この6人で
それから次に戦闘実践の授業があった日、クロードたち18人は第2運動場へ集まっていた。
待っていたのは、見覚えのない3人の教師だった。
中央に立っていた男性教師が18人を見渡す。
「グレイン・バルフォードだ」
隣の男性教師も続く。
「ラディス・クルゼイン」
最後に女性教師が一歩前へ出た。
「セリアナ・ヴェルクスです」
3人の名前を聞き終えると、グレインがもう一度口を開いた。
「3年から、戦闘実践の進め方が少し変わる」
クロードは隣にいるノーゼスを見る。
ノーゼスも同じように前を見ていた。
「ここにいる18人を、6人ずつ3つのチームに分ける」
少しだけ声が上がった。
「その6人は、5年を終えるまで同じだ」
今度はさっきより大きくざわめく。
「3年間ずっと?」
ガレスが聞いた。
「そうだ」
グレインは短く答える。
「担当する教師も変わらない」
グレインが自分たち3人を示す。
「1人の教師が1つのチームを、3年から5年まで見る」
クロードは3人の教師を順番に見た。
これまでの戦闘実践では、組む相手も先生も何度も変わっていた。
今度は同じ6人と同じ先生で進んでいくらしい。
その時、ザナトスが手を上げた。
「先生」
グレインがそちらを見る。
「俺、クロードとは別のチームにしてください」
クロードは思わずザナトスを見た。
「なんで?」
「同じチームだったら競えないだろ」
ザナトスは当然のように答えた。
ノーゼスが吹き出す。
「そこまで言うか?」
「当たり前だろ」
エクリアも小さく笑った。
「まだ続いてるのね」
「続くに決まってるだろ」
グレインはしばらくザナトスを見たあと、手元の紙へ目を落とした。
「心配しなくても、別だ」
「よし」
ザナトスがすぐに笑う。
「そこ喜ぶところなんだ」
クロードが言うと、ザナトスは胸を張った。
「じゃあ、発表する」
グレインが名前を読み上げていく。
グレインが担当するのは、
クロード・アインハルト
ノーゼス・ダグドラスタ
エクリア・ファインザード
ガレス・ヴァンデル
ベン・ジャスター
ピア・マールコ
ラディスが担当するのは、
ザナトス・アルマイナ
カイル・ノルディア
マミヤ・シーナ
ラン・シャーサー
ヤンナ・チャウン
トルト・オーコルー
セリアナが担当するのは、
ナーン・チャッティ
ミナ・シーズルノ
タンガ・ロバース
ミズー・キレーナー
レクシア・オルフェリア
リーゼ・シュトラール
名前を呼ばれた生徒たちが、それぞれ担当教師の近くへ分かれていく。
クロードがグレインの方へ歩くと、ノーゼスも隣へ来た。
「結局また一緒だな」
「嫌なの?」
「なんでそうなるんだよ」
エクリアも後ろから追いつく。
「3人だけじゃないわよ」
ガレス、ベン、ピアもこちらへ集まってくる。
クロードは6人を見回した。
いつも一緒にいる3人はいる。
けれど、この6人だけで組むのは初めてだった。
全員が分かれ終わると、グレインがもう一つ説明を始めた。
「後期には野外実習がある」
クロードたちが前を見る。
「学園の外で動く以上、各チームには回復を担える者が必要になる」
グレインの視線がベンへ向く。
続いて、隣のチームにいるヤンナを見る。
「ベンとヤンナは光属性だな」
2人が頷いた。
「後期までに、回復魔法も扱えるよう練習してもらう」
ベンが少しだけ目を丸くした。
「僕が回復を?」
「回復だけをやれという意味じゃない」
グレインが答える。
「戦う時は、その時に必要なことをすればいい」
ベンはもう一度頷いた。
少し離れたところでは、ヤンナもラディスの話を聞いている。
「私のチームは、回復が必要な時は私が担当します」
セリアナが自分の6人へ言った。
光属性の生徒がいないチームだからだ。
説明と移動を終えても、授業はまだ始まったばかりだった。
◇
3つのチームは、第2運動場の中でそれぞれ少し離れた場所へ移った。
クロードたち6人の前にはグレインが立っている。
「いきなり役割は決めない」
グレインは6人の顔を順番に見た。
「まず、去年までの戦闘実践で困ったことを出してくれ」
すぐに答えは出なかった。
6人は少しだけ顔を見合わせる。
「どうする?」
最初に口を開いたのはピアだった。
ガレスが腕を組む。
「最初にどこへ立つかくらいは決めた方がよくないか?」
