日、この枝から何度か雷を出すことができた。
でも、出ないときもあった。
同じようにやったつもりなのに、出るときと出ないときがある。
昨日からずっと、その違いが気になっていた。
枝を見る。
持つ場所は同じだった。雷を出そうとしている場所も同じだった。
それなら、他に何が違ったんだろう。
昨日は、できるだけ少ない魔力で試していた。
もしかしたら、少なすぎるんだろうか。
枝の先まで届く前に足りなくなっているのかもしれない。
「父上」
「何だ」
「昨日より少し多く魔力を使ってみてもいいですか?」
父上が僕を見る。
「なぜだ」
「昨日は少ない魔力でやっていたので、それだと足りないのかもしれないと思って」
「足りない?」
「はい。雷が出ないときは、枝の先まで届く前に足りなくなっているのかもしれません」
父上は少しの間、僕を見ていた。
「どのくらい増やす」
「少しだけです」
「無理に増やすな」
「はい」
枝を握る。
昨日より少しだけ多く。
どのくらい増えたのかは分からないけれど、昨日より多く魔力を動かすことはできる。
最初から雷を出すつもりで魔力を動かして、そのまま枝へ送る。
パチッ。
「あっ」
枝の先で雷が光った。
出た。
昨日と同じくらいの小さな雷だった。
やっぱり、魔力が少なかったんだろうか。
「もう一度やってもいいですか?」
「体調は」
腕や体の重さを確かめる。
「大丈夫です」
「ならやってみろ」
「はい」
もう一度、昨日より少し多く魔力を動かす。
さっきと同じように、そのまま枝へ送る。
何も起きない。
「……出ない」
同じくらいの魔力を使ったつもりだった。
でも、今度は雷が出なかった。
枝の先を見る。
もしかしたら、止めるのが早かったんだろうか。
「父上」
「何だ」
「出なくても、少しだけ魔力を流し続けてみてもいいですか?」
「なぜだ」
「枝の先まで届く前に止めているのかもしれないので」
父上は少し考えてから答えた。
「無理はするな」
「はい」
もう一度、枝を握る。
最初から雷を出すつもりで魔力を動かして、そのまま枝へ送る。
すぐには何も起きない。
まだ止めない。
もう少しだけ。
魔力を枝へ送り続ける。
パチッ。
「出た!」
少し遅れて、枝の先で雷が光った。
やっぱり途中で止めていたんだろうか。
もう一度確かめたい。
「父上、もう一度――」
「体調は」
「大丈夫です」
「ならやれ」
「はい」
同じようにやってみる。
魔力を動かして、枝へ送る。
何も起きない。
そのまま続ける。
まだ出ない。
もう少し。
それでも枝の先は変わらない。
もう少しだけ続けたら――
「クロード、もういい」
父上の声で魔力を止めた。
枝を下ろす。
「……出ませんでした」
「ああ」
さっきは、すぐに出なかったのに続けていたら出た。
でも今は、続けても出なかった。
だったら、止めるのが早いだけでもない。
魔力が少ないから出ないと思ったけれど、少し増やしても出ないときがあった。
長く流しても出ないときがある。
僕は手の中の枝を見る。
何が違うんだろう。
同じ枝を持って、同じ場所から雷を出そうとしている。
魔力の量も、同じくらいにしたつもりだった。
やり方だって同じだ。
――同じ?
昨日も、同じようにやったつもりだった。
今日もそうだ。
でも、本当に同じだったんだろうか。
魔力を動かすときのことを思い返す。
雷が出たとき。
出なかったとき。
僕は同じようにやっているつもりだった。
でも、自分の中で動かしている魔力まで、本当に毎回同じだったのかは分からない。
「父上」
「何だ」
「同じようにやっているつもりでも、同じになっていないことってありますか?」
父上は僕を見た。
「ああ」
「父上もですか?」
「ある」
少し意外だった。
父上なら、いつでも同じようにできると思っていた。
「どうしたら同じようにできるようになりますか?」
「繰り返すしかない」
「繰り返す……」
「自分で違いを覚えろ」
僕はもう一度、枝を見る。
出たときと、出なかったとき。
今までは枝の持ち方や魔力の量ばかり考えていた。
でも、違っているのはそこじゃないのかもしれない。
僕自身が、まだ同じように魔力を動かせていないのかもしれない。
だったら次は、雷が出たかどうかだけじゃなくて、魔力をどう動かしたのかも気にしてみよう。
同じつもりじゃなくて、本当に同じようにできるまで。




