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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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156/241

もう一度

短い休みを終えると、白組と赤組は再びそれぞれの場所へ集まった。

さっきまで着けていた防具は一度外していたが、次の実践でも同じ白と赤に分かれる。

クロードは白組の8人と輪になり、最初の40分で出た話を思い返した。

「まず、名前は呼んだ方がいいよね」

ミズーが言った。

「うん」

ベンが頷く。

「名前が聞こえた時は、自分に言われてるって分かった」

「でも名前だけじゃ、そのあと何すればいいか分からない時もあったわ」

マミヤが続けた。

「クロードって呼ばれて振り向いたら、もう相手が来てた時あった」

クロードが言う。

「じゃあ、名前と一緒に短く言えば?」

ガレスが口を挟む。

「クロード、後ろとか、ガレス、下がれとか」

「長く言ってる暇はないものね」

エクリアが頷いた。

ランは少し考えてから、白組のセーフティーゾーンを見る。

「休む時も、近くの人には言った方がいいと思う」

「戻る時も」

カイルが続ける。

「ガレスが戻った時、声は聞こえたけど、もう動いてたし」

「待ってたらまた狙われるだろ」

ガレスが言った。

「だから戻った人が、近くの人に今どうなってるか聞くのは?」

ナーンの言葉に、ガレスが頷く。

「それならできそう」

「セーフティーも、3人入ってるかどうかを全員で覚えるのは無理そうだね」

ベンが言う。

「近くにいる人同士で伝えればいいんじゃない?」

ミズーが答える。

クロードはみんなの話を聞きながら、最初のミーティングとの違いを感じていた。

さっきは、どう動けばいいのかを考えていた。

今は、何が分からなかったのかを話している。

「最初の場所は決める?」

ガレスが聞いた。

少しだけ沈黙が生まれる。

「決めてもいいけど、そこにい続けるのは無理じゃない?」

ランが言う。

「赤も同じ場所から来るとは限らないし」

「それに1回目を見られてるわ」

エクリアが赤組の方へ目を向けた。

向こうでも9人が集まり、何かを話している。

ノーゼスが地面を指し、ザナトスが横から何かを言っていた。

「向こうも変えてくるよね」

クロードが言う。

「当たり前でしょ」

エクリアが返した。

「私たちだけ反省したわけじゃないもの」

白組から小さく笑いが起きた。

結局、細かな位置や役割は決めなかった。

名前と短い言葉を一緒に使うこと。

休む時と戻る時は近くへ知らせること。

救護から戻った時は、近くの味方へ今の状況を聞くこと。

1か所へ集まりすぎないこと。

決めたのは、それくらいだった。

時間を知らせる声が掛かる。

白組は再び防具を身につけ、木剣を持って結界へ向かった。

赤組も反対側から入ってくる。

ネノマ、オルディク、ダルガン、フィオネの4人も、それぞれ判定しやすい位置へ散った。

クロードは赤い防具の中にノーゼスを見つけた。

その横にはザナトスがいる。

1回目と同じ9人。

けれど、今度はさっきの40分を全員が知っている。

結界の外でトルシアが両組を確認する。

「始めてください」

白と赤が動いた。

「ガレス、前!」

すぐに声が飛ぶ。

ガレスが短く返事をして前へ出る。

「クロード、右!」

自分の名前が聞こえた瞬間、クロードは右を見る。

タンガが木剣を持って回り込んできていた。

クロードは身体を向け、木剣を合わせる。

「ナーン、火いく!」

近くから声がして、クロードは少し左へずれた。

ナーンの火球が横を抜け、タンガが後ろへ下がる。

「分かりやすい」

クロードが漏らす。

だが赤側からも声が飛ぶ。

「タンガ、左!」

タンガがすぐに横へ動く。

その空いた場所へ、今度はレクシアが入ってきた。

「向こうもだ」

クロードは木剣を構え直した。

少し離れた場所では、ノーゼスが《印》を組んでいる。

「ノーゼス、壁くる!」

ミズーの声。

地面から《ロックウォール》がせり上がった。

1回目と同じように壁の横へ回ろうとして、クロードは足を止める。

壁の端には、すでにザナトスがいた。

