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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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同じくらい

それから次に魔法実習があった日、クロードはノーゼスとエクリアと一緒に魔法演習場へ向かっていた。

この日の魔法実習も、続けて2限行われる。

クロードは歩きながら、前の夜にノートへ書いた一行を思い出していた。

同じくらいの魔力を、何度も出せるか確かめる。

そのために何を見ればいいのかを考えていると、隣を歩いていたエクリアが目に入った。

「エクリア」

「何?」

「前にノーゼスの土に水を混ぜた時、同じくらいの水を出そうとしてたよね」

エクリアが少し考える。

「ああ、あの時?」

「うん」

ノーゼスもこちらを向いた。

「泥になったやつ?」

「それも」

「あれは水が多すぎたのよ」

エクリアがすぐに返す。

「それで、次は最初と同じくらいにしたでしょ」

クロードが続ける。

「どうやって同じにしたの?」

エクリアは一度前を向いた。

「見て」

「見て?」

「手元の水の大きさを見ながら合わせたわ」

「ぴったり同じだった?」

今度は返事まで少し間があった。

「そこまでは分からない」

エクリアは自分の右手を見る。

「あの時も、これくらいだったかなってやってたし」

「たぶんって何回も言ってたよな」

ノーゼスが笑う。

「ノーゼスも言ってたでしょ」

「俺も?」

「言ってた」

クロードにも覚えがある。

水を少なく入れた土は、乾いたままの土よりまとまった。

多く入れれば泥になった。

けれど、その間を比べようとした時も、エクリアが出した水が本当に毎回同じだったかまでは分からなかった。

「クロードも同じなの?」

エクリアが聞いた。

「たぶん」

「たぶん?」

さっきの言葉を返され、クロードは少し笑った。

「同じくらい魔力を使ってるつもりなんだけど、雷の大きさも結果も揃わないから」

ノーゼスが頷く。

「この前も大きく見えたのあったしな」

「うん」

あの時は外へ出た雷を見ていた。

形が崩れた場所も見た。

けれど魔法になる前、自分がどれくらい魔力を出そうとしていたのかは、それほど見ていなかった。

魔力を感じる。

その言葉を、クロードは前にも教わっている。

まだ入学して間もない頃だった。

何もしない状態で自分の魔力を感じ、どんなふうに動いているのかを見ようとした。

使った魔力や、あとどれくらい使えるのかを知るためにも、自分の魔力を知ることが必要だとナターシャから教わった。

あの頃は、流れを感じられるかどうかばかり気にしていた。

今は、知りたいことが少し違う。

「何か思いついた?」

ノーゼスに聞かれ、クロードは頷いた。

「魔法を出す前も見てみる」

「何を見るの?」

「自分の魔力」

ノーゼスが少し首を傾げる。

エクリアはすぐには何も言わなかった。

「どれくらい出すか分かるの?」

やがてエクリアが聞いた。

「分かんない」

クロードは答える。

「だから確かめてみる」

演習場の入口が近づいてきた。

中ではすでに何人かの生徒が準備を始めている。

クロードたちも話を切り上げ、それぞれ自分の練習場所へ向かった。

トルシアとネノマも全体を見ながら、生徒たちの間を歩いている。

クロードが前に使った区画へ行くと、左右の壁と正面の的は使える状態になっていた。

鞄を後ろへ置き、教本とノートを取り出す。

やがて魔導の鐘が鳴った。

トルシアが全員を見渡す。

「前に続けていた練習がある人は、そこから始めてください」

「新しいことを試す時や、前より出力を上げる時は先に知らせること」

返事がいくつか重なった。

クロードも声を返す。

近くではノーゼスが教本を開き、自分の《ロックウォール》の頁を見ている。

エクリアも水と風の頁へ挟んでいた紙を確認していた。

クロードは右手を出す前に、一度下ろしたまま目を閉じた。

何もしない。

魔法を作ろうとしない。

自分の中にある魔力へ意識を向ける。

僅かな流れがある。

昔より、それを見つけるまで迷わなくなっていた。

そこから魔力を動かす。

いつもの《サンダーボール》で使っているくらい。

その感覚を覚えようとしてから、目を開けた。

《印》を組む。

青白い雷が手元へ現れる。

