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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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別々の道へ

遠征の日が決まってからも、授業はいつもどおりに続いていた。

その合間に持ち物や集合場所の説明があり、クロードたちは前の遠征で使った道具を一つずつ確かめてきた。

そして迎えた出発の朝。

王立学園の正門へ続く道には、荷物を背負った生徒たちが集まり始めていた。

クロードが近づくと、先に来ていたガレスが片手を上げた。

「クロード! こっちだ!」

「おはよう、ガレス」

「おはよう! 今日は坂があるんだよな!」

「丘陵地だから、平らな道ばかりじゃないだろうね」

ガレスは笑いながら荷物を揺らした。

その拍子に肩の紐が少しずれ、ベンが横から指さした。

「それ、歩く前に直した方がいいよ」

「え? ああ、これか」

ガレスが肩を動かして紐を引き直す。

「これでどうだ?」

「僕に聞くより、自分で歩いてみたら?」

「確かに!」

ガレスはその場で数歩動き、今度は満足そうに頷いた。

少し離れたところでは、ノーゼスが腰の剣の位置を確かめていた。

「前の時は、歩いてるうちに何度か当たったんだよな」

「だから、今日は最初から気をつけてるの?」

ピアが尋ねると、ノーゼスは頷いた。

「後になって直すの、面倒だったから」

「でも、歩いてからじゃないと分からないところもありそうね」

エクリアは自分の荷物を少し持ち上げ、背中へ戻した。

クロードも鞘に収めた実剣を見下ろす。

学園の中で持つ時とは違い、今日もこれを腰に下げたまま歩くことになる。

少し身体を動かしてみると、剣は足に当たらなかった。

「クロードは大丈夫そう?」

「うん。今のところは」

ピアが笑った。

「じゃあ、歩いてからもう一回確かめようね」

「そうするよ」


◇


正門の近くには、ほかの二班も集まっていた。

前の遠征では18人の荷物をまとめて確認したが、今日は教師がそれぞれ自分の班の六人を見ている。

ラディスの前ではザナトスがカイルと話していた。

セリアナの班では、ミナとレクシアが並んで荷物の紐を確かめている。

「おい、クロード!」

ザナトスが気づいて手を振った。

「今日はそっち、ずっと坂道か?」

「ずっとかどうかは、まだ分からないよ」

「俺たちは川沿いだっていうし、そっちとは全然違うな」

「帰ってきたら、どんなところだったか教えてよ」

「もちろん。お前もな!」

カイルが横から口を挟んだ。

「まだ行ってもないのに、話すこと決めてるのか」

「帰ってからの話だろ!」

「それならいいけど」

カイルが笑うと、ザナトスも笑い返した。

「そっちも、気をつけてね」

エクリアが言うと、ザナトスは軽く片手を上げた。

「そっちこそ!」

そこへラディスの声が掛かった。

「ザナトス、こっちへ戻れ。もう一度人数を確認する」

「はい!」

ザナトスが駆け戻ると、ガレスがそれを見て笑った。

「俺も、あっちがどんなところか気になるな」

「まず自分たちの行き先でしょ」

ベンに返され、ガレスは首をすくめた。

グレインも六人が揃ったのを確かめ、荷物と剣を順に見た。

「歩いている間に緩んだら、そのままにするな。止まって直せ」

「はい!」

ガレスが勢いよく返事をする。

グレインはほかの五人にも目を向けた。

全員が頷くと、教師は正門の方へ向き直った。

「行くぞ」

少し遅れて、ラディスとセリアナの班も動き始めた。

三班は互いに声を掛け合いながら、学園の正門を出ていった。


◇


王都へ入るまでは、三班とも同じ道を進んだ。

ただし、前のように18人で一つの長い列を作るのではなく、班ごとにまとまっている。

王都の通りに入ると、周囲には人や荷車が増えた。

グレインは道を渡る前に六人を止め、行き交う荷車が通り過ぎるのを待った。

「今のうちに、前と後ろを確かめろ」

クロードは振り返った。

すぐ後ろにはピアがいて、その少し先にベンとガレスが並んでいる。

ノーゼスとエクリアも、道の向こうを見ながら足を止めていた。

以前の遠征なら、もっと後ろに別の班が続いていた。

今は振り返っても、そこに見えるのは自分たちの六人だけだ。

「クロード、行けるぞ」

ノーゼスに呼ばれ、クロードは前へ向き直った。

「うん」

しばらく進んだところで、道が分かれた。

ラディスが自分の班へ声を掛ける。

「俺たちは、ここから別の道だ」

