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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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30分

戦闘実践が始まってから、しばらくが過ぎていた。

最初は10分だった演習時間も、授業を重ねるたびに少しずつ長くなっている。

先生2人を相手にする広い結界へ入ることも、もう初めてではなかった。

それでも、その日クロードが第2運動場へ着くと足を止めた。

「今日は全部つながってる」

今まで4つに分かれていた演習区画の境目がなくなり、4区画分をまとめた大きな結界が作られていた。

ノーゼスも隣で端から端まで見渡す。

「広っ」

「先生も4人いるわね」

エクリアが言った。

結界の中にはトルシア、ネノマ、オルディク、ダルガンが立っている。

フィオネだけは結界の外にいた。

大きな結界の両端には、これまでになかった小さな区画も作られている。

片方には何本もの木剣と水が用意されていた。

「あれ何だろう」

クロードが見ていると、授業開始の魔導の鐘が鳴った。

トルシアが18人を集める。

「今日は戦闘実践を2限続けて行います」

何人かが大きな結界を見た。

「1限目と2限目で9人ずつに分かれてください」

「9人?」

ノーゼスが聞き返す。

「はい」

トルシアは結界の中にいる4人の教師へ目を向けた。

「先生4人に対して、生徒は9人です」

今度はクロードも先生たちを見る。

先生2人に生徒5人だった時より、さらに人数が増えている。

「演習時間は30分です」

小さく声が上がった。

クロードも思わずノーゼスを見る。

ノーゼスもこちらを見ていた。

「30分……」

「長いね」

「長いだろ」

トルシアの説明は続く。

「1限目に演習へ入らない9人は、結界の外から見ていてください」

「演習が終わったあとは、18人全員で話し合います」

フィオネが外側から手を上げた。

「見ている皆さんも授業中ですからね」

「はい」

返事が重なる。

クロードはもう1度、大きな結界を見る。

中で戦う9人。

外から見る9人。

2限目には、それが入れ替わるらしい。

「次に、セーフティーゾーンについて説明します」

トルシアが結界の端を指した。

木剣と水が置かれている方が生徒用だった。

反対側にも、教師用の小さな区画がある。

「30分間、演習そのものは止めません」

「疲れた時は、好きなタイミングでセーフティーゾーンへ入って休んでください」

「いつ戻るかも自分で決めて構いません」

ノーゼスが手を上げる。

「ずっと休んでてもいいんですか?」

「構いません」

トルシアはそのまま答えた。

「その間、仲間は1人少ないままですが」

ノーゼスが手を下ろす。

「それは困る」

近くで笑いが起きた。

「生徒側で同時に休めるのは最大2人です」

「2人が入っている間は、ほかの人は入れません」

クロードはセーフティーゾーンを見る。

疲れたからといって、必ず休めるわけではない。

「先生たちも休むんですか?」

ピアが尋ねた。

「休みます」

ネノマが答えた。

「先生だって30分戦えば疲れますから」

「教師側は同時に1人までです」

先生が1人休めば3人になる。

生徒が2人休めば7人になる。

どちらも、ずっと同じ人数で戦うわけではない。

「生徒側のセーフティーゾーンには予備の木剣も置いてあります」

トルシアが続ける。

「最初に誰が持つかも、途中で誰が持つかも皆さんで決めてください」

「先生たちには決めておかなくていいんですか?」

ヤンナが聞いた。

「必要ありません」

「誰が前へ出るかも、誰が後ろから魔法を使うかも、こちらからは指定しません」

クロードは並んでいる木剣を見る。

最初は持たなくてもいい。

途中から持ってもいい。

持っていた人が置いて戻ることも出来る。

先生たちも、誰が30分間木剣を持つのかは分からない。

「それから」

トルシアが9人ずつの組み合わせを読み上げていく。

1限目に入るのは、クロード、ノーゼス、エクリア、タンガ、ピア、ヤンナ、ラン、ミナ、リーゼ。

残るザナトス、ガレス、マミヤ、カイル、ベン、ナーン、レクシア、ミズー、トルトは1限目を外から見る。

