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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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守る位置

ベンがガレスの右側に肩を寄せると、ノーゼスも反対側から背を支えた。

「いいか、ゆっくりだぞ」

グレインの声に、ガレスが頷く。

「分かってます」

「昨日もそう言ってただろ」

ノーゼスが言うと、ガレスは顔をしかめた。

「今日は本当にゆっくりだって」

「なら、俺たちに合わせろよ」

「そっちが先にへばるなよ」

「まだ立ってもいないだろ!」

ベンが間に入るように笑った。

「二人とも、まず立とうか」

ガレスは右手で地面を押し、二人の支えに身体を預けた。

脚に力を入れたところで、上着に包まれた左腕がわずかに揺れる。

「……っ」

「止まるか?」

グレインが尋ねる。

「いえ、大丈夫です」

ガレスは一度呼吸を整え、もう少しだけ身体を起こした。

ベンが肩の位置を合わせ、ノーゼスも背中へ添えた手を動かす。

やがてガレスは、二人に支えられながら両足で立った。

「痛みは?」

「立つ時に少し。でも、今は……平気です」

「無理に歩幅を広げるなよ」

「はい」

グレインはエクリアとピアへ目を向けた。

「二人とも、さっき確かめた道を進もう。ただし先へ離れるな」

「はい」

「分かったよ」

クロードは左手の実剣を握り、七人が道へ戻るのを待った。

朝の光が差していても、木の根の影は濃い。

先頭のピアが一度足を止め、出っ張った根の横を指した。

「そこ、昨日も通ったけど、ガレスはこっちの方がよさそう」

「本当だね」

ベンは少し向きを変えた。

ガレスが右足を出すのに合わせて、ノーゼスも一歩動く。

「こんな根、来る時は気にしなかったのにな」

ガレスが呟いた。

「荷物を背負ってても、昨日までは自分で越えられたものね」

エクリアが振り返る。

「今は三人で越えるんだよ」

ピアが言うと、ガレスは小さく笑った。

「三人分の足を揃える方が難しいな」

「揃えないと転ぶからね」

ベンも笑ったが、すぐに足元へ視線を戻した。

七人は木立沿いの道を少しずつ進んだ。

曲がり角を越えても、その先にまた根や石が現れる。

ガレスが足を止めれば、全員が止まった。

急ぐ者はいなかったが、ベンとノーゼスが何度も肩の位置を直しているのが分かった。

クロードは二人の背中を見てから、道の後ろへ目をやる。

葉の揺れる音は続いている。

昨日のような重い足音は聞こえなかった。

それでも、音がしないことだけで安心できるわけではない。

しばらく進むと、グレインが片手を上げた。

「ここで一度止まるぞ」

ガレスが息を吐き、ベンの肩に預けていた右腕の力を少し緩めた。

「……助かった」

「もう疲れたのか?」

ノーゼスが聞く。

「お前たちの肩の方が心配なんだよ」

「俺の肩まで心配する余裕があるなら、まだ大丈夫だな」

「だから、そういう話じゃ……」

「はい、そこまで」

ベンが二人を止めた。

グレインはそのやり取りを聞きながら、道の前後を確かめている。

「休む間も周りを見ておけ。ここでは長く止まらん」

「はい」

クロードは答え、剣を下げすぎないよう持ち直した。

少し先で、ピアがふと顔を上げた。

「……今、何か動かなかった?」

エクリアも木々の間へ目を向ける。

「どこ?」

「あの、根が大きく出てるところ」

ピアの声が低くなった。

グレインがすぐに剣を構える。

「全員、その場で止まれ」

クロードはピアの示した方を見た。

幹の陰で、小柄な何かが身を動かしている。

一つかと思ったが、少し離れた茂みでも葉が揺れた。

「……二つ?」

クロードが声にすると、グレインが短く頷いた。

「ゴブリンだ。二体いる」

木の陰から出てきた一体は、曲がった枝のような棒を握っていた。

もう一体も棒を手に、少し離れたところで立ち止まり、こちらの人数を確かめるように首を動かしている。

「ガレスたちは後ろへ。急に動くな」

グレインが言った。

「ベン、ノーゼス、支えを離すな」

「はい!」

二人はガレスの身体を挟んだまま、足元を確かめて一歩下がった。

ガレスも自分の足で後退したが、左腕を守ろうとすると身体をひねれない。

「くそ……」

「ガレス、前を向いたままでいい」

