↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/225

届ける方法

昨日の実験を終えてから、ずっと同じことを考えていた。


狙ったところへ、安全に雷を届ける方法。


『雷の記録』を開くと、これまで試してきたことが並んでいる。


木。


石。


鉄。


距離。


同じ条件で繰り返した結果。


アルミと鉄。


アルミと鉛。


鉄と鉛。


最初の頃に比べれば、分かったことは増えた。


雷は何にでも同じように落ちるわけじゃない。


金属によっても違いがあるらしい。


昨日の鉄と鉛では、自分で考えた予想に近い結果も出た。


それなのに、一番最初から困っていたことはまだ残っている。


狙ったところに落ちない。


僕は机の上に置いた『雷の記録』を見ながら頬杖をついた。


「……近くなら?」


呟いてから、すぐに首を振る。


距離はもう試した。


近くしたからといって、必ず狙ったところへ落ちるわけじゃなかった。


だったら、もっと雷が落ちやすいものを置けばいいのか。


アルミは鉄や鉛より落ちやすかった。


でも、アルミだけに落ちたわけじゃない。


地面にも落ちた。


それならもっと落ちやすい金属を探す?


考えて、また首を振った。


違う気がする。


たとえ今より落ちやすいものが見つかっても、それで必ずそこへ落ちるとは限らない。


昨日気づいたことが、頭から離れなかった。


外れた雷が、誰かに当たるかもしれない。


「……落ちやすいじゃ、駄目なんだ」


僕は椅子から降りた。


窓の外を見る。


庭の向こうに、いつもの訓練場が見えた。


今まで僕は、離れたところに何かを置いて、そこへ雷を落とそうとしてきた。


木を置いても。


石を置いても。


鉄を置いても。


アルミを置いても。


ずっと同じだった。


僕はここにいる。


狙うものは向こうにある。


その間を雷が走っていく。


そして、どこへ落ちるのかを見る。


「…………」


もしかして。


僕はずっと、同じやり方だけで考えていたんじゃないだろうか。


雷は離れたところへ落とすもの。


いつの間にか、そう思っていた。


でも、魔法はそれだけじゃない。


そこまで考えたところで、頭の中に昔の光景が浮かんだ。


父上と訓練場に来た日のこと。


まだ魔法のことをほとんど知らなかった頃。


父上が剣を持っていた。


その剣を炎が包んだ。


燃えているのに、剣は溶けなかった。


父上の手も、柄も燃えていなかった。


不思議で、僕はいくつも聞いた。


どうして剣だけが燃えているのか。


どうして手は熱くないのか。


父上は、印で範囲を決めていると言っていた。


「……範囲」


僕は自分の手を見る。


あの炎は、どこかへ飛んでいかなかった。


父上が持っていた剣のところにあった。


それなら。


雷も同じようにできるんだろうか。


どこかへ落とすんじゃなくて。


何かのところに、雷を――。


「クロード?」


声に振り返る。


部屋の入口に父上が立っていた。


「父上」


「さっきから何をしている?」


「考えてた」


「それは見れば分かる」


父上は机の上の『雷の記録』を見る。


「昨日の続きか?」


「うん」


僕は少し迷ってから父上の腰を見る。


剣がある。


それを見ていると、父上も僕の視線に気づいたらしい。


「剣がどうした?」


「あのね、父上」


「なんだ」


「前に、剣を燃やしてたよね」


父上が少しだけ眉を上げた。


「……よく覚えているな」


「印で範囲を決めてるって言ってた」


「言ったな」


やっぱり覚え間違いじゃない。


僕は椅子から離れ、父上の近くまで歩く。


「炎を飛ばしてたんじゃないよね?」


「違う」


「剣のところに、炎があった」


「ああ」


僕はもう一度、父上の剣を見る。


昨日まで考えていたこととは違う。


狙った場所へ雷を落とす。


そのために、何に落ちやすいのかを調べる。


でも。


そもそも雷を落とさなかったら?


「父上」


「なんだ」


「雷も、何かにくっつけられる?」


父上はすぐには答えなかった。


僕の顔を見て、それから机の上の『雷の記録』を見る。


「なぜそう思った?」


「僕の雷、狙ったところに落ちないから」


「それは聞いた」


「昨日、鉄に落ちやすいかもしれないって分かった。でも、地面にも落ちた」


父上は黙って聞いている。


「人がいたら危ない。だから、どこに落ちるか分からないまま飛ばしたくない」


言葉にしながら、自分でも考える。


本当にできるのかは分からない。


父上の炎と僕の雷は違う。


同じ魔法でも属性が違えば、できることまで同じとは限らない。


それでも。


「父上の炎みたいに、どこかに置いたままにできたら……勝手に違うところへ行かないのかなって」


父上はしばらく何も言わなかった。


やがて腰の剣へ手を置く。


「できるとは言えん」


「うん」


「炎と雷は違う」


「うん」


「それに、俺が剣に炎を纏わせているのは、ただ魔力を出しているだけではない」


「印?」


「それもある」


僕は父上を見る。


父上は剣から手を離した。


「魔力をどこまで出すか。どこに留めるか。自分で決めている」


「留める……」


知らないことが、また出てきた。


でも今までとは違う。


雷がどこへ落ちるのかを追いかけるだけじゃない。


雷をどこかへ留める。


できるかどうかは分からない。


やり方も知らない。


それでも試してみたいと思った。


「僕もやってみたい」


そう言うと、父上はすぐに首を横へ振った。


「駄目だ」


「……まだ何もしてないよ?」


「だから先に言った」


「なんで?」


「お前は五歳だ」


僕は黙った。


「それと」


父上が続ける。


「剣を見ていただろう」


「……うん」


「持たせんぞ」


先に言われた。


「剣じゃなくてもいい」


「ほう」


「父上が炎を剣にくっつけてたから見てただけで、僕が知りたいのは剣の使い方じゃない」


言いながら、少しずつ自分でも分かってきた。


剣じゃない。


僕が知りたいのは、雷を狙ったところから逃がさない方法だ。


「何かに雷を留められるのか、試したい」


父上は腕を組んだ。


すぐには駄目とも、いいとも言わない。


その顔を見ながら、僕は考える。


何を使えばいい。


どうやって試せばいい。


そもそも、雷を留めるってどうすればいい。


分からないことばかりだ。


なのに昨日より少しだけ楽しかった。


また、知らないことが増えた。


僕は『雷の記録』へ戻り、新しいページを開いた。


狙ったところへ、安全に雷を届ける。


その下に、もう一つ書く。


雷を、何かに留められるか。


書いた文字を見てから、僕は父上を振り返った。


「父上」


「なんだ」


「剣じゃないなら、試してもいい?」


父上は小さく息を吐いた。


「まず、何をするつもりか説明しろ」


「……今から考える」


「なら考えてから聞け」


「うん」


僕はもう一度『雷の記録』を見る。


答えはまだない。


でも、次に調べたいことは見つかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。