↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
164/244

まずは《印》から

それから次に魔法基礎があった日、クロードは教本を開いてナターシャの話を聞いていた。

「今日は、中級魔法の《印》を覚えていきます」

教室のあちこちで頁をめくる音がする。

クロードも雷属性の中級魔法が載っている頁を開いた。

一番上にあるのは《サンダーランス》だ。

前に読んだ時は、高い出力の雷を槍状にまとめ、形を維持しながら放つ魔法だというところばかり気になっていた。

「その前に、一つ覚えておいてください」

ナターシャが教壇の前で手を上げる。

「中級魔法は、初級魔法より《印》そのものも難しくなります」

クロードは教本へ目を落とした。

《サンダーランス》の《印》が順番に載っている。

「初級より工程が増えますし、途中で間違えれば、その後を正しく続けても魔法は正しく発動しません」

「長いな……」

隣でノーゼスが呟いた。

「土も?」

クロードが小声で聞く。

「見れば分かるだろ」

ノーゼスが教本を少しこちらへ傾ける。

クロードは自分の頁と見比べた。

どちらも初級で見慣れた《印》より、明らかに途中の動きが多い。

前の席ではエクリアが水属性の頁を開いていた。

その横には風属性の頁にも目印が挟まれている。

「エクリアは両方覚えるの?」

「そうなるでしょうね」

エクリアは教本から顔を上げた。

「今までだって両方だったんだから」

「大変そう」

「クロードに言われたくないわ」

「なんで?」

「雷で毎回苦労してるじゃない」

「それはそうだけど」

ノーゼスが笑う。

ナターシャが教室を見回した。

「今日は魔力を使いません」

クロードは顔を上げる。

「《印》だけですか?」

「はい、クロード君」

ナターシャが頷いた。

「まずは教本を見ながら、正しい順番で最後まで組んでください」

「分かりました」

「速さは必要ありません」

ナターシャは全員へ向き直る。

「途中で分からなくなったら、適当に続けないこと」

教室が静かになる。

「教本を確認して、最初からやり直してください」

クロードは右手を机の上へ出した。

教本の最初に載っている形を見る。

指を動かす。

一つ目。

次。

その次。

さらに指の形を変える。

「……あれ?」

手が止まった。

クロードは教本を見る。

「次、こっちか」

指を動かそうとして、もう一度止めた。

途中から続けようとしていた。

ナターシャが言ったばかりだ。

クロードは手を戻す。

「最初から」

もう一度、一つ目から始める。

今度はさっき止まったところまで進んだ。

そこを越える。

「よし」

さらに進める。

また止まった。

「……長い」

今度は自分で口にしていた。

「だろ?」

ノーゼスが横から言う。

「初級より全然長いね」

「俺も途中で分からなくなった」

ノーゼスも手を戻している。

少し離れたところでは、ザナトスが教本と自分の手を何度も見比べていた。

「違うな」

小さく呟いて、最初からやり直している。

クロードはもう一度《サンダーランス》の《印》を見る。

《サンダーボール》も《サンダーアロー》も、今では考え込まずに指を動かせる。

《サンダーボム》も《サンダーショック》も、最初は教本を見ながら何度も繰り返した。

中級でも、やることは同じなのかもしれない。

ただ、覚えなければならない動きが増えている。

クロードはもう一度、最初の形を作った。


◇


休憩を挟んだあとも、教室では《印》の練習が続いていた。

クロードは教本を見ながら指を動かす。

最初よりは先まで進めるようになっている。

それでも途中で一度止まり、すぐ教本へ目を落とした。

「そこです」

声がして、クロードが顔を上げる。

ナターシャが机の横に立っていた。

「今、分からなくなりましたね?」

「はい」

「では戻りましょう」

クロードは右手を下ろした。

「途中からじゃ駄目なんですよね」

「今は、ですね」

ナターシャは教本を見る。

「まず正しい順番を身体に覚えさせるところですから、分からなくなったところから推測して続けるより、最初から確かめた方がいいです」

「はい」

クロードは再び最初の形を作った。

今度は一つずつ教本と照らし合わせながら進む。

ナターシャは少しだけ見てから、次の生徒のところへ移った。

クロードはそのまま続ける。

途中で教本を見る。

また動かす。

最後の形まで届いた。

「できた」

「教本見てたけどな」

ノーゼスが言う。

「見ながらなら出来たんだからいいでしょ」

「まあな」

「ノーゼスは?」

「俺も一回最後までいった」

「じゃあ同じだね」

「途中で二回見たけど」

「僕も見たよ」

隣からエクリアの声が入る。

「回数競ってどうするのよ」

「競ってないよ」

クロードが答える。

「でも、見ないで出来るようにはなりたい」

「それは全員でしょ」

エクリアは水属性の《印》を一度終えると、教本の頁をめくった。

今度は風属性の方を見るらしい。

「やっぱり二つやるんだ」

ノーゼスが言う。

「だから最初からそう言ってるでしょ」

エクリアは右手を上げ、風属性の頁を見ながら最初の形を作り始めた。

クロードももう一度《サンダーランス》へ戻る。

今度は最初から、出来るだけ教本を見ないように指を動かしてみる。

一つ。

二つ。

三つ。

少し迷う。

止まる前に教本を見る。

「ここか」

確認して続ける。

最後まで指を動かし終えたところで、クロードは息を吐いた。

まだ覚えたとは言えない。

それでも最初よりは、どこで何をするのか分かるようになってきた。

クロードは教本の《サンダーランス》の説明へ目を移した。

高い出力の雷を槍状にまとめ、形を保ったまま放つ。

その前に、この《印》を魔力を使いながら組まなければならない。

「先生」

クロードが手を上げる。

ナターシャが振り返った。

「はい、クロード君」

「これを覚えたら、《サンダーランス》を使ってもいいんですか?」

「いいえ」

すぐに返ってきた。

「駄目なんですか?」

「まだです」

ナターシャはクロードの机の近くまで歩いてくる。

「今日は《印》だけを練習しています」

「はい」

「《印》を組めるようになることと、中級魔法を安全に発動出来ることは同じではありません」

クロードは教本を見る。

「魔力を使うのは実習で?」

「はい」

ナターシャが頷いた。

「実際に魔力を流した時に、どのくらいの量が必要なのか、形をどこまで保てるのか、まだクロード君自身も分かっていませんよね?」

「分かってません」

「でしたら、最初は先生がいるところで確かめてください」

「分かりました」

クロードは素直に頷いた。

ナターシャは少し笑ってから、別の机へ向かった。

クロードはもう一度右手を見る。

《サンダーランス》を使うところまで、まだ行っていない。

高い出力を出すことも、雷を槍の形にすることも、その形を保つこともまだ試していない。

その前に、《印》を覚えなければならない。

クロードは教本の最初へ視線を戻した。

右手を上げる。

最初の形を作る。

「まず、これを覚えないと」

もう一度、ゆっくりと指を動かし始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。