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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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足を止める場所

木立の道を進んでいる間にも、枝の隙間から差す光は少しずつ弱くなっていた。

クロードは左手の実剣を持ち、前を行くガレスたちの歩幅を見た。

道に戻ってからは足を置く場所を選びやすくなったが、木の根を越えるたびに三人の動きが遅れる。

「そっちは根が高いよ」

ピアが先から声を掛けた。

ベンが足を止め、ガレスの右腕を肩に預かったまま、少し横へ回る。

「こっちからなら通れそうかな」

「うん、それなら」

ガレスは根の低いところを見つけて、慎重に右足を出した。

ノーゼスが背中を支え直し、三人で根を越えていく。

「これで何本目だ?」

ノーゼスが息を吐いた。

「数えてたのか?」

「途中でやめた」

「だったら聞くなよ」

ガレスは笑おうとしたが、次の一歩では口を閉じて足元を見た。

少し離れて歩くグレインも、その変化を見逃さなかった。

「ガレス、まだ歩けるか?」

「歩けます」

「ベン、ノーゼスは?」

二人が顔を見合わせる。

「歩けますけど、さっきみたいに足を取られたら危ないです」

ベンが先に答えた。

ノーゼスも頷く。

「肩が、思ったよりきついです」

グレインは七人の歩いてきた道と、木立の奥を見た。

「分かった。休める場所があれば、そこで止まる」

「今日はもう歩かないんですか?」

クロードが尋ねた。

「明るいうちに先へ進みたいが、このまま夜通し歩くのは無理だ」

グレインの声は落ち着いていた。

「暗くなってから場所を探すより、今のうちに決める」

クロードは葉の間から見える空へ目を向けた。

まだ地面は見えるが、少し先の幹はもう影の中に入っている。

エクリアとピアは道の先だけでなく、脇の木々の間にも目を向け始めた。

「こっちは奥まで木が続いてるわね」

エクリアが言った。

「足元も根ばっかりだよ」

ピアは一度道へ戻り、反対側を覗いた。

「……あっち、少し開いてない?」

木々が途切れた向こうで、低い草のある地面が広がっていた。

すぐ横には丘の裾が続き、道からそれほど離れていない。

エクリアが先に数歩入り、靴の裏で地面を確かめる。

「手前は少し柔らかいけど、奥は平らそう」

「先生、見てきてもいいですか?」

ピアがグレインを振り返った。

「俺も行く。ほかは道から離れるな」

グレインは剣を持ったまま、二人とともに草の薄いところへ進んだ。

クロードはガレスたちのそばに残り、木立の奥と来た道を見比べる。

風が葉を揺らす音はするが、追ってくる足音は聞こえなかった。

しばらくしてピアが戻ってきた。

「向こうの方が固いよ。七人で座れるくらいはあると思う」

「ただ、木のすぐ下は根が出てるわ」

エクリアも続いた。

「端に近いところがよさそうね」

グレインは開けた方から木々の間を見渡し、頭上の枝にも目を向けた。

それから少し離れた場所を歩き、道へ戻れる方向を確かめた。

「ここにしよう」

ガレスが顔を上げる。

「ここで休むんですか?」

「今夜はここで過ごす。明るくなってから帰るぞ」

ベンが長く息を吐いた。

「……よかった」

その声を聞いて、ガレスが隣を見た。

「お前、そんなに疲れてたのか?」

「ガレスをずっと支えてたからね」

「俺だって歩いてただろ!」

「もちろん。それでも重かったよ」

ベンが笑うと、ノーゼスも肩を回した。

「俺も休みたい」

ガレスは二人の顔を見て、それ以上言い返さなかった。

「じゃあ、まずガレスを座らせよう」

グレインが示したのは、根の少ない平らな地面だった。

すぐ後ろに木が立っているが、幹に身体を押しつけずに座れるだけの余裕がある。

ベンとノーゼスはガレスの歩調に合わせてそこまで進んだ。

「足を曲げるぞ」

ガレスが言い、右手をベンの肩へ置いたまま、ゆっくり腰を下ろしていく。

ノーゼスが背中を支え、ベンも膝を曲げて身体を近づけた。

「左腕は大丈夫?」

「今のところ……大丈夫だ」

ガレスは地面に座り、グレインの上着で支えられた左腕を見下ろした。

動かせないままの腕は、不自然な向きも変わっていない。

グレインは剣を鞘へ収めてしゃがみ、布の位置を確かめる。

「下ろした時に響かなかったか?」

「少しだけ。でも、立ってるより楽です」

「そのまま無理に動かすな」

ガレスが頷くと、ベンはようやく肩を下げた。

ノーゼスも少し離れた地面へ腰を下ろす。

「うわ……腕が重い」

「お前の腕も怪我したのか?」

ガレスが聞いた。

「ただ疲れてるだけだよ」

ノーゼスは自分の肩をさすった。

「お前が立ったままだったら、まだ続いてた」

「悪かったな」

「別に怒ってないって」

ベンも二人のそばに座り、しばらく黙って自分の手を開いたり握ったりしていた。

