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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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戻すところまで

短い休憩の終わりを告げる鐘が鳴り、グレイン班の六人は雨よけの前へ集まった。

布は支柱に支えられたままで、両側へ伸びる縄と杭も動かしていない。

道具袋も雨よけの中に置いたままだ。

「続けるぞ」

グレインの声に、六人が頷く。

ガレスは雨よけを見上げた。

「やっぱり、全部ほどいた方が早いかな」

「その前に、何を直すのか決めましょう」

エクリアが入口の縄を指す。

「全部ほどいても、また同じ場所に立てたら同じことになるわ」

「中が狭いのと、道が塞がってるのは別の問題だよね」

ベンが道具袋と縄を見比べた。

「荷物を動かしても、この縄は残る」

ピアが入口の前へ立つ。

「縄を動かしても、中が広くなるわけじゃないよ」

ノーゼスは雨よけの外側を一周した。

「支柱を少し広げれば、中は広くなるかもしれない」

「でも、布が足りる?」

クロードが布の端を見る。

「やってみないと分からないな」

ノーゼスが支柱の根元へしゃがんだ。

六人は、まず布の下を広げるところから始めることにした。

縄をすべて外すのではなく、片側ずつ緩めながら支柱の位置を動かす。

「こっちを先に緩めるぞ」

ガレスが縄を持つ。

「待って」

エクリアが反対側へ回った。

「そっちだけ緩めたら、支柱がこっちへ倒れるわ」

クロードとピアが支柱を左右から支える。

ベンが縄の結ばれている位置を確かめ、少しずつ力を抜いた。

「今なら動かせるよ」

ノーゼスが支柱の根元を持ち上げる。

6人が入った時の広さを思い出しながら、元の位置から少し外側へ動かした。

「そこまで広げたら、布が張れないかもしれない」

エクリアが布の端を持ち上げる。

ノーゼスは支柱を少しだけ戻した。

「この辺ならどうだ?」

クロードは反対側の支柱との間へ立つ。

両腕を広げても、先ほどより余裕がある。

「さっきより広いよ」

「じゃあ、反対も同じくらい動かそう」

ピアがもう一方の支柱へ向かった。

六人は反対側の縄も緩め、支柱の間を広げていく。

片方を動かすと、布の中央が大きく垂れた。

「緩くなったな」

ガレスが布の下から見上げる。

「縄を張れば戻るか?」

「一気に引かないで」

エクリアが縄を持った。

「支柱を見ながら、少しずつよ」

クロードとベンが左右の縄を持ち、ノーゼスとピアが支柱の傾きを見る。

ガレスは布の中央から全体を確かめた。

「右が少し低い」

「こっち?」

クロードが縄を少し引く。

「もう少し」

「今は?」

「それで止めて」

布の垂れが減り、二本の支柱も大きく傾かずに立った。

次に、六人は入口を横切っていた縄を動かすことにした。

杭を抜き、出口から離れた場所へ打ち直す。

ベンが杭を持って地面を確かめた。

「ここなら根もなさそうだよ」

「道の外にも出てるわね」

エクリアが入口からまっすぐ歩いて確かめる。

ピアが木槌を持ち、杭の頭を打ち始めた。

乾いた音が地面へ響く。

杭が土へ入ると、クロードが縄を伸ばした。

「ここまで張ると、布が引っ張られすぎるかな」

ノーゼスが支柱を見る。

「少し近づけよう」

ピアが打ち込んだ杭を抜き、わずかに位置を変える。

今度は出口を塞がず、布も大きく歪まない場所へ縄を張ることができた。

道具袋は、雨よけの中央から布の端へ移した。

敷物を広げ直し、六人がもう一度中へ入る。

「さっきよりは広いな」

ガレスが腰を下ろす。

ノーゼスもその隣へ座った。

クロードとエクリア、ベン、ピアまで入っても、身体が重なることはなかった。

「道具袋を置いても、ここなら通れそう」

ベンが中央の空いた場所へ足を伸ばす。

ピアは入口へ向かい、そのまま外へ出た。

「こっちは大丈夫だよ」

「反対も見よう」

クロードがもう一方の出口へ向かう。

布の下から外へ出ようとすると、斜めに伸びた縄が足元へ近づいた。

跨げない高さではない。

けれど、足を大きく上げなければならなかった。

「こっちはまだ狭いね」

クロードが外から縄を見る。

ガレスも続いて出ようとした。

「昼なら見えるから通れるけどな」

グレインが少し離れた場所から声を掛けた。

「暗くても同じように出られるか?」

ガレスは上げかけた足を下ろした。

六人が入口の縄へ目を向ける。

夜なら、縄の位置は今ほどはっきり見えない。

急いで外へ出る時に、毎回大きく跨げるとも限らなかった。

「通れるだけじゃ駄目ってことか」

ノーゼスが縄の先をたどる。

「もう少し外へ動かせない?」

ピアが杭の先にある地面を指した。

「そのまま外へ動かすと、布が横へ引かれそうね」

エクリアが支柱と縄の角度を見る。

クロードも雨よけの外側へ回った。

「縄を伸ばす方向を少し変えたらどうかな」

「こっちへずらすのか?」

ガレスが杭を持ち上げる。

「その方が出口から離れる」

ベンが入口から歩いて確かめた。

「でも、木の根に近くなるよ」

六人は杭を打てそうな場所を探しながら、少しずつ位置を変えた。

根を避け、通り道からも外れ、布が緩みすぎない場所を選ぶ。

ピアとベンが杭を打つ間、クロードとエクリアが縄を支えた。

