↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』  作者: 黎明の星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/22

同じ結果、違う結果

翌朝、クロードは机の上に開いた『雷の記録』を見つめていた。

昨日の最後に書いた一文が、最初に目に入る。

『次は、木と金属を同じ条件でもう一度試す』

木と金属を並べたとき、雷は金属に当たった。

石と金属に変えても、やはり金属に当たった。

二回続けて同じ結果が出たのは初めてだったが、それだけで金属が雷を引き寄せると決めることはできない。たまたま二回続いただけかもしれない。

だから今日は、昨日と同じ条件でもう一度試す。

クロードは記録を閉じると、ガルディオとともにいつもの場所へ向かった。

用意したのは昨日と同じ乾いた木と金属だった。置く位置も間隔もできるだけ昨日と同じにし、ガルディオが金属を置いてから十分に離れる。

クロードは二つの間へ手を向けた。

狙うのは、どちらでもない。

昨日と同じように、その間だ。

指で印を作り、魔力を流す。

ぱちん、と乾いた音がした。

白い光が走る。

雷は木には向かわず、金属へ当たった。

「……当たった」

クロードは思わず呟いた。

昨日と同じだった。

木と金属を置き、同じくらいの距離から同じように雷を使った。そして結果も同じだった。

これで三回。

金属があるとき、雷は三回続けて金属に当たった。

偶然ではない、と言いたくなる。

けれど、まだ三回だ。

クロードは金属を見つめながら、以前、乾いた枝までの距離を変えて試したときのことを思い出した。

雷は近くても遠くても枝には当たらなかった。だから距離が関係しているのかどうかは、まだ分からないままになっている。

もし金属が雷の行き先に関係しているなら、距離を変えても同じように金属へ向かうのだろうか。

「父上」

「なんだ」

「今度は、少し近くから試してもいいですか」

ガルディオは木と金属、それからクロードの立っている位置を順に見た。

「他は変えないのか」

「はい。距離だけ変えます」

「分かった」

ガルディオが金属に触れない位置まで下がる。

クロードは先ほどより前へ出た。

木と金属の位置はそのまま。

魔力量も、できるだけ変えない。

変えるのは距離だけだ。

もう一度、二つの間へ手を向ける。

印を作り、魔力を流した。

ぱちん。

雷が走った。

今度も、金属に当たった。

「また……」

クロードは金属を見る。

昨日は、木と金属を置いたときに金属へ当たり、石と金属に変えても同じだった。

そして今日、昨日と同じ木と金属で試しても金属に当たった。距離を近くした今も、やはり金属だった。

金属が雷の行き先に何か関係している。

その可能性は、昨日より高くなったように思える。

けれど、近くしたときにも当たっただけでは、距離が関係しているかどうかは分からない。

「父上。次は遠くしてみたいです」

「ああ」

ガルディオは短く答えたあと、クロードの手を見た。

「痛みは」

「ありません」

「痺れは」

「ないです」

「熱は」

「大丈夫です」

ガルディオは頷いた。

「少し休め」

「はい」

クロードはその場に腰を下ろした。

早く続きを試したい気持ちはある。

けれど、急ぐ必要はない。

結果は逃げない。

昨日、父に言われた言葉を思い出しながら、クロードは木と金属を眺めた。

近くても金属に当たった。

なら、遠くしたらどうなるのか。

同じように当たるなら、距離を変えても金属へ向かう可能性がある。

当たらなければ、それだけで距離が原因とは言えない。それでも、新しく考える材料にはなる。

十分に休んでから、クロードは立ち上がった。

今度は最初よりも後ろへ下がる。

木と金属は動かさない。

「ここからにします」

ガルディオが距離を確かめる。

「ああ」

クロードは二つの間へ手を向けた。

三回目。

印を作る。

魔力を流す。

ぱちん、と音がした。

白い光が走り――

地面に落ちた。

「……あれ?」

金属には当たらなかった。

木にも当たっていない。

雷が落ちた場所を見つめてから、クロードは金属へ視線を戻した。

これまでとは違う。

昨日から続けて、金属があるときには雷が四回続けて金属へ当たっていた。

けれど、今は当たらなかった。

金属があれば必ず当たるわけではないのか。

それとも、遠くしたことが関係しているのか。

二つの可能性が同時に浮かぶ。

今の一回だけでは、どちらなのか分からない。

もう一度、同じ距離から試したい。

さらに何度か繰り返せば、何か見えてくるかもしれない。

「父上、もう一回――」

「今日は三回だ」

言いかけたところで止められ、クロードは口を閉じた。

「……はい」

もっと試したい。

けれど三回までという約束で始めたのは自分だ。

クロードが木と金属を見つめていると、ガルディオが近づいてきた。

「手は」

「大丈夫です」

「痺れは」

「ありません」

「熱は」

「ないです」

「疲れは」

クロードは少し考えてから、自分の身体を確かめた。

「少しだけ疲れた気はします。でも、変な感じはありません」

ガルディオはクロードの顔と手をしばらく見てから頷いた。

「明日からは、五回までにする」

「五回?」

思わず聞き返した。

これまで父は、一日に三回までと言っていた。

「いいんですか」

「ああ。ただし、五回使えという意味ではない」

ガルディオはいつもの調子で続ける。

「雷を使ったあとの手や身体の状態、疲れ方も見ていた。最初は何が起こるか分からなかった。だから三回にした」

クロードは自分の手を見る。

父が見ていたのは、雷の行き先だけではなかった。

自分が雷を使うたび、痛みや痺れ、熱、疲れがないかを確かめていた。

自分が雷を調べている間、父は自分を見ていたのだ。

「今の使い方なら、少し増やしてもいいと判断した。ただし、一回ごとに休め。身体の状態も確認しろ」

「はい」

「痛みでも痺れでも熱でも、何かおかしいと思ったらその日は終わりだ」

「分かりました」

「五回使えるからといって、必ず五回使う必要もない」

三回という数字そのものが、安全だと最初から分かっていたわけではなかった。

何が起こるか分からないから少なく始め、様子を見ていた。

そして今までの結果を見て、父は少しだけ範囲を広げた。

それも、絶対に安全だと決まったわけではない。

今のところ大きな異常が見つかっていないから、次へ進んでみるだけだ。

「無茶をしないなら、試せることは試せばいい」

ガルディオが言った。

クロードは頷いた。

「はい」

部屋へ戻ると、クロードはすぐに『雷の記録』を開いた。

今日の結果を順番に書いていく。

『昨日と同じ条件――金属に当たった』

『近くした――金属に当たった』

『遠くした――金属には当たらなかった』

その下に、少し考えてから続ける。

『金属が雷の行き先に関係している可能性は高くなった』

そして、もう一つ。

『金属には必ず当たるわけではないのか、距離が関係したのかは、まだ分からない』

クロードは最後の一文をしばらく見つめた。

遠くした一回だけでは足りない。

次に必要なのは、別の条件を増やすことではない。

同じ条件で、何度か繰り返すことだ。

明日からは最大で五回まで試せる。

だからといって、五つの違うことを試す必要はない。

むしろ増えた回数は、同じことを繰り返すために使った方がいい。

クロードは次の頁に書いた。

『次は、遠くした木と金属で、同じ条件を何度か試す』

筆を置く。

同じ結果が続いた。

条件を変えたら、違う結果が出た。

だからこそ、また確かめることが増えた。

分からないことは、まだ減りそうになかった。

けれどクロードには、それが少しも嫌ではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。