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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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1限目が終わると、クロードは教本とノートを鞄へ戻し、ノーゼスたちと魔法演習場へ向かった。

続く2限目と3限目が、2年になって最初の魔法実習だった。

廊下を抜けて外へ出ると、前を歩いていたガレスとタンガが何かを言い合いながら笑っている。

その後ろでエクリアは、教本から少しだけ出ていた紙を指で押さえた。

水と風の頁へ挟んだものだった。

「今日は新しいの使うのかな」

ノーゼスが言った。

「まず今の状態を見るって、ナターシャ先生が言ってたでしょ」

「それは覚えてる」

「じゃあ、行けば分かるわよ」

エクリアは教本を鞄へしまった。

「クロードはボム?」

「うん」

聞かれて、クロードも頷く。

《サンダーショック》の《印》は、教室を出たあとも何度か確かめていた。

けれど実際に魔力を使ったわけではない。

どんな魔法なのかは気になるが、その前から続けてきた《サンダーボム》も気になっている。

今日は、実際に使って確かめられる。

演習場へ着くと、2人の女性教師が待っていた。

片方は教本を閉じて生徒たちへ向き直り、もう片方は集まってくる顔を見ながら少し前へ出る。

「もう少しこちらへどうぞ」

はっきりした声だった。

クロードたちが近づく間にも、後ろから来たマミヤとリーゼが話をやめ、空いているところへ並んだ。

やがて魔導の鐘が鳴る。

教本を持った女性が、姿勢を崩さずに全員を見渡した。

「トルシア・ラズサートです」

「2年の魔法実習を担当します」

隣の女性も口を開いた。

「補助を務めるネノマ・サータスギリーです」

「よろしくお願いします」

トルシアより若く見え、挨拶に返された生徒たちの声へ、ネノマはしっかり頷いた。

「皆さんのこれまでの様子は、ガンザス先生とマレーナ先生から伺っています」

トルシアが続ける。

「ただ、私たちにも実際の魔法を見せてください」

ガレスが手を挙げた。

「この前、魔法基礎で習ったものも使うんですか?」

「そちらへ進む前に、今まで使っていたものから見ます」

トルシアはガレスだけでなく、その近くにいた生徒たちにも視線を向けた。

「使えるものと、まだ練習しているものを教えてください」

「新しいものを試す時や出力を変える時は、先に声を掛けること」

何人かが頷き、クロードも返事をした。

ネノマが生徒たちの立つ場所を分け、前方の的と隣の練習場所との間隔を確かめていく。

クロードはトルシアに呼ばれた。

「雷を使うのはこちらです」

示された場所は、左右を厚い土壁で隔てられていた。

正面は開いており、その先に的がある。

「壁と周囲は確認してあります」

トルシアが的の向こうまで目を向ける。

クロードも一緒にそちらを見た。

前を横切る人はいない。

「まず教本を出して待っていてください」

「はい」

クロードは鞄を練習する場所の後ろへ置き、教本を取り出した。

その間にネノマが近くの生徒たちへ順に声を掛けている。

ノーゼスのところで足が止まった。

「何を見せてくれますか?」

「《ロックウォール》です」

ノーゼスは開いた教本を見せてから、すぐに地面へ向き直った。

《印》を組むと土が集まり始め、根元に厚みを残しながら壁になっていく。

途中で端へ少し土を寄せたものの、ノーゼスの手は迷わなかった。

出来上がった壁を見てから、ネノマが尋ねる。

「前から練習していたんですね」

「はい」

ノーゼスは教本の図と自分の壁を見比べた。

「今日は、これより横に広く作ってみたいです」

「高さは今と同じくらいで?」

「はい」

ネノマは壁の横へ回り、厚みを確かめてからノーゼスを見た。

「では、そのつもりで作るところも見せてください」

ノーゼスが頷く。

その声を聞いていたクロードは、以前ノーゼスと放課後に壁を作った時のことを少し思い出した。

