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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』  作者: 黎明の星


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雲の行き先

翌朝、クロードは机の上に置いた一枚の紙を見つめていた。

『雷の記録』

昨日書いたばかりの文字の下には、三回の実験で分かったことと、それ以上に多くの疑問が並んでいる。

三回、同じ枝を狙った。

三回とも外れた。

しかも、雷が落ちた場所は毎回違った。

クロードはその部分を指でなぞる。

狙った場所へ飛ばない。

ガルディオも、雷属性は狙った場所へ安定して飛ばすことが難しいと言っていた。

けれど、それだけでは何も分からない。

なぜ飛ばないのか。

何が雷の進む先を決めているのか。

クロードは紙の下に並んだ疑問へ目を移した。

距離で変わる?

魔力量で変わる?

周囲にある物で変わる?

前の世界の雷や電気と同じ性質はある?

全部を一度に試すことはできない。

それに、いくつも条件を変えてしまえば、何が原因だったのか分からなくなる。

製鉄所で異常の原因を調べるときも同じだった。

怪しいものを片端から変えればいいわけではない。

一つずつ確かめる。

クロードはしばらく考えてから、一番上の疑問に丸をつけた。

距離。

まずは、これからだ。

「今日は距離を変えてみたいです」

朝食を終えたあと、クロードがそう言うと、ガルディオは少しだけ眉を動かした。

「昨日の枝か」

「はい。同じものを使います」

「なぜ距離を変える」

「近ければ当たりやすくなるのか知りたいからです」

ガルディオはすぐには答えず、クロードを見る。

「他には変えないのか」

「できるだけ昨日と同じにします」

その答えを聞いて、ガルディオは頷いた。

「なら試してみろ」

昨日と同じ、土のむき出しになった場所へ向かう。

水も用意する。

乾いた枝も昨日使ったものをそのまま持ってきた。

ただし、置く場所だけを変える。

昨日より近い。

クロードは枝の前に立った。

「近いからといって力を増やすな」

「はい」

「昨日と同じ程度だ」

クロードは頷き、右手を前へ出す。

魔力を動かす。

できるだけ昨日と同じように。

指を組み、枝を見る。

パチッ。

青白い光が走った。

「あ」

枝には当たらなかった。

雷は枝の少し横にある地面へ落ちている。

クロードはその場所を見る。

近くしても外れた。

だからといって、距離が関係ないとはまだ言えない。

一回だけでは分からない。

「もう一回いいですか?」

ガルディオがクロードの様子を見る。

「手は」

「大丈夫です」

「痺れは」

「ありません」

「なら、もう一回だけだ」

クロードは再び枝へ手を向けた。

同じ距離。

同じくらいの魔力。

できるだけ同じ姿勢。

パチッ。

二度目の雷が走る。

今度は枝の手前だった。

「……違う」

一回目とも違う。

近くしたからといって、狙った枝へ飛ぶわけではなかった。

ガルディオが言う前に、クロードは手を下ろした。

「休みます」

ガルディオが僅かに頷いた。

クロードは用意してあった水を飲み、地面に残った二つの跡を眺める。

昨日より枝を近くした。

それでも二回とも外れた。

だが、これだけで距離は関係ないと決めてしまうのも早い。

もっと近ければどうなるのか。

逆に遠くすればどうなるのか。

試したいことが増えていく。

けれど、今は休む。

取り返せる失敗にするためにも、急いではいけない。

休憩を挟んだあと、クロードは今度は枝を少し遠ざけた。

昨日よりも遠い。

同じ枝。

同じ場所。

変えるのは距離だけ。

少なくとも、自分ではそのつもりだった。

クロードは右手を向ける。

「いきます」

「ああ」

パチッ。

雷が走る。

また外れた。

枝よりも手前の地面に、小さな跡が残る。

クロードは首を傾げた。

近くても外れた。

遠くても外れた。

「距離じゃないのかな」

「分かったのか」

ガルディオが聞く。

クロードは少し考えてから首を横に振った。

「まだ分かりません」

距離を変えても外れた。

それは分かった。

けれど、それだけだ。

距離が雷の行き先にまったく関係していないとは言えない。

試した回数も少ない。

「もう一回――」

言いかけて、クロードは止まった。

ガルディオを見る。

「今日は何回までですか?」

「今ので三回だ」

「はい」

昨日も三回だった。

もう少し試したい。

けれど、昨日も今日も体に異常がないからといって、次も大丈夫だとは限らない。

クロードは枝から手を離した。

「今日はやめます」

「ああ」

ガルディオはそれだけ答えた。

部屋へ戻ったクロードは、『雷の記録』に今日の結果を書き足した。

昨日より近い距離。

二回。

どちらも外れた。

昨日より遠い距離。

一回。

外れた。

そこまで書いて、クロードは手を止める。

何が分かった?

距離を変えても、狙った枝には当たらなかった。

では、距離は関係ない?

そこまで書こうとして、やめた。

分からない。

まだ三回しか試していない。

昨日の三回を合わせても六回だ。

それだけで決めるのは早い。

クロードは代わりに書いた。

『距離を変えても外れた。距離が関係ないかは、まだ分からない』

書いてみると、分かったことが思ったより少ない。

けれど、それでいい。

分からないことまで分かったことにしてしまう方が危ない。

次の疑問を見る。

魔力量で変わる?

クロードはその文字を見つめた。

力を強くすれば、もっと真っ直ぐ飛ぶのだろうか。

それとも、もっと大きく外れるのだろうか。

試してみたい。

だが、魔力量を変えるなら、昨日までとは危険も変わるかもしれない。

これは父上に相談してからだ。

その下には、もう一つの疑問がある。

周囲にある物で変わる?

クロードは窓の外を見る。

庭には木があり、石があり、土がある。

昨日も今日も、雷は枝ではなく地面へ落ちた。

ただ、それだけで何かを決めることはできない。

前の世界で知っていた雷や電気のことも頭に浮かぶ。

けれど、ここは前の世界ではない。

この雷が同じものだという証拠もない。

なら、確かめるしかない。

クロードは『雷の記録』へ新しく書き加えた。

『次は、魔力量を変えるとどうなるか』

その下にも一行。

『周りにある物は、雷の行き先に関係するか』

昨日より分かったことは少しだけ増えた。

その代わり、確かめたいことも増えている。

クロードは紙を見ながら、小さく笑った。

狙ったところへ飛ばない雷。

扱いにくいと言われる力。

けれど、その理由はまだ知らない。

知らないことが、また一つ目の前にある。

なら、明日も続きを調べよう。

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