ベンが声を掛ける。

ノーゼスも背中を支え直した。

「俺たちが合わせる」

クロードは三人と木々の間に立った。

左手の剣を構えると、朝の空気の冷たさとは別の汗が手ににじむ。

「クロード、そこから前へ出すぎるな」

グレインの声が飛んだ。

「はい!」

エクリアとピアも少し離れて位置を取った。

道の中央に出たゴブリンが、棒を振り上げて走ってくる。

グレインはその正面へ踏み込み、振り下ろされた棒の外へ身体をずらした。

剣が短く光った。

ゴブリンは二、三歩も進まず地面へ倒れた。

「もう一体!」

ピアが叫ぶ。

茂みの陰にいた方が、道の端を回ってきていた。

真っ直ぐグレインへ向かわず、ベンたちが下がった方へ近づいてくる。

「こっちに来る!」

ノーゼスが声を上げた。

クロードは反射的にそちらへ一歩動いた。

ガレスたちの前を空けないよう、木の根が盛り上がったところで足を止める。

ゴブリンが棒を突き出した。

クロードは左手の剣を斜めに上げ、その棒を外側へ払おうとした。

思ったより重い衝撃が腕へ伝わる。

「っ!」

剣先が少し下がった。

それでもゴブリンはすぐには前へ出てこない。

「クロード、下がれる?」

エクリアの声がした。

「うん、少しなら!」

クロードは剣を向けたまま、根の低い方へ足を移した。

「ピア、後ろをお願い!」

「見てるよ!」

ピアがガレスたちと木立の間へ目を走らせる。

ゴブリンがもう一度、クロードのいる方へ踏み出した。

エクリアは剣を左手に持ち、空いた右手で《印》を組み始めた。

けれど、クロードがまだ魔物の正面にいる。

「クロード、もう半歩だけ横へ!」

「分かった!」

クロードが足を運ぶと、魔物との間に斜めの隙間ができた。

「《ウィンドボール》!」

放たれた風の球がゴブリンの横へ当たり、持ち上げていた腕と身体の向きを崩した。

ゴブリンは足を踏み直そうとしたが、そこへグレインが回り込んだ。

一度、剣が振られる。

ゴブリンは木の根のそばへ倒れ、動かなくなった。

「全員、そのまま!」

グレインの声に、クロードは剣を向けた姿勢を崩さなかった。

エクリアも右手を下ろし、ピアはまだ別の茂みを見ている。

グレインは二体の様子を確かめてから、道の奥へ目を向けた。

しばらく耳を澄ませたが、新しく何かが飛び出してくる気配はない。

「……よし。まず怪我の確認だ」

グレインが戻ってきた。

「クロード、腕は?」

「少しびっくりしたけど、大丈夫です」

クロードは左手を動かしてみた。

剣を持つ指に力は入る。

「棒を受けたんだな」

「はい。思ったより強くて」

「無理に打ち返さなかったのはよかった。手が痛むならすぐ言え」

「はい」

「エクリア、ピアは?」

「私は大丈夫です」

「私も」

二人が答える。

グレインはガレスたちへ向き直った。

「そっちはどうだ?」

「俺は大丈夫です」

ガレスは上着で支えられた左腕を見た。

「動かさずに済みました」

「俺たちも転んでません」

ノーゼスが言い、ベンも頷いた。

「ただ、今ので肩に力が入りました」

「なら、少し息を整えろ」

グレインは道の両側をもう一度見渡した。

「二体だけだったとは決めるな。ここには長く留まらないぞ」

「はい」

ガレスが答え、すぐにベンへ顔を向けた。

「悪いな、また肩に負担を掛けた」

「僕だって力が入ったからね」

ベンは小さく笑った。

「それより、さっきちゃんと自分で下がってくれたの、助かったよ」

「そりゃあ、俺だって歩けるところは歩くさ」

「歩けるところだけ、な」

ノーゼスが念を押す。

ガレスは言い返しかけたが、やめて笑った。

クロードは左手の剣を見た。

棒を受けた時、少しでも勢いよく踏み込んでいたら、ガレスたちの前から離れていたかもしれない。

今は追いかける相手もいない。

それでも、三人が後ろで立ち続けているのを見て、少しだけ肩の力が抜けた。

「クロード、行くぞ」

グレインが呼んだ。

「はい!」

エクリアとピアが先の道を確かめ、ベンとノーゼスはガレスの歩幅へ身体を合わせる。

グレインは六人の位置を見てから、倒れたゴブリンの方へ一度だけ目を向けた。

「離れずに進め。次に止まる場所も、歩きながら考えるぞ」

七人は木々の間に続く道へ戻った。

クロードは左手の実剣を握り直し、ガレスたちと離れすぎない位置で歩き始めた。

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