最初は高さを作るだけでも何度も崩れていた。

今、目の前に立っている壁は崩れない。

ノーゼスが見ているのも、もう出来上がった壁だけではなかった。

「クロード君」

トルシアに呼ばれ、クロードは教本を持ち直す。

「こちらも始めましょうか」

「はい」

「《サンダーボール》と《サンダーアロー》は使えると聞いています」

「出力を抑えれば使えます」

「では、普段使っている程度で《サンダーボール》をお願いします」

教本を置いて土壁の間へ入り、クロードは右手を前へ出した。

《印》を組むと、掌の近くへ青白い雷が現れる。

細い光をまとめ、外へ動きかけたところへ操作を合わせながら、手を次の動きへ進めた。

丸くなった雷が手元を離れる。

最後まで《印》をつなぐと、雷球は正面へ飛び、的に当たって消えた。

クロードが手を下ろす。

後ろから見ていたトルシアは、的を確かめてからこちらを見た。

「もう1度、同じくらいで」

「はい」

2回目も、形を崩さず的まで届けられた。

《印》の順番を思い出すために手を止めることもない。

昔はこの短い流れの中で雷を丸くすることさえ出来なかった。

今は、雷の動きを見ながら最後まで続けられる。

「《サンダーボム》で困っているのは?」

トルシアが聞いた。

「出力を上げるところです」

クロードは《サンダーボム》の頁を開いた。

「これに必要な出力にすると、球を保てなくなります」

「それはボムだけですか?」

「ボールとアローも同じです」

トルシアが少しだけ顎を引き、教本からクロードの手元へ目を移した。

「では、今はボールのままで比べましょう」

「《サンダーボール》でいいんですか?」

「出力を上げた時にどう変わるのかを見るなら、こちらでも確かめられるでしょう」

クロードはさっき雷を当てた的を見る。

確かに、ボムだけで起きていることではない。

使う魔法まで変えなくても、出力を変えれば同じところで困る。

「はい」

「少し増やしてみてください」

クロードはもう1度土壁の間へ立った。

最初から込める魔力を、さっきより少し多くする。

《印》は変えない。

雷を出してまとめ始めると、右側の輪郭が外へ膨らんだ。

そこへ操作を合わせる。

戻ったと思う間に、上側からも細い雷が伸びる。

クロードがそちらを抑えた直後、右側がもう1度大きく乱れた。

バヂッ。

雷が弾け、丸くなりかけた形が消えた。

「……また右だ」

クロードは右手を下ろす。

トルシアはすぐには次を促さず、クロードが振り向くのを待っていた。

「今は、どこを直そうとしていましたか?」

「最初に右を戻して、そのあと上です」

クロードは雷があった辺りを見る。

「でも、上を直してる間に右から出ました」

「こちらからも、最後に大きく崩れたのは右に見えました」

見えていた場所は同じだった。

気づかなかったわけではない。

少ない出力なら戻せる変化に、同じようには間に合わなくなる。

トルシアにもう1度見てもらったが、今度は下側を戻している間に左が崩れた。

毎回同じところへ先に手を回しておけば済むわけでもない。

クロードは魔法を止め、少しの間、自分の手を開いていた。

「増やしたのは、どのくらい?」

トルシアに尋ねられ、クロードは少し考える。

「いつものより少しです」

「その少しを、もっと小さく出来ますか?」

クロードは返事をしかけて止まった。

少しずつ変えているつもりだった。

ただ、思い浮かべていたのは《サンダーボム》を使うための出力だった。

そこへ近づけようとすると、自分で少しと思っている量でも、保てていた時とは随分違うのかもしれない。

「やってみます」

「先に手を休めてください」

上げかけた右手を下ろすと、トルシアはネノマの方へ視線を向けた。

「休んだあとは、先ほど的まで届いた量で繰り返していてください」

「また増やす時に呼びます」

クロードが答えると、トルシアは頷いてほかの生徒のところへ向かった。

クロードは壁の間から出て水を飲んだ。

教本の横へノートを広げ、さっきまでに使った魔法と崩れたところを短く書く。

