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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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買い足す

その日の授業が終わると、クロードは机の上の教本とノートを鞄へしまった。

ノートを閉じる時、残っている頁があまり多くないことに気づく。

最近は授業だけでなく、自主練や戦闘実践で気づいたことまで書くことが増えていた。

クロードは最後の何枚かを指でめくった。

「そろそろ新しいの買わないと」

「何が?」

隣で帰り支度をしていたノーゼスが覗き込む。

「ノート」

クロードが見せると、ノーゼスは残っている頁を見た。

「まだあるじゃん」

「でも、すぐなくなりそう」

「クロードは書く量多いものね」

エクリアも鞄を持って近づいてくる。

「私もそろそろ買い足したいものあるわ」

「じゃあ街行く?」

クロードが聞く。

エクリアは少し考えてから頷いた。

「そうしましょうか」

2人の視線がノーゼスへ向く。

「俺も行く」

「ノーゼスも何か買うの?」

「見てから決める」

エクリアが少し笑った。

「何も決まってないじゃない」

「必要そうなのあったら買えばいいだろ」

「まあ、それでもいいけど」

3人はそのまま教室を出た。


◇


学園を出て王都の街へ入ると、授業を終えた頃より人通りが増えていた。

通りを歩きながら、クロードは何度か店先へ目を向ける。

以前3人で目的もなく街を歩いた時には、気になった店へそのまま寄っていた。

今日は探しているものがある。

しばらく歩くと、紙や筆記具などが並んだ店が見えてきた。

「あそこ見てみよう」

クロードが言うと、3人で中へ入る。

店内には大きさの違う紙の束やノート、何種類もの筆記具が並んでいた。

クロードはすぐにノートが置かれている棚へ向かう。

手に取って頁を開き、紙を見てから別のものも開いた。

「何が違うんだ?」

後ろからノーゼスが聞く。

「こっちの方が少し大きい」

「それだけ?」

「頁も多い」

「じゃあそれでいいじゃん」

クロードはもう一冊を見る。

「でもこっちは持ち歩きやすそう」

「どっちでもよくない?」

「使うなら見た方がいいよ」

「ノートだぞ?」

ノーゼスが不思議そうな顔をする。

少し離れたところで紙を見ていたエクリアが振り返った。

「クロードにそれ言っても無駄よ」

「なんで?」

「全部見るから」

クロードは2人を見る。

「そんなに見てないよ」

ノーゼスが棚を見る。

すでにクロードの前には何冊かのノートが並んでいた。

「見てるだろ」

「比べてるだけ」

「同じじゃない?」

エクリアが笑う。

クロードはもう一度手元のノートへ目を落とした。

結局、今使っているものと近い大きさのノートを選ぶ。

ほかにも授業で使う紙や筆記具を見ていると、少し離れたところからノーゼスの声がした。

「これでいいかな」

振り向くと、ノーゼスが一冊のノートを持っている。

「もう決めたの?」

クロードが聞く。

「書ければいいだろ」

「ほかの見なくていいの?」

「見たよ」

「いつ?」

「今」

クロードがノーゼスの後ろを見る。

ノーゼスが立っていた棚は、入口からそれほど離れていない。

「早いね」

「クロードが長いんだよ」

「まだそんなに経ってないよ」

「私、もう一通り見終わったわよ」

エクリアが戻ってくる。

手には自分で使うものがいくつかあった。

クロードは2人を見てから、もう一度棚を見る。

「じゃあ僕も決める」

「まだ見る気だったのか?」

「ちょっとだけ」

ノーゼスが笑った。

必要なものを選び終えると、3人は会計を済ませて店を出た。

クロードの手には買ったものをまとめた包みがある。

エクリアも自分の分を持ち、ノーゼスは小さな包みを片手で持っていた。