目が合う。

「やっぱ来たな!」

ザナトスが笑って木剣を構えた。

クロードも思わず笑う。

「待ってたの?」

「さっきそこから来ただろ!」

ザナトスが踏み込む。

クロードは木剣で受けながら横へ動いた。

1回目に通れた場所を、相手も覚えている。

ザナトスの後ろから光が見えた。

「クロード、下がって!」

エクリアの声が届く。

クロードはすぐに後ろへ跳ぶ。

ヤンナの《ライトボール》が前を通り、ザナトスも一度離れた。

その横から風が抜ける。

エクリアが放った魔法に、ヤンナが位置を変えた。

「エクリア、前に赤2人!」

カイルが声を上げる。

「見えてる!」

エクリアは水へ切り替え、前へ出ようとしていた赤組の足を止めるように魔法を放った。

赤い防具が散る。

その隙へガレスが入る。

「ガレス、行ける!」

ランの声に、ガレスがさらに前へ出た。

だが赤側からも、すぐに声が重なる。

「ガレス来る!」

「トルト、そっち!」

トルトが横から入り、ガレスは木剣を合わせるため足を止めた。

最初の数分だけでも、1回目より声の意味は分かりやすかった。

その代わり、相手も同じように動いている。

白が動けば赤が声を出す。

赤が動けば白も伝える。

「ミズー、後ろ!」

「分かった!」

「ベン、光いく!」

「離れる!」

短い声があちこちで飛ぶ。

それでも全部を聞けるわけではない。

クロードがレクシアと向き合っている間にも、遠くで別の声が重なっていた。

自分の名前ではない声は、聞こえても追わない。

今は目の前を見る。

レクシアが木剣を振る。

クロードは受けずに一歩下がった。

そこへ別の赤い防具が入りかける。

「クロード、左空いてる!」

マミヤの声が聞こえた。

クロードは左へ動く。

確かに白い防具はいない。

だがその先からピアが水魔法を放とうとしていた。

「空いてるけど、赤いる!」

クロードはさらに声を返し、足を止めた。

マミヤがすぐに向きを変える。

言われたことが間違っていたわけではない。

声が届いてからクロードが見るまでにも、相手は動いている。

少しして、白側で最初の被弾が出た。

オルディクの停止の声が掛かり、ナーンが救護ゾーンへ下がっていく。

「白、ナーン救護!」

近くにいたベンが知らせる。

「分かった!」

いくつか返事が返る。

全員からは返らない。

それでも、さっきより誰が抜けたのか分かる者は多かった。

赤側でもタンガがセーフティーへ向かう。

「赤1人休む!」

赤組の声が聞こえた。

クロードは一瞬そちらを見るが、すぐ前へ戻す。

敵が何人休んでいるかまで全部追おうとはしない。

自分の近くで何が変わったかを見る。

ノーゼスが《ロックウォール》を出したあと、その場から横へ走る。

「ノーゼス動いた!」

クロードが声を出す。

「見えてる!」

ミズーが答える。

壁だけを見ていた1回目とは違う。

クロードは壁の端だけでなく、動いたノーゼスも追った。

だがノーゼスもクロードへ真っすぐ来るわけではなかった。

途中で方向を変え、ガレスの方へ向かう。

クロードは追いかけず、近くへ来たピアを見る。

距離は少しある。

木剣を左手へ持ち替え、右手で《印》を組む。

《サンダーボール》が形になる。

「クロード、右!」

声が入った。

まだ放つ前だった。

クロードは《印》を解き、木剣を右手へ戻す。

横からトルトが来ていた。

木剣を受ける。

そのまま一度距離を取る。

雷を出せる状況ではなくなった。

それでいい。

少しあと、今度は前が開いた。

クロードは木剣を左へ移し、右手で《サンダーボール》を放つ。

雷球は赤組の前へ走り、リーゼが横へ避けた。

当たらない。

クロードはすぐ右を見る。

さっきまでいたトルトはもういない。

代わりにヤンナが近づいている。

状況は数秒で変わっていた。

実践が進むにつれ、セーフティーへ入る生徒も増えていく。

「白、2人休み!」

カイルの声。

クロードは近くを見る。

マミヤとベンが白側のセーフティーに入っていた。

「あと1人!」

ランが返す。

少しして、ガレスが後ろへ下がり始めた。

「休む!」

「ガレス、あと1人入れる!」

カイルが知らせる。

ガレスがそのままゾーンへ入り、白側は3人になった。

前に残る人数が減る。