同じ《サンダーボール》でも、魔力を増やしたあとの2回は的へ放つところまで進めていない。

その間にある、もっと小さな違いで比べたい。

すぐに手を動かしたくなったが、水をもう1口飲み、しばらく座っていた。

少し離れたところでは、エクリアが水の魔法を終えてトルシアと話している。

教本をめくり、今度は風へ切り替えるらしい。

ノーゼスの前には、さっきより横へ広がった壁があった。

端の一部が低くなっており、ネノマとそこを見比べている。

マミヤとリーゼは間を空けて交代しながら的へ風を放ち、カイルは手元を見てから教本へ何かを書き込んだ。

クロードも休み終えると、自分の場所へ戻った。

今度は普段使う出力で《サンダーボール》を作る。

右側が少し揺れたものの、戻してから最後の《印》へつなぐと、そのまま的まで届いた。

次も同じ程度で使う。

それも出来た。

ただ成功したことだけではなく、この時はどこまで操作を合わせられたのかを覚えておく。

何度か繰り返したあとに手を休め、教本でボールとボムの説明を読み直した。

トルシアはエクリアのところを離れ、ザナトスの火を見たあと、ほかの生徒の方へ回っている。

クロードも急いで呼び戻さず、許可された出力での練習と記録を続けた。

やがて2限目の終わりを告げる魔導の鐘が鳴った。

「いったん止めましょう」

ネノマの声で、まだ動いていた生徒たちの手も下がっていく。

クロードもノートを置き、右手をゆっくり開いた。


◇


「ボムは?」

水を飲んでいるところへノーゼスが来た。

「今日はボールでやってる」

「ボムじゃなくて?」

「出力を上げると、ボールでも崩れるから」

「ああ」

ノーゼスは左右の土壁の間を見た。

「じゃあ、強いの作ってるのか」

「少し増やしたら駄目だった」

「どのくらい?」

聞かれて、クロードは少し笑った。

「先生にも聞かれた」

「で?」

「少しって答えた」

「それじゃ分かんないだろ」

「うん」

今度はノーゼスも笑った。

「ノーゼスの壁は?」

「広くしたら、端を揃えにくくなった」

ノーゼスが自分の練習場所へ目を向けた。

「高さは変えてないんだけどな」

「土も増やすの?」

「増やすけど、真ん中に寄りすぎるんだよ」

クロードが壁を見ようと身体を起こすと、ノーゼスが先に言った。

「見るのはあとでな」

「まだ何も言ってないよ」

「立ちそうだった」

そこへエクリアもやって来た。

「2人とも、少しは休んだら?」

「休んでるよ」

クロードが答える。

「ノーゼスの壁の話してただけ」

「見に行きそうだったけどな」

「ノーゼスまで」

エクリアが笑い、クロードも水を飲んだ。

ノーゼスは隣へ腰を下ろすと、広げていた教本をいったん閉じた。


◇


3限目が始まると、ネノマが全員の様子を見て回り、トルシアはクロードのところへ来た。

「手は休まりましたか?」

「はい」

「さっきの続きはどうでした?」

「いつもの量なら、的まで届きました」

クロードはノートを見せた。

トルシアは並んだ記録へ目を通してから頷く。

「では、その量からもう少しだけ変えてみましょう」

クロードは教本とノートを置き、土壁の間へ入った。

さっき失敗した量を思い出し、そこから減らそうとして、もう1度考え直す。

まず思い出すのは、形を保てていた時の方だ。

そこからわずかに増やす。

《サンダーボム》に必要なところへ近づけようとはしない。

今の量との違いが小さくなるように意識してから、《サンダーボール》の《印》を組んだ。

雷が現れる。

掌の近くで細い光がまとまり始め、左側が少し膨らんだ。

そこを戻す間に上側が揺れたが、今度は大きく伸びる前に操作を合わせられた。

まだ残っている。

手はそのまま次へ進む。

丸い輪郭が出来た。

クロードは《印》を止めず、最後までつないだ。

手元を離れた雷球が、的へ向かって飛ぶ。

途中で輪郭が乱れ、細い雷が外へ跳ねた。

クロードは魔法を止めた。

的へ届く前に雷が消える。

「今のは、手元では形になっていましたね」

トルシアが言った。

「はい」

クロードは雷が消えた場所を見る。