外へ伸びようとする光へ操作を合わせ、丸くまとめながら手順を続ける。

雷球が手元を離れ、正面の的へ飛んだ。

短い音を立てて消える。

クロードはすぐに次を始めなかった。

さっき魔力を動かす前に感じたものを思い出す。

もう一度、何もしない状態へ意識を戻した。

そこから、同じくらいのつもりで魔力を動かす。

《印》を組む。

今度も雷は大きく崩れず、的まで届いた。

クロードはノートへ短く書いた。

通常の量。

2回とも届いた。

その横へ、少し迷ってから別の言葉も足す。

出す前の感じも近い。

それが本当に魔力量まで同じだったのかは分からない。

ただ、今の自分にはそう感じた。

もう一度試す。

3回目も的まで届いた。

「クロード君」

顔を上げると、トルシアがこちらへ来ていた。

「今日は何を見ていますか?」

クロードはノートを持ち上げた。

「同じくらいの魔力を何回も出せるか見たいです」

「前回の続きですね」

「はい」

クロードは少し考えてから続ける。

「それで、魔法を使う前にも自分の魔力を感じてみてます」

トルシアはクロードの手元ではなく、顔を見る。

「何か違いは分かりましたか?」

「いつもの量は、今のところ近い気がします」

「気がする?」

「本当に同じかは分かりません」

クロードが答えると、トルシアは小さく頷いた。

「では、そう感じたことと結果を分けて残しておいてください」

「はい」

「外から見える魔法だけで、使った魔力が完全に同じだったとは私にも言えませんから」

その答えを聞いて、クロードは頷いた。

分からないところまで分かったことにはしない。

トルシアは近くで練習している生徒へ視線を向けた。

「出力を変える時には呼んでください」

「分かりました」

トルシアが離れていく。

クロードはすぐに出力を上げず、もう2回いつもの《サンダーボール》を使った。

どちらも的まで届いた。

自分の中の感覚も大きくは違わない。

ここまでは基準に出来そうだった。

クロードは少し休み、水を飲む。

ノートへ結果を書いてから、トルシアが近くへ戻ってくるのを待った。

その間にも演習場のあちこちでは魔法が使われている。

マミヤが風を消して教本へ目を落とし、少し離れたところではベンがネノマと何かを確認している。

ノーゼスの前には、横幅を抑えた土壁が出来ていた。

前より端が厚く見える。

ノーゼスは正面から眺めたあと、横へ回って根元を見ていた。

エクリアは水の練習を続けている。

それぞれが前にやっていたことの続きを、自分の場所で進めていた。

しばらくしてトルシアが戻ってくる。

「次は増やしますか?」

「はい」

クロードは頷いた。

「前に届いたくらいをやります」

「どうぞ」

土壁の間へ戻る。

今度は《印》を組む前に、自分の中へ意識を向けた。

何もしない時の魔力を感じる。

そこから、いつもの量より少し多く動かす。

前に成功した時と同じくらい。

そう思ったところで、クロードは少し止まった。

さっきまでとは違う。

いつもの量から増やした分が、自分の中でも少し大きい気がした。

「……多いかも」

右手を上げず、そのまま魔力を動かすのを止める。

トルシアが聞く。

「どうしました?」

「今、前より多く出そうとした気がします」

「まだ魔法にはしていませんね」

「はい」

クロードは自分の手を見る。

雷は出ていない。

それでも、いつもの量から増やした時の感覚が、放課後に何度も試したものより大きかった気がする。

「もう一度やります」

今度は一度何もしない状態へ戻す。

そこから、少しだけ増やす。

さっきより小さい。

前に繰り返していた時に近いように思えた。

《印》を組む。

雷が現れる。

右側が少し膨らみ、クロードはそこへ操作を合わせた。

下側も揺れる。

崩れる前に戻し、そのまま手順を続ける。

丸い雷が前へ飛んだ。

途中で輪郭が少し乱れたものの、的まで届いた。

クロードは息を吐いた。

ノートへ戻り、今の結果を書く。

出す前は近い感じ。

的まで届いた。

もう一度。

今度も同じくらいを狙う。

何もしない状態から魔力を動かしたところで、さっきより少しだけ強く動いた気がした。

ただ、最初に止めた時ほどではない。

クロードは迷った。

「やってみるの?」

トルシアが聞いた。

「はい」

《印》を組む。

青白い雷が現れた瞬間、いつもより外へ大きく伸びた。

右を戻す。

上からも細い雷が伸びる。

そちらへ操作を合わせた直後、反対側が大きく乱れた。

