結果の先に
翌日、僕はいつもの場所でアルミと鉛を並べていた。
昨日までと同じように大きさを揃え、二つの間を狙って雷を放つ。
何度か試し、途中で置く場所も入れ替えた。
結果を『雷の記録』に書き終えてから、僕はもう一度その文字を見た。
アルミの方に多く落ちている。
地面に落ちたものもあった。だからアルミに必ず落ちるわけじゃない。
それでも昨日の鉄と比べた時と同じだった。
「……またアルミだ」
隣にいた父上が僕の手元を覗き込む。
「昨日と同じか?」
「うん。鉛よりも、アルミの方に落ちやすいみたい」
そう答えてから、僕は三枚の金属を見た。
鉄、アルミ、鉛。
最初は、金属なら雷の落ちる場所に何か違いが出るかもしれないと思った。
実際、木や石と一緒に置いた時には鉄へ落ちた。
でも金属同士でも同じじゃなかった。
昨日は鉄よりアルミ。
今日は鉛よりアルミ。
「……なんで?」
思わず口にすると、父上が僕を見る。
「何か分かったのではないのか?」
「分かったことはあるよ。でも、理由が分からない」
アルミの方に落ちやすい。
それだけなら今日の結果から言える。
けれど、僕が知りたいのはそこだけじゃない。
どうしてアルミなのか。
三枚を見比べる。
色が違う。
持った時の重さも違った。
硬さだって同じじゃない。
熱の伝わり方も違う。
そして――
「……電気」
「でんき?」
父上が聞き返した。
僕は顔を上げる。
しまった。
この世界で、その言葉がどこまで通じるのか分からない。
「ううん。ちょっと考えてただけ」
もう一度、三枚の金属を見る。
光哲だった頃、金属を扱う仕事をしていた。
だから知っている。
金属は、全部が同じ性質を持っているわけじゃない。
鉄とアルミと鉛では、重さも、硬さも、熱の伝わり方も違う。
電気の通しやすさも違う。
雷魔法が前の世界の雷と同じものなのかは分からない。
魔法なのだから、まったく別の理由で落ちる場所が決まっている可能性だってある。
だから、知っていることをそのまま答えにはできない。
でも。
「……もし」
僕は鉄を手に取った。
次に鉛を見る。
アルミは、この二つより電気を通しやすかったはずだ。
昨日は鉄よりアルミへ落ちやすかった。
今日は鉛よりアルミへ落ちやすかった。
だったら。
「父上」
「なんだ?」
「明日、もう一回やってもいい?」
父上はすぐには答えず、僕の顔と手を見た。
「何を試すつもりだ?」
僕は鉄と鉛を持ち上げる。
「今度は、これとこれ」
「鉄と鉛か」
「うん」
父上が少し首を傾げた。
「アルミを調べていたのではないのか?」
「アルミだけを調べたいんじゃないんだ」
僕は二枚を並べて置いた。
まだ雷は使わない。
ただ、鉄と鉛を見比べる。
「昨日はアルミと鉄で、アルミの方に多く落ちた。今日はアルミと鉛で、やっぱりアルミの方に多く落ちた」
「ああ」
「でも、それだけだとアルミの何が違うのか分からない」
父上は何も言わず、続きを待っている。
僕は鉄を指した。
「もし僕が考えてることが合ってるなら、鉄と鉛を並べたら……」
そこで一度言葉を止めた。
まだ試していない。
結果を見たわけでもない。
それでも今までとは違う。
次に何が起きるのか、先に考えることができる。
「鉄の方に落ちやすいと思う」
父上の眉がわずかに動いた。
「まだ試していないのにか?」
「うん」
「なぜそう思う?」
僕は答えようとして、口を閉じた。
電気の通しやすさ。
そう言ってしまえば簡単だった。
でも、この世界でそれをどう説明すればいいのか僕自身まだ分かっていない。
それに、本当にそれが理由なのかも分からない。
「……まだ、うまく説明できない」
「そうか」
父上はそれ以上聞かなかった。
僕は『雷の記録』を開き、新しい頁に書き加える。
鉄と鉛。
その下で手を止めた。
今までは試した結果を書いてきた。
でも今回は、まだ試していない。
少し考えてから、その下に続けた。
鉄の方に落ちやすいと思う。
書いた文字を見つめる。
合っているかは分からない。
明日になれば、違う結果が出るかもしれない。
それなら、それでいい。
違ったなら、僕の考えた理由が違っていたということだ。
でも、もし鉄の方に落ちたら。
昨日と今日の結果にも、何か理由があるのかもしれない。
「今日はもう終わりだ」
父上の声に、僕は頷いた。
「うん」
三枚の金属を片づけながら、もう一度鉄と鉛を見る。
明日はただ結果を見るだけじゃない。
僕の考えが合っているのかを確かめる。
それが少しだけ楽しみだった。