「結構見たな」

ノーゼスが言う。

「ノーゼスはほとんど見てなかったでしょう」

「見たって」

「一瞬だったじゃない」

「必要なの決まったんだからいいだろ」

そんなことを話しながら通りを歩く。

少し進んだところで、ノーゼスが急に腹へ手を当てた。

「腹減った」

エクリアが横を見る。

「また?」

「授業終わって、買い物までしたんだぞ」

「買い物でそんなに減る?」

「減った」

ノーゼスは迷いなく答えた。

クロードも周囲を見る。

店先から料理の匂いが流れてくる時間になっていた。

「どこかで食べて帰る?」

「行こうぜ」

ノーゼスがすぐ答える。

エクリアが少しだけ目を細めた。

「どこにする?」

「イリターニ食堂」

今度はもっと早かった。

クロードは頷く。

「僕もまた行きたい」

「そうね」

エクリアも頷いたあと、ノーゼスを見る。

「ずいぶん早く決まったわね」

「飯うまかっただろ」

「まだ何も言ってないけど」

「じゃあ決まりな」

ノーゼスは先に歩き出した。

クロードもそのあとを追う。

エクリアは少し笑いながら2人についてきた。


◇


イリターニ食堂へ着くと、以前と同じように店の中から何人もの声が聞こえていた。

ノーゼスが扉を開ける。

「いらっしゃい!」

よく通る声が飛んできた。

料理を運んでいたマサナが3人を見る。

「ああ、あんたたちまた来たね!」

「はい」

クロードが答える。

「3人だろ? ちょうど空いてるよ!」

マサナが指した卓へ3人で向かう。

荷物を邪魔にならないところへ置き、席へ座ったところで明るい声が近づいてきた。

「本当にまた来た」

ナリナだった。

ノーゼスが顔を上げる。

「来た」

「この前いっぱい食べてた人」

「覚え方それなの?」

ノーゼスが言うと、ナリナが笑った。

「だっていっぱい食べてたし」

「今日はまだ何も頼んでないぞ」

「じゃあ今日もいっぱい頼んでね」

「売り上げ?」

ノーゼスが聞く。

ナリナがすぐに頷いた。

「もちろん」

エクリアが横で吹き出した。

「何だよ」

「別に」

「絶対何かあるだろ」

「注文決まったら呼んでね」

ナリナは笑いながら別の卓へ向かった。

ノーゼスはその後ろを少しだけ見てから品書きを取る。

クロードも品書きを開いた。

「今日は2つ食べるの?」

クロードが聞く。

「まだ決めてない」

「そこは迷うのね」

エクリアが言う。

「ノートとは違うだろ」

「何が違うのよ」

「飯は大事だろ」

「ノートも大事でしょう」

「書ければいい」

クロードは思わず笑った。

「やっぱりそこは変わらないんだ」

3人で品書きを見ながら、それぞれ注文するものを決める。

今度はノーゼスも何度か見比べていた。

「まだ?」

エクリアが聞く。

「今決めてる」

「さっきクロードに何て言ってたっけ?」

「飯とノートは違う」

「便利な言葉ね」

クロードも笑いながら、自分の注文を決めた。

ナリナを呼び、順番に伝えていく。

ノーゼスも今回は一つだけ料理を頼んだ。

ナリナが少し意外そうに見る。

「今日は一つ?」

「あとで追加するかもしれない」

「ああ、やっぱり」

「まだ分かんないって」

「はいはい」

ナリナは笑って厨房へ戻っていった。

ノーゼスが水を飲む。

向かいではエクリアがまだ少し笑っている。

「何だよ」

「何でもないって言ってるでしょう」

「じゃあ笑うなよ」

クロードは2人を交互に見た。

「また何かあった?」

「クロードはそのままでいいわ」

「またそれ?」

前にも似たようなことを言われた気がする。

理由は今もよく分からない。

クロードは首を傾げたが、買ってきた包みが目に入ってそちらへ視線を移した。

「新しいノート、明日から使おうかな」

「今のまだ残ってるんだろ?」

「残ってるから、なくなってから」

「じゃあ明日じゃないじゃん」

「明日なくなるかもしれない」