クロードは呼ばれた8人を見る。

これまで3人や5人で組んだことはあった。

9人で一緒に戦うのは初めてだった。

「最初の5分で準備してください」

トルシアが言う。

9人が結界へ入る前に集まった。

「どうする?」

エクリアが聞く。

「9人もいると、何から決めればいいんだ?」

ノーゼスが言う。

タンガは結界の中にいる先生4人を見た。

「とりあえず俺は前行く」

「俺も行く」

ノーゼスが木剣を1本取る。

クロードも少し考えてから木剣を手にした。

「僕も最初は持つ」

リーゼが3人を見る。

「じゃあ私は最初は風使う」

「私も水からにする」

ピアが言った。

エクリアは木剣を取らず、先生たちの位置を見る。

「細かく決めても、始まったら変わりそう」

「だよね」

クロードも頷いた。

先生4人が同じ場所にいる。

9人の味方も動く。

休む人まで途中で変わる。

始まる前に全部決めるのは難しそうだった。

「行く時は声出そう」

クロードが言う。

「それくらいなら出来るな」

ノーゼスが木剣を握り直す。

準備時間が終わった。

9人が大きな結界の中へ入る。

入ってみると、今まで使っていた2区画分の結界よりさらに広い。

トルシアとネノマが中央寄りに立ち、オルディクとダルガンは左右へ離れている。

クロードは4人を順番に見た。

その後ろには、結界の外からこちらを見ている9人もいる。

フィオネもその近くに立っていた。

開始の合図が掛かる。

タンガが先に走った。

ノーゼスも反対側へ動く。

クロードは少し遅れて中央寄りへ出た。

それだけで先生4人も動き始める。

トルシアがクロードの方へ向く。

ネノマはタンガへ。

ダルガンはノーゼスの進む先へ回った。

オルディクはまだ少し後ろにいる。

「水行く!」

ピアの声がした。

クロードは横へ動く。

《ウォーターボール》がトルシアへ飛んだ。

トルシアが避ける。

クロードは空いた方へ入ろうとした。

その時、横から火の球が飛んできた。

オルディクだった。

クロードは踏み込みを止めて下がる。

「先生もう1人来た!」

声を出す。

「見えてる!」

ヤンナが返した。

その向こうでは、ノーゼスの《ロックボール》をダルガンが避けている。

ノーゼスが木剣を持ったまま距離を詰める。

けれど、そこへネノマが横から動いた。

「ノーゼス、右!」

リーゼが叫ぶ。

ノーゼスが足を止める。

その横を風が抜けた。

エクリアの《ウィンドボール》だった。

ネノマが向きを変える。

ノーゼスが追おうとする。

今度はダルガンがその前へ入る。

「また変わった!」

ノーゼスの声が聞こえた。

クロードもトルシアへ戻ろうとする。

だが、目の前をタンガが横切った。

さらに後ろからミナの水が飛ぶ。

クロードは一度止まるしかなかった。

人数が多い。

場所も広い。

それなのに、動きたい場所には次々と誰かが入ってくる。

「クロード、そこだと撃てない!」

エクリアの声がした。

クロードが振り返る。

エクリアが《印》を組んでいる。

自分がその前に立っていた。

「ごめん!」

すぐ横へ動く。

風がクロードのいた場所を抜ける。

トルシアが避けた。

その先へクロードが入る。

木剣を振る。

トルシアの木剣が間に入った。

乾いた音が鳴る。

すぐ横からネノマが来る。

クロードは追うのをやめて離れた。

前に2人。

横にも1人。

もう1人の先生がどこにいるのか、一瞬分からなくなる。

「オルディク先生、左!」

ランの声が飛んだ。

クロードが左を見る。

オルディクはヤンナの方へ向かっていた。

「ヤンナ!」

声を出す。

ヤンナも気づき、後ろへ下がる。

ランが《印》を組む。

土が盛り上がり、オルディクの進む先を変えた。

そこへピアが水を放つ。

オルディクがさらに横へ動く。

その先へタンガが走った。

今度はタンガの木剣が先生の木剣に止められる。

あちこちで同時に動いていた。

クロードはトルシアを見ながら、耳ではほかの声を聞こうとする。

全部を見るのは無理だった。

以前ノートへ書いた言葉が浮かぶ。

今、何を見るか。

けれど、何を見ればいいのかを考えている間にも先生は動く。

トルシアが近づく。

クロードは木剣で受けた。

すぐに離れる。

「中央寄りすぎ!」