バヂッ。

クロードは魔法を止めた。

雷が消える。

「……やっぱり多かったのかな」

すぐにノートへ書く。

出す前から、少し多い気がした。

手元で崩れた。

トルシアが横からノートを見る。

「前より多く感じた時に崩れた」

「はい」

「それだけなら、次に見るものは増えましたね」

クロードは頷いた。

「でも、これだけじゃまだ分からないです」

「そうですね」

トルシアはそれ以上答えを足さなかった。

クロードもすぐ次を始めず、右手を下ろして休んだ。

そのあとも、同じ出力帯を何度か試した。

出す前から少し多いと感じる時。

前の成功に近いと思える時。

よく分からない時。

全部を同じ言葉にはせず、そのままノートへ残していく。

結果も揃わなかった。

多い気がした時に手元で崩れたものがある。

近いと思った時に的まで届いたものもある。

少しずつ並べていくうちに、昨日までより見える違いが増えていった。

けれど、まだ一つには決められない。

やがて最初の1限が終わる魔導の鐘が鳴った。

クロードは右手を下ろし、土壁の間から出た。

ネノマが全員へ休むよう声を掛け、生徒たちもそれぞれ魔法を止めていく。

クロードは水を飲んでから、その場へ座った。

「どう?」

ノーゼスがやって来る。

「違う時はあるかも」

「魔力?」

「うん」

クロードはノートを見せた。

「多い気がした時に、崩れたのがあった」

「じゃあ、それが原因?」

ノーゼスが聞く。

クロードは首を振った。

「まだ分かんない」

エクリアも水を飲みながら近づいてきた。

「同じくらいだと思った時は?」

「届いたのもある」

「なら揃えればいいんじゃない?」

「そうかもしれないけど」

クロードはノートをめくる。

「まだ回数少ないから」

エクリアが頷いた。

「私の水もそうだったわ」

「水?」

「前に土へ入れた時」

エクリアは自分の手を見る。

「見た目を合わせても、本当に同じかは分からなかったし」

ノーゼスが笑う。

「またたぶんばっかだったもんな」

「だからノーゼスも言ってたでしょ」

「それはもう分かったって」

クロードは2人のやり取りを聞きながら、ノートへ視線を戻した。

最初より、比べたいものは少し見えてきた。

でも、まだ片方しか確かめていない。

「ノーゼスの壁は?」

クロードが聞く。

ノーゼスは自分の練習場所を見る。

「端を厚くした」

「どうだった?」

「前より崩れにくそうだけど、真ん中との厚さが変になった」

「また作る?」

「作る」

ノーゼスはすぐに答えた。

エクリアも自分の場所へ戻ろうとする。

「風?」

クロードが聞く。

「次はね」

「水は?」

「何回かやったから、休んでから風にする」

短い休みの間にも、それぞれ次にやることは残っていた。

クロードも水をもう少し飲み、右手を休ませた。


◇


次の実習が始まると、クロードはすぐに高い出力へ戻らなかった。

最初に通常の《サンダーボール》を1回使う。

形を崩さず、的まで届いた。

自分の中で感じた魔力も、最初の1限で基準にしたものと近い。

そこから、少し多い出力へ移る。

前半で成功した時に近い感覚を探す。

魔力を動かす。

今のところは、近い気がする。

《印》を組んだ。

雷が現れ、左側へ少し伸びる。

そこを戻す。

下側も揺れたが、大きくなる前に抑えられた。

丸くまとまる。

手元を離れ、的まで届いた。

クロードは結果を書く。

もう一度。

何もしない状態へ戻ってから、自分の魔力を感じる。

そこから同じくらいを動かす。

今も近い。

少なくとも、さっきより多いとは感じない。

《印》を組む。

雷が現れる。

最初は丸くまとまりかけた。

右側が揺れる。

クロードが戻す。

その間に上が伸びる。

上を戻そうとすると、今度は下から細い雷が外へ走った。

1つを直している間に、別の場所が変わる。

クロードは手順を続けようとしたが、輪郭が大きく崩れた。

すぐに魔法を止める。

青白い光が消えた。

クロードは右手を下ろしたまま動かなかった。

今のは、出す前から多いとは感じなかった。

その前に成功した時とも、かなり近かったと思う。

それでも崩れた。

ノートへ戻る。

『量は近いと思った』

そこまで書き、次の行へ続ける。

『形は途中で崩れた』

クロードは2つの行を見比べた。

同じように近いと思ったものでも、片方は届き、片方は崩れている。

「先生」