「どんだけ書くんだよ」

エクリアが笑う。

「クロードならありそうね」

「そんなに書いてないよ」

「昨日も書いてたでしょう?」

エクリアに言われ、クロードは左手を見る。

夜、何度も《印》だけを組み直したことを思い出した。

今日も空いた時間に指の動きを何度か確かめている。

クロードの左手の指が、無意識に少し動いた。

ノーゼスがそれを見る。

「まだ左でやってるの?」

「うん」

「どう?」

クロードは少し考えた。

「まだやってる」

「それ答えになってる?」

「まだ分からないこと多いから」

「じゃあやっぱりクロードだな」

ノーゼスが笑った。

エクリアもクロードの左手を見る。

「今もやるの?」

「魔力は出さないよ」

クロードは慌てて左手を下ろした。

「ここで出したら怒られるでしょう」

「分かってる」

「分かってるならいいわ」

そこへ料理を持ったナリナが戻ってきた。

「お待たせ!」

3人の前へ皿が置かれていく。

「今度は冷める前に食べてね」

クロードたちが顔を見合わせる。

前に話し込んでいたことまで覚えられているらしい。

「今日は食べる」

ノーゼスが言う。

「前も食べてたのはあなただけだけどね」

「ちゃんと食ってただろ」

「あなたはね」

ナリナが笑って離れていく。

エクリアがノーゼスを見る。

「よく覚えられてるわね」

「いっぱい食ったからだろ」

「そういうことにしておくわ」

「だから何なんだよ」

クロードは話し始めそうな2人を見てから料理を見る。

「食べないとまた言われるよ」

「あ」

エクリアも皿へ目を落とした。

「それは嫌ね」

「俺は食うぞ」

「ノーゼスは心配してないわよ」

3人で料理を食べ始める。

授業の話をしたり、今日見た店の話をしたり、買ったものをどう使うか話したりしながら皿の中身は少しずつ減っていった。

戦闘実践の話が出ることもあったが、長くは続かない。

途中で別の授業の話になり、そこから教室であったことへ変わり、気づけばまったく違う話をしていた。

食べ終える頃になると、ノーゼスが品書きへ手を伸ばした。

エクリアがすぐに気づく。

「やっぱり追加するの?」

「デザート」

「知ってた」

クロードも品書きを覗く。

「僕も食べようかな」

「私も少しなら」

「じゃあ3人だな」

ノーゼスがナリナを呼ぶ。

注文を聞いたナリナは、ノーゼスを見て笑った。

「今日は最初から2皿じゃなかったね」

「デザート食べるから」

「結局いっぱい食べるんじゃない」

「食えるからいいだろ」

「いいよ、いっぱい食べてくれるなら」

ナリナがそう言って厨房へ向かう。

ノーゼスは何でもない顔で水を飲んだ。

エクリアがその横顔を見る。

「何だよ」

「今日は何も言ってないわよ」

「今日はって何だよ」

「さあ?」

クロードはまた2人を見比べる。

やっぱり何の話なのか分からなかった。


◇


食堂を出ると、3人は買ったものを持って学園へ向かった。

前に来た時より少し早い時間なのか、通りにはまだ買い物をしている人も多い。

ノーゼスは満足そうに歩いている。

「やっぱりあそこいいな」

「料理が?」

エクリアが聞く。

「そうだよ」

「誰もほかのこと聞いてないけど」

「その聞き方がもうおかしいだろ!」

エクリアが笑った。

クロードは2人の横を歩きながら、手に持った包みを見る。

新しいノートはまだ使わない。

今使っているものに残った頁を使い切ってからだ。

その中には左手で試したことも、これから試したいこともまだ増えていく。

クロードは包みを持ち直した。

「また来ようね」

ノーゼスがすぐに頷く。

「行く」

「やっぱり早いわね」

エクリアが笑う。

「クロードも行くだろ?」

「うん」

「ほら」

「何がほらなのよ」

3人の話し声が続く中、学園のある方へ歩いていった。

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