クロードは去年の最後の戦闘実践を思い出した。
最初に決めたことが、そのまま最後まで使えるとは限らなかった。
「最初だけ決めて、変わったら声を掛けるのがいいと思う」
「それは必要ね」
エクリアが頷く。
「でも、広がりすぎると反対側の声が聞こえないこともあったわ」
「俺は壁だな」
ノーゼスが言う。
「止められても、場所が悪いと味方の邪魔になる」
「出す前に言った方がいいね」
クロードが言うと、ノーゼスも頷いた。
ベンが少し考えてから口を開く。
「光を使う時も言うよ」
「前に光を出す方ばかり見てて、先生に近づかれたことがあったし」
クロードはその時のことを思い出した。
ダルガンの土壁で先生の位置が見えなくなり、ベンは光へ意識を向けていた。
「じゃあ、名前と短い言葉でいいんじゃない?」
ガレスが言った。
「後ろとか、下がれとか」
「それ、前にもやったね」
クロードが頷く。
ピアは6人の立つ場所を見回した。
「最初は少し広がる?」
「広がりすぎないくらいでね」
エクリアが返す。
話を聞いていたグレインは、ここまでほとんど口を挟まなかった。
「まとまったか?」
「たぶん」
クロードが答える。
「なら、一度動いてみろ」
グレインが数歩離れる。
「まだ木剣も魔法も使わなくていい」
「先生を相手だと思って、6人で位置だけ合わせる」
クロードたちは顔を見合わせた。
戦わないのに、戦う時の位置を考える。
「始めるぞ」
グレインが歩き出した。
クロードも前へ出る。
横ではガレスも同じ方向へ動いた。
2人の距離が近くなり、クロードが少し外へずれる。
「クロード、右」
エクリアの声がした。
クロードが右へ動くと、今度はピアの前へ入りかけた。
「近い」
ピアが言う。
「ごめん」
クロードが離れる。
グレインは何も言わず、今度は反対側へ向きを変えた。
「左!」
ガレスが声を出す。
6人がまとめてそちらを見る。
今度は全員が同じ方へ寄りかけた。
「寄りすぎ!」
エクリアの声が飛ぶ。
ノーゼスが一歩下がり、ベンも反対側へ広がった。
クロードはグレインだけでなく、近くにいる5人へ視線を動かす。
けれど全員を一度に見るのは難しい。
グレインが止まった。
「今、6人全員がどこにいたか分かるか?」
クロードは周囲を見る。
ノーゼスとエクリアは分かっていた。
ガレスも近くにいた。
けれどベンがいつ反対側へ動いたのかは見ていない。
「全部は分かりませんでした」
「俺も」
ノーゼスが言う。
グレインはそれ以上説明せず、もう一度位置を戻すよう手で示した。
「もう一回だ」
今度は最初から、クロードは相手だけを見続けないようにした。
グレインが右へ動く。
「右行く」
クロードが声を出す。
「見てる」
ガレスが返す。
エクリアは少し下がり、ピアがその横へ動く。
「ノーゼス、近い」
ベンの声でノーゼスが位置をずらす。
「分かった」
グレインが向きを変える。
6人の声もまた変わる。
さっきより全員の場所が分かる。
それでも、声が重なると聞き取れない時があった。
クロードが1人を見ている間に、別の誰かがもう動いていることもある。
何度か位置を戻し、そのたびに6人で短く話した。
グレインは答えを決めず、動きが止まった時だけ理由を聞いた。
少し離れた場所でも、残る2チームがそれぞれの担当教師と確認を始めている。
クロードはもう一度グレインへ目を戻した。
「次、行くぞ」
「はい」
6人がそれぞれの位置へ戻る。
今度はピアが最初に声を出した。
「左見る」
「じゃあ僕は前」
クロードが答える。
ノーゼスとエクリアもそれぞれ位置を変える。
ガレスとベンの声も続いた。
まだ6人の動きが綺麗に揃うわけではない。
それでも最初より、誰がどこへ動こうとしているのかは少し分かるようになっていた。
やがて授業の終わりを告げる魔導の鐘が鳴った。
クロードたちは動きを止める。
「今日はここまでだ」
グレインが言った。
「次に木剣や魔法が入れば、今より見るものは増える」
クロードは5人を見る。
ノーゼスとエクリア。
ガレスとベンとピア。
これから戦闘実践では、この6人で動いていく。
5年を終えるまで、同じチームだ。
クロードは少しだけ笑った。
(この6人で、どこまで出来るんだろう)