エクリアの声。

クロードが周囲を見る。

いつの間にか、クロードたちの多くが中央へ寄っていた。

右側が大きく空いている。

そこへダルガンが動いた。

「右行った!」

ミナが声を上げる。

リーゼが追う。

風を放つ。

ダルガンがさらに外へ回った。

クロードも向かおうとしたが、トルシアが前にいる。

全部の先生を追うことは出来ない。

「こっちは見る!」

クロードが叫ぶ。

「分かった!」

ノーゼスの声が返った。

そこからしばらく、9人は声を掛けながら動き続けた。

最初のうちは、全員の足も軽かった。

先生が変われば追う相手を変える。

味方が前へ出れば魔法を止める。

空いた場所があれば誰かが入る。

けれど、時間が経つにつれて息が上がり始めた。

クロードも木剣を握る手に汗を感じる。

10分なら、そろそろ終わりを意識していた頃だった。

今日はまだ終わらない。

リーゼが大きく息を吐いた。

「私、少し休む」

そのまま生徒側のセーフティーゾーンへ向かう。

中へ入ると、追っていたダルガンもそこで止まった。

もう攻撃はしてこない。

少し遅れてミナも下がった。

セーフティーゾーンへ入る。

これで休んでいるのは2人。

クロードはその様子を見る。

自分も少し息が苦しくなっていた。

けれど、今は入れない。

休める場所は埋まっている。

「2人入った!」

ヤンナが声を出す。

戦場に残った生徒は7人になった。

先生はまだ4人いる。

ノーゼスが前へ出る。

「こっち来い!」

ダルガンへ《ロックボール》を放つ。

ダルガンが避ける。

ノーゼスは木剣で追う。

その間にエクリアが風を使う。

タンガもオルディクへ向かっている。

残った人数が減ったぶん、前へ出ている生徒の動く量が増えた。

クロードもトルシアを追いながら何度も向きを変える。

息がさらに早くなる。

「まだ休めないの?」

クロードがセーフティーゾーンを見る。

リーゼもミナもまだ中にいる。

今までの5分休憩なら、全員一緒に止まれた。

今日は違う。

戦闘は続いている。

その時、ダルガンが教師側のセーフティーゾーンへ向かった。

「先生休んだ!」

ピアが叫ぶ。

ダルガンが中へ入る。

先生は3人になった。

タンガが反応する。

「今行ける!」

オルディクへ向かっていた足を速める。

ノーゼスも前へ出た。

クロードも一瞬そう思った。

先生が1人少ない。

けれどこちらも2人休んでいる。

7人対3人。

人数だけ見れば多い。

それでも、リーゼとミナが抜けた場所は空いたままだった。

クロードたちが前へ寄った瞬間、ネノマが大きく外へ回った。

「後ろ!」

エクリアが叫ぶ。

ヤンナとランの方へネノマが近づく。

クロードは走ろうとして足を止めた。

自分まで戻れば、今度は前が薄くなる。

「僕は前見る!」

「分かった!」

エクリアが後ろへ回った。

クロードはトルシアへ向き直る。

先生が減ったから簡単になるわけではない。

残った先生も、空いた場所を見て動いている。

少しして、リーゼがセーフティーゾーンから出てきた。

手には木剣があった。

入る前には持っていなかったものだ。

「リーゼ、剣?」

クロードが聞く。

「うん、今は前行く」

リーゼは答えると、そのまま走った。

風を放つ。

トルシアが避ける。

リーゼが木剣を構えながら距離を詰めた。

トルシアもすぐにリーゼへ向きを変える。

先生側も、戻ってきた生徒が何を持っているのか見ていた。

ミナもセーフティーゾーンから出る。

こちらは木剣を持たず、水を使える位置へ戻っていった。

休憩場所が空く。

クロードは一瞬迷った。

足が重い。

まだ動けなくはない。

けれど30分の終わりがどこなのか、今はまだ分からない。

「クロード、休むなら今じゃない?」

ピアが声を掛ける。

「うん」

クロードは木剣を持ったままセーフティーゾーンへ向かった。

中へ入る。

先生たちは追ってこない。

木剣を脇へ置き、水を飲んだ。

大きく息を吐く。

戦場ではまだ魔法の音と木剣のぶつかる音が続いている。

自分だけ止まっているのが不思議だった。

クロードは呼吸を整えながら結界を見る。

今は8人が戦っている。

先生は3人。

ダルガンは反対側で休んでいる。

少し離れて見ると、9人で戦っていた時より人の集まり方が分かりやすかった。

