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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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新たな気配

新たなラッシュボアが地面を蹴り、クロードたちへ向かってきた。

「左へ寄れ!」

グレインの声に、クロードは剣を構えたまま足を動かした。

少し離れたところには、ノーゼスの《ロックウォール》がまだ立っている。

ノーゼスも斜面側へ下がり、エクリアとピアがその後ろへ続く。

ラッシュボアは六人の前を横切るように走ったが、すぐに身体をひねって向きを変えた。

「また戻ってくるぞ!」

ガレスが叫ぶ。

「見えてる!」

ベンは剣を握り直し、ガレスとは別の方向へ離れた。

魔物の鼻先がベンを追った。

「ベン、下がって!」

ピアが声を掛ける。

ベンが斜め後ろへ跳ぶと、ラッシュボアの牙がすぐ前を通り過ぎた。

クロードはその横へ動いたものの、剣を届かせられる距離ではなかった。

「無理に追うな!」

グレインが魔物の進む先へ回り込む。

ラッシュボアが顔を上げたところへ剣を振り、すぐに横へ退いた。

魔物は数歩進んで倒れ、草を蹴った脚もやがて動かなくなった。

ガレスが荒い息を吐いた。

「……今ので何体目だ?」

「数えてる余裕なんてなかったよ」

ベンは返事をしながら、汗で滑りそうになった剣の柄を握り直した。

クロードも右腕を軽く動かした。

肩から腕にかけて重さが残っている。

剣を振るう回数が増えるほど、最初と同じようには動かしにくくなっていた。

それでも、周囲を見ないわけにはいかない。

「まだ奥にいるわ」

エクリアが木立を指した。

枝の間から、もう一体のラッシュボアが姿を現した。

少し離れたところにも茶色い背中が見える。

「こっちまで下がってきたのに……」

ノーゼスが小さく漏らした。

「まだ下がるぞ。まとまって動け」

グレインは六人の位置を確かめながら、斜面の開けた方を示した。

クロードは一歩下がって、途中まで張りかけた雨よけの布を見た。

その近くには、下ろした荷物も残っている。

取りに戻るどころか、近づくこともできない。

新たなラッシュボアが草地へ出てきた。

ガレスが剣を構え直す。

だが、魔物はすぐには走り出さなかった。

鼻先を上げ、木立の奥へ顔を向けた。

「……あれ?」

ピアが声を漏らす。

もう一体も同じ方向を見ている。

さっきまで六人へ向かっていた魔物たちが、立ち止まって何かをうかがっていた。

「どうしたんだ?」

ノーゼスが尋ねるより早く、木立の奥で枝の折れる音がした。

乾いた音が一度響き、少し間を置いてまた続いた。

クロードは剣を握ったまま目を凝らした。

木の陰が重なって、奥までは見えない。

けれど、そこを何かが動いている。

「全員、こっちへ」

グレインの声が低くなった。

六人が寄ると、グレインは木立を見据えたまま前へ出る。

ラッシュボアの一体が急に身体をひるがえし、来た方向とは別の茂みへ駆け込んだ。

続いて、もう一体も走り始める。

「逃げてる……?」

ベンが言った。

だが、残る一体はその場で向きを変え損ね、斜面へ向かって駆け出した。

「こっち来た!」

ガレスが剣を持ち上げる。

「正面に立つな!」

グレインが声を掛けると、六人は左右へ散った。

ラッシュボアはその間を駆け抜け、振り返りもせず草地の端へ走っていった。

「追ってこないのか?」

ノーゼスがその背中を見送った。

「分からない。でも、あっちを気にしてたよね」

クロードは木立へ視線を戻した。

それまで聞こえていたラッシュボアの荒い鼻息が遠ざかる。

代わりに、重いものが地面を踏む音が近づいてきた。

一歩。

間を置いて、もう一歩。

木立の低い枝が揺れた。

クロードは何が出てくるのかと目を凝らした。

茂みの向こうに、褐色の身体が見えた。

最初は大きなラッシュボアかと思った。

けれど、地面についている脚の数が違う。

二本の太い後脚で身体を支え、前を向いた頭が枝の間から現れた。

長い尾が後ろの草を払う。

「……竜?」

エクリアが息を呑んだ。

クロードも思わず剣を握り直す。

本で見た恐竜を思わせる姿だった。

ただ、絵の中にいたものとは違い、目の前の身体は呼吸に合わせて動いている。

「ブラウンドラゴンだ」

グレインが言った。

ガレスがグレインの方を見る。

「先生、知ってるんですか?」

「何度も相手にしたことがある。だが、こいつは……」

グレインは言葉を切り、竜の胸元へ目を向けた。

褐色の身体には、胸を大きく横切る傷があった。

古い傷に見えたが、周囲の皮膚まで大きく歪んでいる。

グレインは剣を構え直した。

「全員、俺より前へ出るな」

その声には、先ほどよりも強い警戒が混じっていた。

「はい!」

六人は返事をし、斜面の方へ下がる。

クロードは竜から目を離せなかった。

ブラウンドラゴンはすぐにこちらへ向かってこない。

倒れたラッシュボアの方へ頭を下げ、鼻先を動かした。

血のついた草へ顔を近づけてから、ゆっくりと頭を上げる。

「……倒した魔物の方を見てる?」

ピアが小さく言った。

「そうみたい」

クロードが答えると、グレインが短く指示を出した。

「話すのは後だ。さらに下がれ」

ベンが周囲を見回した。

「先生、向こうにまだラッシュボアがいます!」

木立の端には、逃げ遅れた一体が残っていた。

魔物は竜を見たかと思うと、六人の方へも顔を向け、落ち着きなく脚を踏み替えている。

「そいつからも目を離すな。近づいてきたら知らせろ」

グレインはそう言って、竜と六人の間へ位置を移した。

エクリアがクロードの隣へ寄る。

「さっきのと、全然違うわね」

「うん」

クロードは頷いたが、何が違うのかを落ち着いて考える余裕はなかった。

ラッシュボアの突進とは違う、重い足音がまた響く。

ブラウンドラゴンが一歩踏み出した。

グレインもそれに合わせて位置を変える。

その瞬間、足元の土が小さく盛り上がった。

「……ん?」

ノーゼスが地面を見る。

次の瞬間、グレインの進もうとしていた場所から土がせり上がった。

草を押しのけ、土の塊が壁のように立ち上がる。

「下がれ!」

グレインはすぐに後方へ跳んだ。

盛り上がった土が剣先の前を塞ぎ、細かな土くれが足元へ落ちる。

クロードも反射的に身を引いた。

今、誰かが《印》を組んだのだろうか。

隣のノーゼスは剣を持ったままだった。

エクリアもピアも、目の前の土壁を見ている。

「ノーゼスが出したんじゃ……ないよね?」

ベンが聞く。

「俺じゃない!」

ノーゼスが答える。

グレインは壁の向こうにいるブラウンドラゴンを見据えた。

「……Giftか?」

誰もすぐには答えなかった。

ラッシュボアたちは、魔法もGiftも使わなかった。

けれど、目の前の竜は何の前触れもなく地面を持ち上げた。

グレインが剣を握る手に力を込める。

「まさか、黄札か……?」


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