「もう別れるのか!」

ガレスが言うと、ザナトスが振り返った。

「じゃあな、クロード!」

「うん。また学園で!」

「川の話、忘れんなよ!」

「ザナトスの方こそ!」

ラディス班の六人は教師について道を曲がっていった。

カイルが最後に一度だけ手を振り、人の流れの向こうへ姿を消した。

セリアナ班とも、そのあと別の道で別れることになった。

「みんな、気をつけてね」

ピアが言うと、ミナが笑顔で頷いた。

「うん。帰ったら話そうね」

レクシアも手を上げ、セリアナと五人の仲間について歩き出した。

クロードは遠ざかる背中を見送った。

さっきまで近くにいた二つの班は、もう別の道を進んでいる。

「さて、俺たちも行くぞ」

グレインの声で、六人は再び歩き始めた。


◇


王都の建物が少なくなっても、すぐに丘が見えるわけではなかった。

クロードたちは街道を歩き、途中で一度休憩を取った。

荷物を下ろすと、ノーゼスが大きく肩を回す。

「やっぱり、背負ったまま歩くと重いな」

「前も言ってたね」

ベンが笑った。

「前に言ったって、軽くなるわけじゃないだろ」

「それはそうだね」

ピアは水を飲んでから、自分の荷物の留め具を確かめていた。

「私、さっき少し緩んでたみたい」

「今、直せそう?」

クロードが尋ねる。

「うん。もう直したよ」

「よかった」

少し離れたところで、グレインは街道の先と周囲を見ていた。

ガレスは水を飲み終えると、立ち上がって道の先を眺めた。

「丘って、どのへんからなんだろうな」

「まだ平らだものね」

エクリアも同じ方へ視線を向ける。

「でも、ずっとこの道を進むわけじゃないんでしょう?」

その言葉を聞いたグレインが振り返った。

「もう少し先だ。そこからは周りを見て歩いてもらう」

「道を探すんですか?」

ノーゼスが聞く。

「いくつか通れるところがある。どこがいいかは、見て決めろ」

六人は顔を見合わせた。

「じゃあ、坂が急だったら別の道を探せばいいんだな」

ガレスが言う。

「急じゃなくても、歩きにくいところはあるかもしれないわよ」

エクリアが返した。

「確かに。石とか木の根とかね」

ピアも言う。

クロードは、足元の土とその先へ続く道を見比べた。

今は歩きやすくても、同じ地面がずっと続くとは限らない。

休憩が終わると、六人はまた荷物を背負った。


◇


それから歩くうちに、街道の先の景色が少しずつ変わり始めた。

緩やかな高まりが続き、その向こうには木々が集まっている。

道の脇にも草が増え、平らに見えた地面には小さな起伏があった。

「見えてきた!」

ガレスが前方を指さした。

「あれが行き先かな」

ピアも顔を上げる。

「この先が、今回の遠征先だ」

グレインはそう言って、六人をいったん止めた。

「ここからは、どこを通るか考えながら進め」

クロードは前方を見渡した。

まっすぐ丘へ向かう道には、少し急な上りがある。

その横には、木立の近くを回り込むような道も見えた。

「上の方が見晴らしはよさそうだな」

ガレスが言った。

「でも、荷物を背負ってあそこを上るの?」

ベンは坂の傾きを見ている。

「こっちの道なら、上り方は緩そうね」

エクリアが木立の方を指した。

「ただ、木が多いと先は見えにくいかもしれない」

ノーゼスが続ける。

「それなら、近くまで行って確かめたいな」

ピアが言うと、ガレスが頷いた。

「じゃあ、ちょっと見に行くか!」

「待て」

グレインの声で、ガレスが足を止めた。

「一人で先へ行くな。六人で決めろ」

「あっ、はい!」

ガレスは戻ってきて、少し照れたように笑った。

「つい、先に行こうとしちゃった」

「それ、前にも聞いた気がするよ」

ベンが笑う。

クロードは二つの道をもう一度見た。

遠くからでは分からないところもある。

だからこそ、いきなり決めて進むより、まず近くまで行ってみたい。

「木立の手前まで、みんなで行ってみない?」

クロードが言うと、エクリアが頷いた。

「うん。そこからなら、道の先ももう少し見えるかもしれないわ」

「俺もそれでいい」

ノーゼスが答え、ベンとピアも頷いた。

ガレスは今度こそ六人が動くのを待っている。

グレインは一度、道の先を確かめてから短く頷いた。

「行ってみろ」

クロードは荷物の位置を直し、五人と一緒に歩き出した。

少し前を進むガレスの声が、緩やかな坂道に響いた。

「よし、今度はちゃんとみんなで行くぞ!」

「それを最初からやってよ」

ベンの返事に、六人の笑い声が重なった。

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