左側に生徒が多い。

右にはピアとランしかいない。

「右、少ない」

クロードが呟く。

でも、ここで見ている間も8人が戦っている。

長く休めば、その時間だけ味方が1人少ない。

呼吸はまだ完全には戻っていない。

それでも、さっきよりは楽になった。

クロードは置いた木剣を見る。

右側に足りないのは、先生へ近づく人なのか。

魔法を使う人なのか。

少し考えて、木剣を置いたまま立ち上がった。

「戻る」

セーフティーゾーンを出る。

近くにいたノーゼスがクロードを見る。

「剣は?」

「置いてきた」

「今は魔法?」

「うん」

それだけ話して、クロードは右へ走った。

「ピア、こっち見る!」

「分かった!」

クロードは《印》を組む。

「《サンダーボール》!」

雷の球がオルディクへ向かう。

オルディクが避ける。

その動いた先へピアの水が飛んだ。

さらに向きを変える。

ランの土が進む場所を狭めた。

3人で先生を止めたわけではない。

それでも同じ場所にはいさせなかった。

反対側から声が上がる。

「ダルガン先生戻る!」

クロードが見る。

ダルガンが教師側のセーフティーゾーンから出ていた。

先生が4人へ戻る。

入れ替わるようにネノマがそちらへ下がり始める。

ダルガンが完全に戦場へ戻ってから、ネノマがセーフティーゾーンへ入った。

先生側も、常に1人だけが休んでいる。

休む人が変わるたび、戦場にいる先生も変わる。

クロードたちも同じだった。

しばらくすると、ノーゼスが後ろへ下がってきた。

肩で息をしている。

「俺、次休む」

「空いてるよ」

エクリアが言った。

ノーゼスは生徒側のセーフティーゾーンへ入った。

持っていた木剣を置く。

少し遅れてタンガも入った。

また2人で埋まった。

戦場には7人が残る。

クロードは右側から中央を見る。

エクリアとヤンナが少し後ろへ下がっていた。

ピアもそこへ寄る。

3人が短く話し始める。

クロードも近づいた。

「今、先生が右へ寄ってない?」

エクリアが言う。

「ダルガン先生が戻ってから寄った」

ヤンナが答える。

「左から行ったら?」

ピアが結界の反対側を見る。

クロードも先生たちの位置を見る。

確かに右側へ3人いる。

ネノマだけが休んでいる。

「じゃあ――」

言いかけたところで、前からリーゼの声が飛んだ。

「まだ話すの!?」

リーゼは木剣を持ってトルシアを相手にしていた。

少し離れたところではミナとランも動いている。

前に残っている人数が少ない。

「きついんだけど!」

タンガの代わりに前へ出ていたリーゼがもう1度叫ぶ。

エクリアが苦笑した。

「長く話してる場合じゃないわね」

「左から行く、それでいい?」

クロードが言う。

「いい」

「行こう」

4人が散った。

エクリアの風が先に飛ぶ。

ダルガンが避ける。

クロードは左へ走った。

ピアの水がトルシアへ向かう。

先生が動く。

ヤンナの光も別の方向から入った。

その間にリーゼが1度下がる。

「助かった」

「ごめん」

クロードが声を掛ける。

「次は早く決めて」

「うん」

相談している間も戦闘は止まらない。

話す時間を作るためには、誰かが前に残っていなければならない。

少ししてノーゼスが戻ってきた。

木剣は持っていなかった。

両手を空けたまま戦場を見る。

「今どこ見ればいい?」

「中央!」

ヤンナが答える。

「分かった!」

ノーゼスが《印》を組む。

《ロックボール》が飛ぶ。

ダルガンが避ける。

その先へリーゼが木剣で入った。

クロードはその動きを見ていた。

さっきまで木剣を持っていたノーゼスは、今は後ろから土魔法を使っている。

最初は木剣を持っていなかったリーゼが、今は前にいる。

30分の途中で役割が変わっていた。

タンガもセーフティーゾーンから戻ってきた。

こちらは木剣を持っている。

「クロード、左空いた!」

「分かった!」

クロードは魔法を作りながら位置を変える。

時間が経つほど、最初に誰が何をしていたのかはあまり意味がなくなってきた。

前へ出る人が変わる。

休む人が変わる。

木剣を持つ人が変わる。

先生も休んで戻ってくる。

戻ったばかりの先生は、それまで戦っていた先生より動きが軽く見えた。

「戻った先生、速い!」

ノーゼスが言う。