クロードはその様子を見てから、剣を握る左手を少し緩めた。

みんなが足を止めた途端、自分の脚も重くなったような気がした。

グレインは再び剣を抜き、クロードたちへ声を掛けた。

「まだ座るなよ」

「先に周りを確かめておこう」

「はい」

クロードは実剣を持ったまま立ち直り、エクリアとピアの方へ歩いた。

三人は寝る場所として使えそうな地面を見比べた。

低い草が生えているところもあれば、石が浮いているところもある。

ピアがしゃがみ、小さな石を一つ脇へ移した。

「ここ、座ると当たりそう」

エクリアはもう少し奥の地面を手で触った。

「こっちは少し湿っているわ」

「じゃあ、手前の方がいいね」

クロードは土の色と草の向きを確かめ、地面に足を置いてみた。

丘の側から風が通ってくるが、低い斜面の陰に入ると少し弱くなる。

「こっちなら風が直接当たりにくいかも」

「でも、木の奥へ寄りすぎたら見えなくなるよ」

ピアが木々の間を指した。

クロードも頷いた。

昼間には見えていた道の続きが、もう幹の向こうに隠れかけている。

「ここからなら道の方も見えるわ」

エクリアが少し位置を変えて言った。

三人が歩いた場所を、グレインも順に確かめた。

「その辺を使おう。道へ出るところは空けておけ」

クロードたちは地面に落ちていた細い枝や石を脇へ寄せ、足を引っ掛けないようにした。

大きく場所を作り変えることはできないが、座る位置と通る場所くらいなら整えられる。

ピアは乾いている草の上にしゃがみ、手をついた。

「これなら、さっきの道の真ん中よりは休めそう」

「雨よけがないのが困るわね」

エクリアが空を見た。

枝の向こうにまだ空はあるが、張りかけだった布も縄もここにはない。

「布と杭、向こうに置いてきちゃったもんね」

ピアが言った。

「火を起こす道具もだ」

ノーゼスが座ったまま付け加える。

ガレスが顔を上げた。

「じゃあ、火はどうするんですか?」

グレインは木の根と周囲の草を見た。

「今は起こさない。燃やす物も、消すための準備も整っていない」

「授業の時は、火をつける前に全部揃えたものね」

エクリアが言う。

「あの時は道具を置けたけど、今日は何もないな」

ノーゼスが小さく笑った。

「道具がないからって、何も考えず火をつけるわけにはいかん」

グレインは草地の外側へ目を向けた。

「今は休める場所と、周りを見る場所を決める方が先だ」

クロードは手元にある実剣を見た。

あれほど重く感じていた荷物も、今は背中にない。

けれど、荷物の中に入れてきたものまで一緒になくなっている。

「食べるものも、持ってきた荷物の中だね」

ベンが言った。

ガレスが顔をしかめる。

「そう言われたら腹減ってきた」

「さっきまで歩くのに必死だったからな」

ノーゼスは腹を押さえて、それからガレスを見た。

「お前、ここで立ち上がって探しに行くとか言うなよ」

「言わねえよ!」

ガレスが即座に返し、少しだけ笑い声が起きた。

グレインは六人の様子を見た。

「今夜はいつもの野営とは違う。できないことを無理にやるな」

「はい」

クロードは返事をして、木立の暗くなり始めた方へ顔を向けた。

「先生、見張りはどうするんですか?」

「決めるぞ。ただし、前の遠征と同じようにはいかん」

グレインはガレスの方を見た。

「ガレスは休め。ベンとノーゼスも、まずは身体を休ませろ」

「俺たちは?」

クロードが尋ねた。

「起きている者は周囲を見る。何か聞こえても、一人で確かめに行くな」

ピアが道の方を見る。

「道から来るものと、木立の奥の両方だね」

「そうだ。見えないところまで追う必要はない」

グレインが答える。

「俺も周囲を見る。交代は休む者の状態を見て決める」

エクリアが頷き、少し離れたガレスたちへ目を向けた。

ベンは地面に座り、上を向いて首をゆっくり動かしている。

ノーゼスはまだ肩をさすっていたが、ガレスと何か言い合っていた。

さっきまで二人の肩を借りていたガレスは、今は左腕を支えたまま、こちらを見ている。

「クロード、そっちの石、まだ一つあるよ」

ピアに呼ばれ、クロードは足元を見た。

木の根のそばに小さな石が残っている。

「本当だ」

クロードは石を拾い、通り道から外へ置いた。

それから七人が休む場所を見渡す。

雨よけは立っていない。

火もついていない。

荷物を置く場所を考える必要さえなかった。

それでも、ガレスは座って身体を休められ、ベンとノーゼスも肩を下ろしている。

エクリアとピアは道に近い方から、暗くなりつつある木々を確かめていた。

グレインは少し離れて立ち、来た道の先へ目を向けている。

「ここで夜を越すんだね」

クロードが小さく言うと、エクリアが隣へ来た。

「そうね。明るくなったら、また歩かなきゃ」

「うん」

クロードは剣を持つ手を確かめ、空を見上げた。

木々の向こうに残っていた陽の光が、また少し弱くなっていた。

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