ノーゼスとガレスは支柱が傾かないように布の両側を見る。

縄を張り直すと、出口の前には人が通れる幅が残った。

「今度はどうだ?」

ガレスが雨よけの中へ戻る。

道具袋を布の端へ沿わせ、六人がもう一度中へ入った。

「俺が横になってみる」

ガレスが敷物の上へ身体を伸ばす。

ノーゼスがその横を通り、道具袋のそばへ移動した。

「通れるな」

「反対側も大丈夫そう」

エクリアがガレスの足元を回り、もう一方の入口へ向かう。

グレインが六人を見渡した。

「そのまま二手に分かれて外へ出ろ」

クロード、ノーゼス、ピアが片方へ向かう。

エクリア、ガレス、ベンは反対側へ進んだ。

急いではいるが、競争ではない。

前の者が外へ出るまで、後ろの者はぶつからない距離を取る。

クロードは入口を通り、縄と杭の間へ足を入れずに外へ出た。

ノーゼスとピアも続く。

反対側からも、エクリアたちが順番に姿を見せた。

誰も縄を踏まず、杭へ足を取られることもなかった。

「最初よりずっと通りやすいね」

ピアが入口を振り返る。

「中も狭くなかった」

ベンが道具袋の位置を見る。

グレインは雨よけの周りを一周した。

支柱を見て、縄の張りを確かめ、最後に二つの入口へ立つ。

「最初よりは使える形になったな」

六人の表情が少し緩んだ。

「ただし、これで何日でも過ごせると言っているわけじゃない」

「今日は、自分たちで見つけた問題を直せたところまでだ」

「はい」

クロードたちは頷いた。

近くの区画では、ラディス班とセリアナ班も雨よけを直している。

縄を張り直す者や、敷物の位置を変える者の姿が見えた。

三班すべての確認が終わると、グレインが撤収を告げた。

「使った道具をすべて戻せ」

「片づけが終わった班から、使った場所も確認しろ」

六人は最初に道具袋を外へ出し、敷物を畳み始めた。

布の下から物がなくなると、雨よけの中が急に広く見える。

クロードとベンが縄を緩め、ピアとエクリアが杭を抜く。

ガレスとノーゼスは支柱が急に倒れないように両側から支えた。

「こっち、抜けたよ」

ピアが杭を持ち上げる。

「じゃあ、支柱を倒すぞ」

ガレスとノーゼスがゆっくりと支柱を地面へ下ろした。

支えを失った布も、クロードたちの手元へ降りてくる。

布を地面へ広げ、土や草が付いているところを払う。

エクリアとベンが端を合わせ、全員で少しずつ折り畳んだ。

「最初より畳む方が難しくない?」

ガレスが布の端を持ちながら言う。

「最初は畳まれたものを持ってきただけだからでしょ」

エクリアが笑う。

縄は絡まないように輪へまとめ、杭と木槌も同じ場所へ揃えた。

クロードは道具袋を開き、抜いた杭を一つずつ中へ入れていく。

「これで全部かな」

「こっちに一本あるよ」

ピアが草のそばに置かれていた杭を拾った。

「危なかった」

ベンが袋の中をもう一度確かめる。

支柱、布、敷物、縄、杭、木槌が一式揃っている。

道具をまとめ終えたあと、六人は雨よけを立てていた場所へ戻った。

地面には、杭を抜いた穴がいくつも残っている。

「ここを戻すんだよな」

ノーゼスが一番近い穴へ土を寄せた。

足で軽く踏み、周りと同じ高さへ整える。

ガレスとベンも別の穴を埋め始めた。

クロードは完成した雨よけの周りを見たあと、最初に杭を打ち直した場所を思い出した。

少し離れたところへ歩くと、小さな穴が一つ残っている。

「こっちにもある」

クロードの声に、エクリアとピアが近づいた。

「最初に場所を変えた時の穴ね」

エクリアが土を戻す。

ピアはその周りを見ながら、ほかにも跡がないか探した。

「こっちも少しへこんでるよ」

「支柱を最初に置いたところかな」

クロードが足元を見る。

六人は区画の中を歩き、杭穴や踏み崩した場所を一つずつ確認していった。

土を戻し、浮いていた石を元の位置へ寄せ、草の間に道具が残っていないかを見る。

道具を置いていた場所にも、縄や杭は残っていなかった。

最後にグレインが区画へ入ってくる。

「終わったか?」

「はい」

ガレスが答える。

「道具は?」

「全部揃っています」

ベンが袋を示した。

「場所は?」

六人はもう一度、自分たちが使った区画を見渡した。

クロードは最初の杭穴があった場所まで歩き、土が戻っていることを確かめる。

ノーゼスは木の根の周りを見た。

エクリアとピアは入口として使った場所を歩き、足を取られるものがないか確認する。

ガレスとベンも、道具を運んだ道の端まで目を向けた。

「大丈夫です」

クロードが答えると、グレインは短く頷いた。

「なら、道具を戻せ」

六人は布と支柱の束、道具袋、敷物、木槌を分けて持った。

来た時と同じように、持ちにくいものは二人で支える。

ほかの二班も撤収を終え、それぞれの道具を運び始めていた。

クロードは歩き出す前に、雨よけがあった場所を振り返った。

そこには、もう布も支柱も縄もない。

木立と、その間に広がる地面があるだけだった。

授業が始まる前と、ほとんど同じように見える。

けれど、クロードには支柱を立てた場所も、邪魔になった縄の向きも、打ち直した杭の跡も分かっていた。

雨よけを立てた時だけが、野営の練習ではない。

六人で使えるように直し、すべて片づけ、使った地面を返すところまで続いていた。

クロードは元へ戻った地面から目を離し、仲間たちと一緒に道具を運び始めた。

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