「休んでたからじゃない?」

エクリアが返す。

「ずるい」

「私たちも休んでるでしょ」

「そうだった」

ノーゼスが笑う。

すぐにまた先生が近づき、笑っている余裕はなくなった。

クロードも再び息が上がってくる。

1度休んだからといって、最後まで楽になるわけではない。

それでも最初からずっと戦っていた時より足は動いた。

結界の外からフィオネの声が飛ぶ。

「残り、あと少しです!」

クロードは外を見る余裕もなく、目の前のトルシアを見る。

もう休まないで最後まで行くか。

もう1度休んでから戻るか。

セーフティーゾーンには今1人いる。

まだ1人入れる。

クロードは少し考えた。

足は重い。

魔力も最初より減っている。

でも、まだ動ける。

「このまま行く」

小さく呟く。

トルシアへ雷を放つ。

避けた先へタンガが入る。

反対側ではエクリアの風がネノマを動かしている。

ノーゼスの土がダルガンの進路を変える。

ピアの水が飛ぶ。

ヤンナの光が入る。

ミナも別の場所から水を使う。

ランの土が地面を変える。

リーゼは木剣を持ったまま風も使っている。

誰が攻撃役で、誰がサポート役なのか。

今はもう、最初のようには分けられなかった。

先生へ近づいていた人が下がる。

後ろにいた人が前へ出る。

また別の人が休みに入る。

先生も1人下がり、別の先生が戻ってくる。

そのたびに9人は声を掛け合った。

やがて終了を告げる声が第2運動場へ響いた。

「そこまで!」

クロードは作りかけていた《印》を解いた。

先生たちも動きを止める。

クロードはその場で大きく息を吐いた。

足が重い。

腕もだるい。

それでも30分が終わったと分かった瞬間、少しだけ笑った。

「長かった……」

ノーゼスが近くまで歩いてくる。

「10分と全然違う」

「うん」

エクリアも戻ってきた。

途中から木剣を持っていたリーゼは、それをセーフティーゾーンへ返している。

ノーゼスも置いた木剣を見た。

「俺、最後は持ってなかったな」

「最初は持ってたのにね」

クロードが言う。

「途中からいらなくなった」

「私は途中から持った」

リーゼが言った。

「先生も分かんなかったんじゃない?」

「途中で変わるからね」

クロードは結界の外を見る。

ザナトスたち9人がずっとこちらを見ていた。

戦っていた自分たちとは違うものが見えていたのだろうか。


◇


30分の演習が終わると、18人全員が結界の外へ集まった。

演習に入っていた9人は水を飲み、息を整えながら座る。

先生4人も同じように休んでいた。

フィオネが全員を見回す。

「ここからは、さっきの30分について話しましょう」

戦っていた側と、外から見ていた側が向かい合うように集まった。

「まず中にいた人から、気づいたことを話してください」

少し間が空く。

最初に口を開いたのはノーゼスだった。

「休みたい時に休めない」

何人かが笑った。

「いや、本当に」

ノーゼスは真面目な顔をしている。

「俺が休みたい時、もう2人入ってた」

「私もあった」

ピアが頷く。

「だからもう少し動かなきゃって思ったけど、その分あとで余計に疲れた」

タンガも腕を回しながら言う。

「後ろで話してる時もきつかった」

エクリアが少し申し訳なさそうに笑う。

「長かった?」

「長かった」

「そんなに話してないわよ」

「前にいる方は長く感じるんだって」

クロードも頷いた。

「話してる間も先生は止まらないからね」

ランが続ける。

「でも話したあと、少し動きやすくなった時もあった」

「うん」

ヤンナも頷く。

「だから話さない方がいいわけでもないと思う」

中にいた9人から、次々に声が出る。

休んだあとに戻る場所が分からなかったこと。

戻った時には先生の位置が変わっていたこと。

先生が1人休んでも、思ったほど楽にならなかったこと。

木剣を持ち替えたことで動き方が変わったこと。

クロードも、自分が休んだあと木剣を置いて戻ったことを話した。

「休んでる時に右側が少ないのが見えたから、魔法だけでそっちに行った」

フィオネが頷く。

「では、外から見ていた人はどうでしたか?」

今度はザナトスがすぐに手を上げた。

「中の人、めちゃくちゃ片方に寄ってた」

クロードたちがザナトスを見る。

「いつ?」

ノーゼスが聞く。