「でも、飛ばしたら崩れました」

「増やした量は?」

「さっきより少なくしました」

トルシアは少し考えてから、クロードへ視線を戻した。

「今と同じくらいでもう1度」

クロードは頷いた。

もっと増やしてみるのではなく、今の量をもう1度思い出す。

《印》を組むと、今度は右側が先に乱れた。

すぐに戻そうとしたが、反対側も続いて膨らみ、丸くなる前に雷が弾けた。

「……今度は駄目でした」

クロードは手を下ろした。

「同じくらい使ったつもりなんですけど」

「では、そのつもりだったことも残しておいてください」

トルシアはノートへ目を向ける。

「2回とも、同じところまで進んだわけではありませんから」

クロードは短く書き足した。

手元で形が出来て、飛ばす途中で崩れた。

次は手元で崩れた。

前の2回より先まで進んだものはある。

けれど、使う量を少し変えただけで毎回出来るようになったわけではなかった。

もう1度試すと、雷は丸い形へまとまった。

手元を離れるところで下側が揺れる。

クロードはそこへ操作を合わせ、最後の《印》を崩さずにつないだ。

雷球が前へ飛ぶ。

途中で少し輪郭が乱れたものの、そのまま的へ届いた。

短い音が鳴り、光が消えた。

クロードはしばらく的を見ていた。

「……当たった」

「届きましたね」

トルシアの声を聞いて、自分の右手を見る。

いつもの出力なら、さっきも何度か出来た。

今使った魔力は、その時より多い。

それでも形を作り、的まで届かせられた。

「もう1回やってみます」

クロードが言うと、トルシアは頷いた。

「同じくらいで」

「はい」

次は球を放つところまで進んだが、的の手前で形がほどけた。

クロードはすぐに魔法を止める。

出来た直後だっただけに、少し残念だった。

けれど、もう1段出力を上げていたら何を比べているのか分からなくなっていたはずだ。

同じくらいのつもりでも、まだ続かない。

クロードはその結果も書き、手を休めた。

トルシアは立ち上がると、少し離れたネノマに声を掛けた。

「クロード君は、今の量で繰り返すところまで進みました」

ネノマがこちらへ来る。

「次はこちらで見ますね」

「お願いします」

トルシアは別の場所で待っていた生徒のところへ向かった。

ネノマはクロードのノートを覗き込み、並んだ結果を見る。

「この間に量を増やしたんですね?」

「はい」

クロードは最初に試したところと、そのあとで増やし幅を小さくしたところを指した。

「今は同じくらいでやってるつもりです」

「分かりました」

ネノマは顔を上げ、壁の間と正面の的を確かめた。

「休み終わってから見せてください」

クロードはすぐに立たず、水を飲んだ。

向こうではトルシアがノーゼスの壁を見ている。

ノーゼスは教本を指してから、両手を少し広げた。

それから壁の端を示し、何かを説明している。

エクリアは風の練習を終え、教本へ挟んだ紙をもう片方へ移した。

水も風も、その日1回見せたら終わりというわけではないらしい。

クロードもノートへ目を戻す。

自分の記録には、まだ失敗したものの方が多かった。

少し休んでから、再び土壁の間に立つ。

ネノマはクロードの斜め後ろへ下がった。

「どうぞ」

《サンダーボール》の《印》を組む。

左側から外へ伸びかけた雷を戻し、そのまま次の手順へ進んだ。

上側が揺れる。

そちらを直している間にも、右側の輪郭が動いた。

クロードは手を止めない。

小さく戻し、形が整ったところから続ける。

雷球が前へ飛んだ。

今度は的のすぐ手前で大きく膨らみ、クロードが止める方が早かった。

「あと少しだったのに」

手を下ろすと、ネノマがこちらを見た。

「今のは自分で止めましたね」

「はい」

「その判断は、続けてください」

クロードは頷いた。

届きそうだからと無理に残したかったわけではない。

大きく崩れ始めた雷を、今の自分では戻しきれないと思った。

その次は手元で崩れ、もう1度やると、放つところまでは続いた。

ネノマに見てもらいながら、終えるたびに何が起きたのかを短く話す。