近くを巡回していたネノマが振り向く。

「どうしました?」

クロードはノートを持ったまま話す。

「今の、魔力は前に成功した時と近いと思ったんです」

「でも崩れた?」

「はい」

ネノマはノートと正面の的を順に見る。

「どこで崩れました?」

「手元で右を直したあと、上と下が続けて動いて、それで間に合わなくなりました」

「魔力を出した時には?」

クロードは少し考えた。

「多いとは感じませんでした」

「分かりました」

ネノマはそれだけ聞くと、少し離れたところにいたトルシアへ声を掛けた。

トルシアがこちらへ来る。

クロードはもう一度同じ説明をした。

トルシアはすぐに答えを出さなかった。

「前半には、いつもより多く感じた時に崩れたものもあったんですね?」

「はい」

「今は、近いと思ったのに崩れた」

「はい」

クロードは自分の記録を見る。

並べれば違いが分かる。

けれど、それだけで原因までは決まらない。

「じゃあ、魔力の量だけじゃない?」

クロードが聞いた。

「そう決めるのもまだ早いですね」

トルシアが答える。

「あなたが近いと感じたことと、本当に完全に同じ量だったことは別です」

「……そっか」

「ただ、今までの失敗を全部同じものとして見る必要もなさそうです」

クロードは顔を上げた。

「違う失敗?」

「少なくとも、あなた自身が違いを感じたものがあります」

トルシアはノートを示す。

「多く感じた時と、近いと感じた時です」

クロードは書いた2つの結果を見る。

外へ出た雷だけを見れば、どちらも途中で崩れた失敗だった。

けれど、そこまでに自分が感じたことは同じではない。

「このあとは、どうしますか?」

トルシアに聞かれる。

クロードは少し考えた。

もっと魔力を増やす。

その選択はすぐに消えた。

今はまだ、増やすところではない。

「近いと思う量を、もう何回かやります」

「何を見る?」

「魔力と、雷の形」

「ではそれで」

トルシアとネノマはほかの生徒のところへ戻っていった。

クロードも水を飲み、少し休んでから練習を再開した。

同じくらいだと思える魔力を出す。

《印》を組む。

雷の形を見る。

1回は的へ届いた。

次は、手元では形になったが放ったあとで崩れた。

その次は、途中で右側が大きく乱れ、自分から止めた。

もう1回は、最後まで的へ届いた。

成功か失敗かだけではなく、その前に自分がどう感じたのかも書いていく。

すべてをはっきり分けられるわけではない。

「よく分からない」と書いた回もあった。

それでも、前より記録することは増えた。

少し離れたところでは、ノーゼスが新しい壁の端を見ていた。

厚くした端を押し、今度は中央へ回る。

そこから少し離れて全体を眺めている。

前より丈夫になったとすぐ決めるのではなく、違うところを探しているらしい。

エクリアは水の練習を終え、風へ移っていた。

何度か《印》を組み直しながら、同じ魔法を繰り返している。

トルシアとネノマも1人のところへ留まらず、生徒たちの間を行き来していた。

クロードのところへ戻ってくるまでにも、クロードは何度か休みながら試行を続けた。

やがて右手へ重さを感じ始める。

まだ使えなくなるほどではない。

けれど始めた時と同じでもない。

クロードは次を始めず、水を飲んだ。

ノートを開く。

通常の量は揃いやすい。

少し増やしたところでは、自分でも多いと感じる時がある。

そういう時に崩れたものもあった。

近いと思った時でも、崩れたものがある。

クロードは鉛筆を止めた。

魔力の量が毎回揃っていないことはありそうだった。

でも、それだけで全部の失敗を説明することは出来ない。

少なくとも、今の自分にはそう見える。

そこまで考えたところで、終わりを告げる魔導の鐘が鳴った。

クロードは顔を上げた。

周囲でも魔法が止まり、生徒たちが片づけを始める。

クロードもノートへ最後の2行を書いた。

『魔力の量が違う時はありそう』

『近いと思っても、形が崩れる時がある』

書き終えてから、その2つを見た。

昨日までは、どれも同じ失敗に見えていた。

高い出力にすると、雷の形を保てない。

それは変わっていない。

ただ、その中にも違いがある。

クロードはノートを閉じた。

《サンダーボム》は、まだ遠い。

それでも何が出来ていないのかは、前より少しだけ見えるようになっていた。

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