もう一度
枝を握ったまま、もう一度自分の中の魔力を意識する。
一度目は何も起きなかった。
枝に魔力を送ることは昨日から何度も繰り返している。さっきも父上に反対側を持ってもらい、自分の感覚だけではなく、本当に魔力が届いていることまで確かめた。
だから今度も、まずは同じように魔力を動かした。
手のところで止めず、その先へ。
握っている枝の中へ送る。
手の先から何かが抜けていくような、昨日から何度も感じていた感覚があった。
ここまではできていると思う。
そのまま枝の先を見ながら、雷を出そうとする。
けれど、何も起きなかった。
「……また出ません」
「ああ」
父上は少し離れたところから枝を見ている。
二回やって、二回とも出なかった。
僕は手の中の枝を見る。
魔力を送るところまでは、さっきまでと同じ感覚だった。それなのに雷は出ない。
昨日まで練習していたのは、枝に魔力を送ることだった。
今やろうとしているのは、枝から雷を出すことだ。
同じではない。
でも、何が違うんだろう。
僕は自分の手を見る。
枝を使わずに雷を出したときは、どうしていただろう。
魔力を手まで動かして、それから雷を出す。
そう考えていたわけではない。
雷を出そうとして魔力を動かせば、触れているところから雷が出ていた。
枝のときはどうだろう。
まず枝に魔力を送る。
届いたと思ったら、そこから雷を出そうとする。
僕は二つに分けてやっていた。
「父上」
「何だ」
「父上が剣に炎を出すときも、最初に剣へ魔力を送るんですか?」
「ああ」
「それから炎を出すんですか?」
父上は少し考えてから答えた。
「分けてはいない」
「分けてない?」
「剣に魔力を流して、そのまま炎にしている」
そのまま。
昨日、アルト兄様からも聞いた言葉だった。
持っているものに魔力を流すときは、そのまま流している。
あのときは、その「そのまま」が分からなかった。
今も全部分かったわけじゃない。
でも、僕がやっていたこととは違う気がした。
枝に魔力を送ってから、雷を出す。
そうじゃなくて、最初から雷を出すつもりで枝へ魔力を送ったらどうなるだろう。
僕は枝を握り直した。
「もう一回やってみます」
「ああ」
父上は止めなかった。
枝の先を見る。
今度は、枝に魔力を送ることだけを先に考えない。
いつも雷を出すときのように魔力を動かす。ただ、雷が出る場所を自分の手ではなく、その先にある枝へ向ける。
魔力が手まで来る。
そこで止めない。
枝へ。
そのまま先へ。
パチッ、と小さな音がした。
「……!」
思わず枝を見た。
何かが光ったように見えた。
ほんの一瞬だった。いつも手から出している雷よりずっと小さく、本当に雷だったのか自分だけでは分からない。
僕は父上を見る。
「今、見えましたか?」
「ああ」
「雷ですか?」
「そうだ」
出た。
枝から雷が出た。
嬉しくなって、もう一度枝を見る。
でも、まだ一回だけだ。
同じようにやって、もう一度出るかは分からない。
「もう一回やってもいいですか?」
父上はすぐには答えず、僕の様子を見た。
「体調はどうだ」
自分でも確かめる。
少し集中したけれど、昨日やさっきまでと比べて急に疲れた感じはない。
「大丈夫です」
「ならやってみろ」
「はい」
もう一度、枝を構える。
今度はさっきと同じようにできるか確かめる。
魔力を動かし、手から枝へ、そのまま先まで送る。
けれど何も起きなかった。
「……あれ?」
もう一度。
今度は途中で、枝に魔力を送ることを意識しすぎた気がした。
やめて、最初からやり直す。
雷を出すつもりで魔力を動かし、そのまま枝へ送る。
パチッ。
二度目の小さな音がした。
「出た……」
「ああ」
今度は僕にも見えた。
枝の先で、本当に小さな雷が一瞬だけ光った。
でも、毎回ではない。
僕は枝を見ながら、今できたときと、その前にできなかったときの感覚を思い返す。
できたときは、枝に送ることと雷を出すことを途中で分けていなかった。
できなかったときは、途中で枝のことを考えすぎた。
それだけが違いなのかは、まだ分からない。
もっとやってみれば分かるかもしれない。
そう思ってもう一度構えようとしたところで、父上が口を開いた。
「クロード」
「はい」
「一度休め」
僕は自分の体を確かめた。
まだできそうな気はする。
でも、さっきより少しだけ腕に力が入っていることに気づいた。
「……はい」
枝を下ろす。
今できたことを忘れないうちに書いておきたい。
二回、雷が出た。
出なかったときもあった。
何が違ったのかは、まだ全部は分からない。
それでも昨日までとは違う。
枝に魔力を送るだけだったところから、その先へ一つ進んだ。
僕は手の中の枝を見た。
休んだら、もう一度試してみよう。