赤側がそこへ一気に押し込んでくるわけではない。

赤も救護やセーフティーで人数が減っていた。

それでも、近くにいる赤の数が増えた場所はある。

「クロード、こっち多い!」

ミズーが声を上げる。

クロードはそちらへ向かおうとした。

その途中で、エクリアが前を横切る。

1回目なら2人とも止まりかけた距離だった。

エクリアが先に声を出す。

「クロード、そのまま行って!」

クロードは止まらず進んだ。

エクリアが後ろへ回る。

一瞬だけ、動きが重ならずに済んだ。

その先ではノーゼスとザナトスがいた。

「2人いる!」

クロードが声を出す。

「私も行く!」

ミズーが少し後ろから返す。

ノーゼスが壁を出す。

その瞬間、ザナトスは壁の横ではなく反対側へ走った。

クロードが追おうとすると、ノーゼスも壁から離れる。

2人とも1回目とは違う。

「クロード!」

今度はザナトスの声だった。

敵から名前を呼ばれて、クロードがそちらを見る。

「こっちだ!」

「教えてくれるんだ」

「お前に勝つなら正面からでもいいだろ!」

ザナトスが木剣で踏み込む。

クロードは受け、すぐに一歩下がった。

横からノーゼスが来るかと思ったが、来ない。

ノーゼスはミズーの方へ回っていた。

クロードがザナトスだけを見ている間にも、周りは動いている。

木剣を合わせた直後、ザナトスが離れた。

追わない。

クロードも別方向へ向く。

前半は、1回目より動きやすい場面が増えていた。

だが時間が進むにつれて、声の数は少しずつ減っていった。

息が上がる。

木剣を振った腕が重くなる。

走った直後に声を出そうとしても、最初ほど大きくならない。

「白……1人戻る!」

セーフティーから出たベンの声も、前半より短かった。

近くにいたランが気づく。

「ベン戻った!」

それを聞いたクロードも分かった。

だが遠くのエクリアまでは届いていないようだった。

ナーンが救護から戻ってくる。

結界へ入る前に、近くのカイルへ声を掛ける。

「今どこ多い?」

「左側、白少ない!」

「分かった!」

ナーンはカイルが示した方へ走った。

1回目のように、戻った瞬間にどこへ行けばいいか分からず止まることはなかった。

その一方で、別の場所では名前を呼ばれても反応できない場面も出る。

「ガレス、後ろ!」

声が飛ぶ。

ガレスはザナトスと木剣を合わせていて、すぐには振り向けない。

別方向からトルトが近づく。

「ガレス!」

もう一度声が飛んだ時には、ガレスは自分で横へ動いていた。

呼べば必ず間に合うわけではない。

聞こえていても、動けない時がある。

クロードも同じだった。

「クロード、下がって!」

エクリアの声が聞こえる。

だが正面にはノーゼスがいる。

すぐ後ろへ下がれば、ノーゼスの木剣が届く。

クロードは横へ避けた。

その直後、エクリアの風魔法が別の角度を抜ける。

「下がれなかった!」

クロードが声を出す。

「見えた!」

エクリアも短く返す。

言われた通りに動けなくても、次の動きは続いていく。

後半に入ると、白側のセーフティーがまた3人になった。

「満員!」

ランが声を出す。

クロードは息を整えたかったが、ゾーンへは入れない。

近くには赤が2人いる。

木剣を握り直し、そのまま動く。

「クロード、交代する!」

セーフティーからカイルが出てくる。

「ありがとう!」

クロードはすぐにゾーンへ向かった。

境界へ入ると、追っていた赤組はそれ以上来ない。

息を整えながら結界の中を見る。

外からではない。

セーフティーの中から見るだけでも、少し広く見える。

白と赤があちこちに散っている。

ノーゼスの壁が1つ残り、その左右で人が動く。

さっきまで自分がいた場所は、もう別の形になっていた。

「クロード、出る?」

隣からマミヤが聞く。

クロードは息を1つ大きく吐いた。

「うん、戻る」

「私も出る」

2人でゾーンを出る。

「白、2人戻る!」

マミヤが声を出した。

近くのベンが振り向く。

「右側、白少ない!」

「分かった!」

クロードとマミヤは別々の方向へ走った。

戻る場所を同じにする必要はない。

クロードが向かった先では、ノーゼスが再び《ロックウォール》を出そうとしていた。

1回目なら、壁ができてから横へ回った。

今度は完成する前に前へ出る。