指へ力が入りすぎていることに気づいた時は、いったん腕を下ろした。

ノートに書いている間に、ネノマが近くのカイルへ声を掛ける。

そこでも1度魔法を使うだけでは終わらず、教本を確かめてからもう1度やり直していた。

クロードも、記録を書いたからすぐ次を撃つのではなく、自分の魔力と身体の重さを確かめた。

まだ試せる。

ただ、始めた時より疲れている。

水を飲んでしばらく手を休めてから、そのことを戻ってきたネノマへ伝えた。

「では、あと1回見ましょう」

「はい」

「そのあとは休んで、記録を見直してください」

クロードはもう1度《印》を組んだ。

さっきの成功で直した場所を順番に思い出すのではなく、今動いている雷を見る。

左が揺れたところへ合わせる。

戻った輪郭の下側が膨らみ始め、そちらも大きく崩れる前に抑えた。

丸くまとまる。

そのまま《印》を最後まで続けた。

雷球が的へ向かって飛ぶ。

クロードはその形を追い続けた。

的に当たるまで、雷はばらばらにはならなかった。

音が鳴ってから、クロードはようやく息を吐く。

「2回目」

小さく言うと、ネノマが頷いた。

「少し増やしてからは、2回ですね」

「はい」

クロードは手を下ろした。

もう1回なら出来るかもしれない。

そう思ったものの、右手を上げ直さず、ノートのところへ戻った。

少し多くしても届いた。

その次には届かなかった。

休んでからも何度か失敗し、それでも今、また的まで届けられた。

順番に見直すと、出来た2回だけを覚えて帰るわけにはいかなかった。

その間に崩れた時のことも、まだ気になっている。

「次に練習する時は、どうしますか?」

戻ってきたトルシアに聞かれ、クロードは顔を上げた。

「今と同じくらいを、もう1度やりたいです」

「では、その量で出来た時と崩れた時の両方を覚えておいてください」

トルシアは、途中で崩れたと書いてある行へ指を置いた。

クロードもその行を見た。

クロードも記録へ視線を戻した。

もっと増やせるかは分からない。

今の量だって、毎回揃えられているとは言いきれない。

まずは、これで形を保てる回を増やしたかった。

トルシアはほかの生徒たちを見回し、クロードも座ったまま練習の音を聞いていた。

ネノマがベンとヤンナの間を移動し、光が消えるのを待ってから何かを尋ねている。

ノーゼスは壁の端へ寄せた土を戻して、少し離れたところから全体を見た。

教本へ戻る者もいれば、手を休めながら教師の話を聞いている者もいる。

やがて3限目の終わりを告げる魔導の鐘が鳴った。

トルシアが実習の終了を告げると、生徒たちはそれぞれ使った場所を片づけ始めた。

クロードも教本とノートを鞄へしまい、足元を確かめてから土壁の間を出た。

ノーゼスはまだ、広げた土を戻しているところだった。

近くまで行って待っていると、先に片づけを終えたエクリアも来た。

「どうだった?」

エクリアが聞く。

「少し増やしたので、2回届いた」

「ボム?」

「ボール」

ノーゼスが土を戻しながら答えた。

「強いボールを作る練習してたんだって」

「少しだけね」

クロードが付け足すと、ノーゼスが顔を上げる。

「また少しか」

「前より増やし方を小さくしたんだよ」

「少しより少し?」

「……分かんなくなってきた」

エクリアが笑った。

「じゃあ、次もそれ?」

「うん」

ノーゼスが最後の土を戻し、手についた汚れを落とした。

「よし、飯行こう」

鞄を持って、3人で演習場を出る。

少し前ではガレスたちも昼食の話をしていた。

クロードは歩きながら、もう1度だけ的へ目を向けた。

今日は届いた時の感覚を忘れたくない。

けれど今から戻って試すつもりはなく、そのまま2人の隣を歩いた。

「午後、眠くなりそう」

ノーゼスが言った。

「寝たら起こしてあげるわよ」

「優しくな」

「それは寝方によるかな」

クロードは笑った。

鞄の中には、成功した2回と、それより多くの失敗を書いたノートが入っていた。

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