「何回も」

「何回も?」

「うん」

ザナトスは大きな結界の片側を指す。

「先生1人追いかけて、みんなそっち行ってた時あった」

クロードは思い返す。

自分たちの中では、先生が次々変わっていた。

全員で1人を追っているつもりはなかった。

「右側が誰もいない時もあったよ」

マミヤが言った。

「それは途中で気づいた」

エクリアが答える。

「外からだと、もっと前から空いてた」

クロードは少し驚いた。

自分が気づいたのは、エクリアに中央へ寄りすぎだと言われたあとだった。

外からは、その前から見えていたらしい。

ベンが手を上げる。

「先生が休む前、少し動きが減ってたように見えた」

「休む前から?」

ピアが聞く。

「うん」

ベンは教師側のセーフティーゾーンを見る。

「ずっとじゃないけど、さっきより後ろにいる時間が増えて、それから休みに行った先生がいた」

クロードは先生たちを見る。

戦っている時は、休みに入った瞬間しか分からなかった。

その前から変化があったのかもしれない。

「でも中だとそこまで見えないよ」

タンガが言う。

「目の前に先生いるし」

「外からだと見えるんだよ」

ガレスが答えた。

「だから言ってる」

「それは分かってるって」

少し笑いが起きる。

今度はカイルが口を開いた。

「後ろで話してた時、4人固まってたよ」

クロードはエクリアたちを見る。

「4人?」

「クロードもいた」

「あ」

確かにいた。

クロード、エクリア、ピア、ヤンナで話していた。

その時、前にはリーゼたちが残っていた。

「外から見たら、前が急に少なくなった」

カイルが続ける。

リーゼがすぐに頷いた。

「少なくなってた」

「だからきつかったのか」

クロードが言う。

「だから言ったじゃん」

リーゼが少し笑った。

「まだ話すのって」

「ごめん」

「でも、そのあと動き変わったからいいけど」

中にいた時には、相談することばかり考えていた。

外から見れば、その間にどれだけ前が薄くなっていたかも分かる。

「先生が1人休んだ時も、みんな前に行ってたよね」

ミズーが言った。

ノーゼスが頷く。

「先生減ったから行けると思った」

「でもこっちも2人休んでた」

クロードが言う。

「外から見てても、人数が増えた感じはしなかった」

ミズーは少し考える。

「むしろみんな同じ方へ行ったから、反対が空いてた」

エクリアが腕を組んだ。

「中では先生が1人減った方ばっかり気にしてたかも」

「私も」

ヤンナが頷く。

フィオネはすぐに答えをまとめなかった。

「ほかにはありますか?」

ナーンやレクシア、トルトからも、外から見て気づいたことが出てくる。

誰が休んでいる時に前が薄くなったか。

戻った生徒が木剣を持った瞬間、先生の向きが変わったこと。

中の生徒同士が声を掛けても、離れすぎて聞こえていない場面があったこと。

反対に、中にいた側からも外からでは分からなかったことが出た。

射線に味方が入って魔法を止めたこと。

先生が近すぎて後ろを見る余裕がなかったこと。

休みたくても2人入っていて休めなかったこと。

外からなら空いて見えた場所へ、実際には魔法が飛んでいて入れなかったこと。

同じ30分を見ていたはずなのに、話を聞くほど違うものが出てくる。

クロードは黙って聞きながら、さっき自分が中で見ていた景色を思い出した。

自分では広い結界の中を何度も見たつもりだった。

それでも、外にいた人たちには別のものが見えている。

逆に、外からは分からなかったことも中にはあった。

トルシアが全員を見る。

「外から見た方が正しい、ということではありません」

「中にいた人にしか分からないこともあります」

フィオネも続ける。

「次の限は入れ替わります」

「今度は、さっき外から見ていた9人が中へ入ります」

クロードはザナトスたちを見る。

次は自分たちが外から見る側になる。

さっきまで外から色々なことを言われていた。

今度は、自分たちが何を見るのだろう。

授業終了の魔導の鐘が鳴った。

短い休みに入る。

クロードは大きな結界をもう1度見た。

30分戦った時には、あの中だけで精いっぱいだった。

次は同じ30分を、外から見ることになる。

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