だがノーゼスも気づいた。

《印》を途中で解き、横へ動く。

「やめた?」

「来るの見えたからな!」

ノーゼスは木剣へ切り替える。

クロードも木剣を構える。

壁は出ない。

それでも戦いは続く。

少し離れた場所では、エクリアが水を使った直後に風へ切り替えていた。

ザナトスはクロードを見ず、ランを追っている。

ヤンナの光が白組の視線を動かし、その間にリーゼが別方向へ抜ける。

ガレスが声を出し、ミズーが位置を変える。

誰か1人の動きだけで戦況は決まらない。

クロードはノーゼスの木剣を受け、横へ離れた。

そこへ赤い防具が入ってくる。

ピアだった。

「クロード、後ろ空いた!」

ランの声。

クロードは一度だけ後ろを見て、下がる。

今度は本当に空いていた。

距離ができる。

木剣を左手へ移し、右手で《印》を組む。

雷を形にする。

《サンダーボール》を放つ。

ピアが避ける。

ノーゼスも横へ動く。

当たらない。

クロードはすぐ木剣を右手へ戻した。

「また外したな!」

少し離れたザナトスの声が聞こえた。

「今そっち見てないよ!」

クロードが返す。

「見ろよ!」

「忙しい!」

近くから笑い声が混じった。

疲れていても、戦闘は止まらない。

やがてトルシアの声が大きく響いた。

「そこまでです」

クロードは動きを止めた。

ノーゼスも木剣を下ろす。

少し離れたところで、ザナトスが肩で息をしていた。

白も赤も、すぐには声を出さない。

40分が終わった。

クロードは大きく息を吐き、木剣を下げたまま周囲を見る。

1回目より分かったことは増えた。

声も少し届いた。

戻った人が迷わず動けた場面もあった。

それでも、最後まで全員の位置を把握することはできなかった。

相手も同じように考え、同じように変わっていた。

片付けが始まり、白と赤は防具を外していく。

「1回目よりは声聞こえたよね」

ミズーが言った。

「名前と一緒だと分かりやすかった」

ベンが頷く。

「でも聞こえても動けない時あったぞ」

ガレスが腕を回しながら言う。

「俺、後ろって言われたけど前にザナトスいたし」

「それはこっちから見えなかった」

ランが返す。

「救護から戻った時は、さっきより分かったよ」

ナーンが言う。

「カイルに聞けたから」

「でも後半は声減ったわね」

エクリアが言った。

「疲れたもの」

マミヤが息を吐く。

赤組からも似たような声が聞こえてくる。

ノーゼスが何かを話し、ヤンナが頷いている。

ザナトスは途中でクロードの方を見たが、すぐ赤組の話へ戻った。

片付けが一段落したところで、トルシアが18人を集めた。

「1回目と2回目で、何が変わりましたか?」

すぐには誰も答えなかった。

やがてベンが手を上げる。

「名前と一緒に言うようにしたら、誰に言ってるかは分かりやすくなりました」

「でも、分かっても動けない時はありました」

ガレスが続ける。

ヤンナも口を開いた。

「同じ動きをしたら、相手に待たれてた時もありました」

「そっちもだろ」

ザナトスが言う。

「白も1回目と同じじゃなかった」

「赤もね」

エクリアが返す。

ノーゼスが腕を組む。

「1回やったから分かったことはあったけど、それで次が同じになるわけじゃないな」

クロードはノーゼスを見る。

黒板に描いた丸や線を思い出す。

一度描いた形は、すぐに古くなった。

今日の1回目も同じだった。

役に立たなかったわけではない。

けれど、そのまま使える答えでもなかった。

トルシアはみんなの声が止まるまで待った。

「これで、2年生としての戦闘実践は終了です」

何人かが顔を上げた。

「もう終わりなんだ」

ミズーが小さく言う。

「終期式近いしな」

ノーゼスが答えた。

クロードは周囲を見る。

白い防具も赤い防具も、もう外されている。

さっきまで敵だったノーゼスもザナトスも、今はいつものクラスメイトだった。

できなかったことはまだ多い。

次に同じ人数で戦っても、また違うことが起きるはずだ。

それでも、分からなかったら見ればいい。

見たことを話して、また試せばいい。

クロードは片付けられた結界の方をもう一度見てから、みんなと一緒に第2運動場をあとにした。

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